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『人生論ノート』 ー嫉妬についてー

人生論ノートにおいて、あまりプラスでない言葉として挙げられているのが「虚栄」「感傷」「嫉妬」の三つです。特に「嫉妬」についてはめちゃくちゃにいっています。冒頭の一文からパンチが効いています。

嫉妬こそベーコンがいったように悪魔に最もふさわしい属性である。
                   ー人生論ノート 嫉妬についてー

すごいです。この他にも本文を読めばまだまだ出てきます。とりあえず嫉妬に対する悪口の紹介はパスして、嫉妬とはなにか三木の定義が面白く鋭いため紹介します。

嫉妬とはすべての人間が神の前の平等であることを知らぬ者の人間の世界において平均化を求める傾向である。
                   ー人生論ノート 嫉妬についてー

嫉妬は私の視点から見て、みんな私と同じように不幸であらねばならないとか、みんな私くらいの能力を持って生活しているのだから、私程度の生活をしなければならないとか想う心のことですね。三木が、人は神の前で平等であると言っていることは重要だと思います。

さて、嫉妬心を克服するために三木はどのようにいっているのでしょうか章末に次のように書いています。

嫉妬心をなくすために、自信を持てといわれる。だが自信は如何にして生ずるのであるか。自分で物を作ることによって。嫉妬からは何物も作られない。人間は物を作ることによって自己を作り、かくて個性になる。個性的な人間ほど嫉妬的ではない。個性を離れて幸福が存在しないことはこの事実からも理解されるであろう。
                  ー人生論ノート 嫉妬についてー

結局、人の人生を裁くことができるのは「神様」のようにその人の人生全てを知っていて人間の内面をも正しく測ることができような存在でしかできないのだから、そんな人間には不可能なことは「神様」に任せて自分の人生を誠実に生きていくのが嫉妬から解放される生き方ではないかと思います。

#人生論ノート #嫉妬について #三木清