慕う

多分、これが恋なのだろうかと思った。

仕事を辞めて、ただ転職活動するだけでは稼ぎがないと始めた派遣の仕事。倉庫での仕事は自分が直接「顧客」と関わらないから楽だったし、他の派遣の人たちと少し違う業務に当たっているので派遣同士の諍いに巻き込まれることもない。
正社員で働いていた時よりも収入は少ないが、こんなに仕事が嫌にならないのは初めてのことだった。

転職活動が難航していて未だにずるずると派遣の仕事を続けているのだが、会いたいと思う人がいるおかげで前向きになっていた。

勿論、自分に優しくしてくれたり話しかけたりしてくれる他の派遣の方も好きなのだが、私の業務を担当してくれている社員の人が気になっていた。
第一印象は「自分とは全く合わなそうな陽の人」
だが業務のことで紆余曲折あり、その人とよく話すようになった。話してみるとやはり自分とは考え方も好きなことも違う。歳は同じなのだが私と違ってハッキリと物を言える人で、仕事も出来て信頼されていて、最初は「憧れ」の感情だったのだろう。

次第に会話を重ねていくと親しみが持てて、よく気にかけてくれて、それが無性に嬉しかったのだ。しかし、男性との接し方などよく分からない私はちゃんと会話が出来ているのかも不安だった。
目を合わせられると嬉しいと同時に恥ずかしくて、プライベートな質問をされると舞い上がる反面おかしなことを言っていないだろうかと怖くなる。
最近は顔が熱くて仕方なくて、冷静さを装うので精一杯だった。

半年前までは恋人がいたらしく、あぁやっぱりこんな素敵な人が放っておかれる訳ないよなと思ったり。同年代の人はみんな誰かと付き合った経験があるんだよなぁとついていけない自分に悲しくなったり。

今日は「これ誰にも言わないで欲しいんですけど」とか、「デートをするなら場所は~」とか、「結婚したらどこに住みたい」とか、そんな話題が持ち上がって何だかドキドキしっぱなしだった。
けれど、秘密を私に話すのは「誰かに話したいけどこの職場内で言える人が私くらいだけだったから」だろうし、デートも結婚も彼にとって私は当てはまらない話題だろう。

私はいつも「選ばれない」側の人間だから期待をしてはいけないのだ。恋愛は幻想だし、今は転職活動に身を入れなければならない。

ただただ情けなくて、もっとちゃんと恋愛をしてくれば良かった。

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