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「日本論」

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日本人が大好きな「日本」とはというテーマ。国際化が進み「日本」の存在感は薄くなってきているように思いますが、今まで気づかれてきた長い「日本」社会の影響は日本人の心の中に少なからず…
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#日本論

宗教の問題は自分事

今、統一教会に関する話題が盛り上がっている。報道等で知る限りにおいては、看過できない状況が今も続いているようだ。しかし、統一教会のあり方の是非についてはいったんここではおいて置きたい。今回、考えたいのは宗教の問題を日本人はどこか他人事として考えていないかということだ。 われわれ日本人はどこか宗教に対してなじみがない。日曜日に教会に行くわけでもないし、毎日念仏を唱えるわけでもない。解脱を求めて出家もしていないし、宗教儀式として断食もしていない。 そして、20年位のスパンで訪

『人生論ノート』 ー感傷についてー

三木は感傷についての冒頭で様々な感情と対比させて感傷をこのように論じています。 しかるに感傷の場合、私は立ち止まる、少なくとも静止とも近い状態が必要であると思われる。動き出すや否や、感傷はやむか、もしくは他のものに変わっていく。                    ー人生論ノート 感傷についてー 三木は感傷にひたるということは、自分の人生という物語を停止させて、ただ立ち止まることだといっているように思えます。なので、感傷を克服する方法として、この文に続けて、三木は次のよ

フジファブリック「赤黄色の金木犀」

「あはれ」について書こうと思ったとき。どういったものにあはれを感じるかなとおもって直感的にうかんだ曲がフジファブリックの「赤黄色の金木犀」でした。なんとなく夕日にカーとカラスが泣いて、じんと来るあの感情をこの曲にも感じたからです。 詩をあらためて注目しました。季節は晩夏が近づく頃。伝えられなかった思いを持った主人公が今年もまた夏が終わってしまう。あの日に言い残した言葉がうすらいではいくが、心には残りながらそのことが残りのざわざわした思いとともに夏が終わっていくのだろうという

『昔話と日本人の心』ー炭焼長者ー

「あはれ」や「うらみ」を克服する人間像として河合は炭焼長者のヒロインをモデルに「意思する女性」という人間像を提唱しています。 炭焼長者は日本の昔話としてはめずらしく結婚に至る昔話です。他にも昔話の中で結婚に至る話というのはあるのですが、通常その時のヒロインは大層な不条理にひたすら耐える「耐える女性」として描かれています。いわゆる「おしん」の精神ですね。この炭焼長者に出てくるヒロインはこの「耐える女性」とは一線を画すものだと河合はいいます。では物語のあらすじを簡単に紹介します

「うらみ」と「ムラ」の分配

嫉妬とはすべての人間が神の前の平等であることを知らぬ者の人間の世界において平均化を求める傾向である。                三木清 ー人生論ノートー 嫉妬について 三木清の言葉ですが、人が集まれば人は人に嫉妬したり「うらみ」を持ったりします。さて、日本人は長い歴史のなかで河合の言う「うらみ」とどう対処してきたのでしょうか。きだみのるの書いた「にっぽん部落」のなかにそのヒントが書かれていたので紹介したいと思います。 きだは日本の社会的集団のなかでもっとも小さい単位で

「あはれ」と「浮き世」

我々の感傷的な心は仏教の無常観に影響されているところが少なくないであろう。それだけに両者を厳格に区別することが肝要である。                三木清 人生論ノート ー感傷についてー 三木清の人生論ノートからの引用です。仏教の無常観に我々の感傷的な心は影響されているとのことです。そこで、「あはれ」と日本人について歴史的に考えるために、日本人と無常観について、阿満利麿さんの『日本人はなぜ無宗教なのか』をテキストに見ていきたいと思います。 仏教が教える「無常」は、あ

『昔話と日本人の心』ーうぐいすの里ー

『昔話と日本人の心』は100分de名著河合隼雄スペシャルの第3回で紹介されていた本です。河合隼雄はヨーロッパでユング心理学を学び実際の臨床に応用しようとしましたが、日本人になかなかうまく応用がききません。河合隼雄は日本人の自我像と西洋人の自我像は異なるもではないかと考え、古くから伝わる昔話の中に日本人の自我が現れるのではないかと考え、まとめたのがこの本です。 『昔話と日本人の心』では9作の日本の昔話があげられており、その中の登場人物や物語の内容から、西洋の類似の昔話との相違