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これまでといまが繋がった夜のこと

予想なんてできるわけがない、とてつもない夜になった、昨夜。

ツアー二日目の元町space eauuuではゲストに長年の音友・山本信記をお呼びして。
トランペットとDJをお願いしていた。

信記と桜井さんは初対面だったそうで意外だった。自分の感覚では音楽的にものすごく近いところにいると思っていたから。


桜井さんが選んだお店のアンプはシアーズ・シルヴァートーンという古いものでボリュームつまみ一つしかついていないたった5Wの小型なものだったが、やたらと音が良い。お店の生音の響きも極上で期待は増す。

楽しげに酒を飲み会話が進む演奏前の時間、入り口の喫煙スペースが何やらざわついている。

そこに、板橋文夫、瀬尾高志両氏の姿が。
驚きすぎて、一瞬脳味噌がバグった。
なんで?なんで?

お二人もツアー中で神戸での共演者の方が急遽入院でリハーサルがなくなって、駆けつけてくれたらしい。うわー、そんなことあるのか。
勿論楽器持参で。

頭が飛んだ。
もう選曲もプログラムも全部飛んだ。
何をやっていいかわからない。

そうこうしていると有本羅人がやってきた。うわー、きたきた。

最初は2曲、桜井さんと二人でやった。
音楽好きや友達が物凄いエネルギーで聞き取ろうとしているのを肌で感じる。ピリピリする。


三曲目から高志を呼んだ。ガット弦を張ったコントラバスの生音演奏は彼ならではの迫力と表現力がある。突然参加してきた凄い奴に、会場が息を呑むのがわかる。
カークのブルースもやった。アコースティックでDead Man's Liquorをやったような感覚。
元町の実験音楽バーは、さながらブルース酒場のようになり、歓声が飛んだ。

休憩中はDJ信記の出番だ。インドネシアのポップスやスカをプレイしてくれる。
私達3人のテーマは、大原裕だ。大原さんは昔レスターボーイに「お前の音はリコ・ロドリゲスに似ているから聴け」と言われたそうだ。大原さんは晩年、リコの日本ツアーのバンドを率いて共演している。


二部は信記を招いて三人で。
やるのは大原さんの曲ばかり。
彼が「旅行」のメロディを吹くと、一瞬で風景が蘇る。匂いが記憶を呼び覚ますように、あの時の音が体感に戻る。

2曲もやったらたっぷりだった。
もう皆でやってしまおう、と思ったところに江崎將史さんの姿が。ウソー!
楽器持ってますか?ない?信記がラッパありますよ!とロータリー・フリューゲルホルンに持ち替えてトランペットを江崎さんに手渡す。
羅人が入ってきて3トランペット、コントラバス、ギター、tuba、そして板橋さんの鍵盤ハーモニカ。

曲は板橋文夫作曲「渡良瀬」

いや、ほんとにやるつもりで準備していたのだが、まさか作曲者がこの場に現れるとは!!
こうなるとtubaなんて吹いて居られない。

桜井さんの南米を思わせる三拍子のリズムが川のように流れる。
メロディはできる人に任せた。
高志がいるからベースラインもリズムも万全だ。
やることといえば、会場のみんなと一緒に歌って踊ってりゃええねん。
ほとんど吹かなかった。
原曲作曲者の板橋さんは曲を牽引するかと思ったらこれが全然で挑戦者のように身を揺さぶり鍵盤ハーモニカを凄まじい勢いで吹き倒し続ける。最高だ。

ソロをまわしたあとには、少しコンダクション入れて江崎さんと高志のフリーインプロヴィゼーションに突入してもらった。そこに斬り込む板さん。空間を切り裂き場を変える江崎さんの鋭い音とプレイが二人と交わる。これが聴きたかった!

それが終焉する頃、桜井さんがやおら椅子に足を載せ立ち上がってギターをかき鳴らすところで盛り上がりは最高潮に。
叫ぶ人、笑う人、踊る人、乾杯する人が入り乱れる。ここは一体どこだ?

最後まで僕はほとんど吹かず、歌っていた。それで良かった。幸せだった。
四半世紀を超えて一緒に音楽をしてきた友達と、現在東京で一緒に音楽をしている大好きな人達が、偶然に集い、音を一緒に奏でている。
こんなことってあるか?やろうとしてもそうそうできない。
これが幸せというやつだ。

桜井芳樹 guitar
高岡大祐 tuba
ゲスト:山本信記tp,dj

飛び入りゲスト
有本羅人tp
江崎將史 tp
瀬尾高志 cb
板橋文夫 鍵盤ハーモニカ


終わったあとの歓談も華々しい。
板さんが信記に「いい味してるよ!」という。
初対面の皆がそれぞれの音に敬意を持っている。


信記が持ってきたロータリー・フリューゲルホルンは、沖至さんから譲ってもらったものだそうだ。震災の後、神戸で共演したのが懐かしい。大原さんも沖さんも、今ここにはいないが、私達が奏でていたら、ここにいて、音を奏でる。

こんな夜は二度とないかもしれない。
いきなり、予想外に来た。

今までやってきたことと今やっていることが突然繋がった。俺もう死ぬんとちゃうやろな?

いやまだまだ。
旅は続きます。

三日目の今日は再びデュオで。
桜井さんの大学時代の音楽サークルにいた方の新しいお店です。

11/3(水) open 13:00 / start 14:00
【大阪 紗BON堂】
charge:2000円
drink:500円から(フードもあり)

https://note.com/blowbass/n/ne09fda65d5db

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