偽物と偽物のセット売り(2021年6月5日の日記)
・今日も今日とてこんな時間ですよ。
・しかし今週は土日休みなので全然問題ない!!!!!今から死ぬほど寝ても全然大丈夫!!!!!休み最高!!!!!!!!
・はい。
・前日の日記にも書いたけど16時間睡眠で11時に起床したのでもう睡眠メーターは振り切っている。温度計みたいなやつで表すとしたら上がバーンてはじけ飛んで赤い液が飛び散っている状態。
・寝すぎてもよくないって聞くけどもね…。結果背中がすごく痛いし。
・何とか整形外科の受付が終わる前に起きれた。来週また来てねと言われていた捻挫のようすを見てもらおうと終了ぎりぎりに滑り込んだら、それでも40~50分待ちだった。
・さすが土曜日。混んでるな~。
・まあ急ぐ予定も無いし本読んでればすぐかな、と思い待たせてもらうことにしたが、待ち始めてすぐに気づいた。
・この病院、暑い。
・わたしはかなり暑がりなので今日みたいな気温でもわりと汗をかく。待合室にはそこそこの人がいたので、おそらくその熱もあるのかもしれない。ここで50分か…と思い、また出直すことにした。受付の人には待つと言っておいて3分も経たずに帰るから診察券返せと言ったので、相当せっかちなやつだと思われたことだろう。違う。暑いんです。
・月曜日にぶつけた車のへこみを修理するとしたらいくらかかるのか知りたかったので板金屋に行った。叩いて出す修理だと6~7万。パーツを全部取り換えての修理だと13~15万だそうだ。高いな~。高い…。
・その後何やかんやで朝4時に帰宅したよ!このくらいの時間て数分ごとにどんどん空が白むんだね。
・「バイヤーおすすめ!」のポップがついたマスカット味のゼリーと一緒に売られるイミテーションのマスカット。
・本物と偽物を一緒に売るなよ、と思ったが、別にゼリーもマスカット本体というわけではない。ゼリーの方は食べられるという点で本物に近いが、マスカットそのものとはやはり違う存在だ。
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「お前と一緒に売られることがあるとはなあ」
マスカットのゼリーは自身のビニール包装をかさかさと揺らしながら、さも嘲るように笑った。
「どうだい?俺の引き立て役として売られる気分はさ?」
マスカットゼリーの視線の先、限りなく本物に近い見た目をしたその物は、しかしその身をむき出しで売場に横たえている。ネットをかけられることも、箱に入れられることもないその姿は、その存在がそうするに値しないものであることを表していた。
それもそのはずだ。そのマスカットは―、プラスチックで出来ていたのだから。しかし、プラスチックのマスカットは、まるで意に介さずにきょとんとする。
「引き立て役?」
「そうさ。この俺、本物の食べられるマスカットと、プラスチックで出来た食べられない哀れなお前。最高の組み合わせじゃないか!」
マスカットゼリーはこらえきれず笑い出した。みじめなお前がかわいそうだよ、と哀れみすら覚えた。
「ああ」
そういうこと、とプラスチックマスカットは微笑む。
「何がおかしい!」
まったく動じないその姿に、マスカットゼリーは苛立ちを隠せなかった。
「だって」
プラスチックマスカットは、ずい、とマスカットゼリーに近づいた。マスカットゼリーがたじろぐ間もなく、彼は天使のような屈託のない笑顔で、しかし悪魔のような言葉を彼に突き付けた。
「君だって同じ、偽物じゃない」
「……っ!」
プラスチックマスカットの言葉は刃物のように、マスカットゼリーの柔らかいところを、深く深く突き刺した。マスカットゼリーの顔がみるみる赤くなっていくのを気にもせず、プラスチックマスカットは続ける。
「君の言う通り、僕はマスカットの偽物さ。外見だけはそっくりだけどそれだけ。僕をかじったってあの瑞々しい果汁も果肉も何も無い。プラスチックで出来たからっぽの器。食べられることも無く、ただ飾られる。それが僕」
マスカットゼリーは、楽しそうに自分の存在を語るプラスチックマスカットを、化け物でも見るかのような目で見つめた。
「でもそれは君だって同じでしょう?君は確かに僕と違って食べられる。ああ、瑞々しさは本物より勝るかもね?けど、どう転んだって君は僕と同じで"本物"にはなれないんだ。どこまでいったって君は類似品。本物の果汁をほんの少しわけてもらっただけの、人に作りだされた、全く異なる存在」
人間も意地が悪いよねえ、偽物と偽物を一緒に売るなんて、とプラスチックマスカットは心底おかしそうにけたけたと笑う。
「そんなこと…!」
「そんなことあるさ!それに、君、クラッシュタイプだろう?小綺麗な写真を使った袋に入ってるけど、中身はどんな姿なんだろうね?」
「!!!!!」
「ああ、食べやすいように細かくなっているんだっけ?君はその服を脱いだら形を保てない。本物とは似ても似つかないぐずぐずのゼラチン…」
「もうやめてくれ!!!!!!」
もうたくさんだ、とマスカットゼリーは泣き崩れた。先ほどの優越感は消し飛んで、皮の先ほども残っていなかった。あるのはみじめな自分だけ。
プラスチックマスカットの言葉はすべてが真実で、だからこそ残酷だった。マスカットゼリーは、本当はお互いが同じような立場にあると気付きながら、それでも自分の方がまだ上であると思うことで、自身の弱さを、決して本物にはなれない自身の空虚さを、見ないように蓋をしていたのだ。
だがそれももう、何の意味もない。
「さあ、似た者同士仲良くしよう。せめて僕たちを一緒に買ってくれる人が現れるといいねえ。君が、本当の姿を見られることなく、人間の胃袋に消えていくところを、僕だけは見届けてあげるよ」
・このセットで買っていく人いる?
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