キリンジ「愛のcoda」
「不様な塗り絵のような人生」というフレーズのみが引っかかっていたこの曲だが、ふと最近聞き直してみると、この曲の主人公に、神谷美恵子の『生きがいについて』の冒頭でしるされる「毎朝目がさめるとその目ざめるということがおそろしくてたまらないひと」を思い起こした。
神谷美恵子は具体的にそれはどのような人か続けてこのように書いている。
愛というのはなにも異性に飲み注がれるものではない。codaは楽曲の終結符だけれども、まさにひとつの愛が終わった時の悲しさ・苦しさ・切なさを唄っているのだと言うことなのだろう。
終わったこととはわかっていても『やわらかな心を石に変え』るような『醸し出されることのない美酒』を追い続けてしまう時間がある。「悲しむのに時がある」ではないけれど、そんな苦しみの期間はただ去ってくれと祈ることしか出来ない。みんなは楽しそうにしているが自分は『ただ春をやり過ごすだけ』
そんなとき支えになるのが誰も保証してくれることのない未来に対する希望なのだろう。そして、それは『行き先も理由も持たない孤独を友』と出来る人のみが抱き続けることが可能なのだ。