見出し画像

🇺🇸🪖 日本への原爆投下は本当に必要だったのか?

1.はじめに

【戦術と戦略の違い】

戦略:特定の目的(第二次世界大戦の場合は連合国の勝利)を達成するための大局的な視点からみた組織の方向性や考え方

戦術:戦略を達成するための具体的な作戦や手段

2.戦術としての原子爆弾

SNS等で日本への原爆投下が終戦を早めたと主張する人がいる。

特にアメリカの軍人や元軍人を中心にダウンフォール作戦(日本本土上陸作戦)を実施すると米軍側にも相当な被害が出るため原爆投下は妥当だったと主張する人は今も多い。

ダウンフォール作戦全体図

たしかに戦術レベルではそういう面もあるかもしれないが、そこには戦略レベルの視点が欠けている

3.戦略としての原子爆弾

2023/08/06放送 NHKスペシャル
「原子爆弾・秘録 謎の商人とウラン争奪戦」によると、アメリカは戦略としての原子爆弾を以下のように捉えていた。

「アメリカは一貫して原爆投下は戦争を早期に終わらせるためだったとしてきた。
しかし専門家は核を独占した上でその威力を見せつけることが重要だったと指摘する。」
「(アメリカは)原爆を使用することで国家のあり方国際秩序すべてが見直されると期待していました。
原爆を使うことが単に兵器としてだけではなく、同盟国や敵対国に対する交渉の切り札になると考えていたのです。」

マンハッタン計画で膨大な費用をかけて開発した原子爆弾の当初の投下先であったドイツが原爆の開発を断念したことを知り、アメリカは原子爆弾の威力を世界に見せつけ戦後の国際秩序においてアメリカが世界をリードしていくために新たな投下先を求めた。

第二次世界大戦中にテキサコ(石油会社)が作成した戦意高揚ポスター

そして原子爆弾を使う上で敵対国である枢軸国の中でも心理的ハードルが最も低い、当時ジャップという蔑称で呼ばれていた非キリスト教国の黄色人種に対して高濃縮ウランを用いたガンバレル型リトルボーイ、プルトニウムを用いたインプロージョン型ファットマンの2種類の原子爆弾をそれぞれ広島、長崎に投下した。
かくしてパンドラの箱は開かれた。

被爆前の浦上天主堂
被爆前の浦上天主堂
被爆後の浦上天主堂
ミサ中の教会の上に原爆が炸裂したことを知るアメリカ人は今も少ない
浦上天主堂内にあったマリア像
2018年にBTS(防弾少年団)のジミンが原爆Tシャツを着て問題になったけど、被爆者の中には韓国人や捕虜の米兵(B29搭乗員)等がいたことを学校で学んでいないのだろうか?

広島、長崎の被爆者から採取した原爆投下による人体への影響をまとめたデータ(爆心地からの距離、怪我や放射線障害の症状等)は日米合同調査団ABCC(原爆傷害調査委員会)を通してアメリカに提供され、現在にいたるまで放射線影響の尺度基本データとして利用されている。
(原子力発電所の事故等が起きた時に人体にどのような影響があるか判定するために用いられている)

またABCCは日本の厚生省国立予防衛生研究所(予研)および原子爆弾影響研究所とあわせて再編され、現日本国政府とアメリカ合衆国政府が共同で運営している研究機関「放射線影響研究所」として今も存在する。

4.その他

原爆とは直接関係無いが、イギリスは第二次世界大戦中にドイツのエニグマ(暗号機)の暗号を解読して連合国の勝利に貢献したが、イギリスは暗号解読したことを伏せたまま、旧植民地の英連邦諸国に解読不可能な暗号機としてエニグマのコピーを提供して使わせていた。当然英連邦諸国の情報は全てイギリスに筒抜けである。

なおエニグマの暗号解読が公表されたのは1970年代に入ってからであり、現実の世界は勧善懲悪の時代劇のように簡単なものではない。

日本で(特にネット上などで)イギリスがブリカスと揶揄されることがあるのは、エニグマの件しかり、アラブ人とユダヤ人に対する二枚舌外交しかり、自国の国益のためならこういうことを平気でやるから。
(しかもそれが現在まで残る国際問題の種となっていることが多い)

関連note

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?