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肺をうるおし空咳に効く〜麦門冬湯

感染症で認知度アップ

新型コロナウィルス感染症回復期の咳に使われることから、広く知られるようになった麦門冬湯。

「咳」に効果があります。

新型コロナウィルス感染症とインフルエンザの流行が重なり、鎮咳薬が不足したこともあって、漢方薬が使われる機会は増えているようです。

そこで、麦門冬湯を適切に使っていただくために、
2つのポイントをお伝えします。

❶痰の少ない乾いた咳に。
❷感染症では回復期の空咳に。

痰の少ない、乾いた咳に

まず知ってほしいのは、咳には種類があることです。
たとえば、「痰の多い咳」と「空咳」では性質が異なります。
すると、治し方に違いがでてきます。

痰が多ければ、痰を取り除いて乾かします。
空咳の場合は、肺やのどが乾燥しているので潤します。

“乾かす“と“潤す“は逆の対処ですね。

麦門冬湯が適用になる咳は乾いた咳、いわゆる空咳です。
痰が多い咳に麦門冬湯は使いません。
痰は無いか、あるとしても少量で粘り気のある切れにくい痰です。

「痰の少ない、乾いた咳」であることは麦門冬湯を選ぶ大切なポイントです。

肺は乾燥を嫌い、潤いを好む

乾いた咳の原因は、肺の乾燥。

肺は乾燥を嫌い、潤いを好む内臓です。
乾燥しやすい秋冬には肺の潤い不足から空咳がでやすくなります。

麦門冬湯の効能には、
「痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく」と表記されていますが、気管支炎や喘息といった病気でなくとも、もう少し身近な不調にも使われます。

たとえば、
乾燥する秋冬に、空咳が続く。
乾燥した部屋で、長時間声を出したあとに咳き込む。

麦門冬湯は、乾燥する季節・気候・環境の影響によって起こるのどの乾燥感や空咳にも使われています。

元気を補い、回復力を高める

ところで、麦門冬湯には6種類の生薬が配合されています。

道端に生えている草、ジャノヒゲ。
その根の膨らんだ部分が「麦門冬」という生薬になります。
肺を潤し、乾いた咳とのどの乾燥に効果があります。
この麦門冬を主役とした漢方薬が麦門冬湯です。

ほかには、半夏という生薬が麦門冬をサポートして咳を鎮めます。

注目したいのは、
人参・粳米・甘草・大棗。
これらの生薬は胃腸を整えて、元気を補います。
ちなみに粳米(こうべい)は玄米のことです。

これら構成メンバーの協調によってあらわれる効果は、空咳を鎮めるだけではありません。
全身に元気と潤いを養うことで、病後の体力回復をサポートします。

ですから、カゼ・インフルエンザ・新型コロナウィルス感染症などの回復期にも応用することができます。

感染症への応用と注意点

感染症により高熱を発すると、身体の水分が失われ、乾燥に弱い肺はダメージを受けます。

熱が下がったあとの回復期に空咳がでるのはこのためです。

このとき、麦門冬湯は肺と胃腸に潤いをあたえ元気を回復します。
つまり、咳のほかに倦怠感や食欲不振にも効果が期待できます。

ただし、
感染症のすべての咳に麦門冬湯を使うわけではありませんのでご注意ください。

感染症の初期、高熱や節々の痛みなどとともに起こる咳は麦門冬湯の適用ではありません。

感染症初期の咳と、回復期の咳は種類が異なることが多いからです。

高熱が下がり強い症状を脱して、回復に向かう段階で空咳が生じた際に麦門冬湯が使われます。

まとめ

【麦門冬湯のはたらき】
・肺とのどを潤し、空咳を鎮める。
・胃腸に元気を養い、回復力を高める。

穏やかな生薬構成ゆえに、虚弱体質や高齢の方でも使いやすい漢方薬です。

基本的には、漢方薬は症状と体質に合ったものを、専門の人に選んでもらうことをおすすめします。

とはいえ、ドラッグストアに陳列され、自分で購入できる状況でありますので、
できるだけ適切に安全に麦門冬湯を使っていただくために、

❶痰の少ない乾いた咳に。
❷感染症では回復期の空咳に。

この2つのポイントをおさえて上手に活用していただきたいと思います。

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