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橘川幸夫|教育メディア論 新時代の教育は、どんなメディアに乗るのか【文末に動画あり】

CONCEPT BASE Shibuyaに観客が入った初対談のゲストは橘川幸夫さん。音楽投稿雑誌『ロッキング・オン』の創刊に関わり、その後も全面投稿雑誌『ポンプ』など参加型メディアにこだわってきた橘川さんが「教育」に関する本を出されるとのこと。そこには必ず「メディア」が関係してくるはず。単にオンラインになるとか、そういうことでない、本質的な変化。本になる前に聞いてしまおうと対談が決まりました。(聞き手・小山龍介 文/写真・片岡峰子 グラフィックレコーディング・豊田陽)

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「参加したい」欲求を満たすのがメディア

小山龍介(以下、小山) 橘川さんの参加型メディア。個人に焦点があたってますよね。よくある、フォロワーが何十万人とか、コンテンツが何十万件、というのとはまったく違うところに立脚していらっしゃる。

橘川幸夫(以下、橘川) 大事なことはシステムじゃなくて、一人ひとりの参加したいという意欲。ところが、いまのCGM(Consumer Generated Media)は参加させられるメディア。メディアがなかったら参加しない。そうじゃなくて、参加したい欲求があって合流できるのがメディア、だよね。

小山 そこには時間間隔が存在していますかね?

橘川 最前線だけがありますね。ぼくらはこれから時間のない世界で生きることになる。

先日、PTAのお母さんたちへの講演にいったんだけど「いまの子どもをどう指導したらいいかわからない」という質問があってね。そこでこう答えました。「今の子どもが抱えている問題とお母さんの問題は同じ。お母さんの問題を解決するのが先」って。タイムライン上の問題は国を越えても共通で、時間的な差はないんですよ。

小山 時間といえば、われわれがいまいるこの場所(CONCEPT BASE Shibuya)は能舞台を模した設えになっているんですが、能舞台というのは時間を区切っているんです。ネットの場合は空間の制約も時間の制約もない。「無」の世界ですかね?

橘川 近代の「無」の世界じゃなくて、その次に来てますね。近代は、伝統、文化、産業、教育も含めカテゴライズされてきた。生まれてから死ぬまで、激流もあれば穏やかなときもある。ゴールに早く着いたら勝ちだったのが、ぼくらはもうゴールにたどり着いちゃったんですよ。だから、いまここは、言ってみれば、海。海で競争しても勝てない。海では遊ぶしかないでしょ。社会的競争はどんどんなくなっていくよね。

小山 そこには人生があるんでしょうか?

橘川 次に承継するための人生はない。承継するとしたら、個々にではなくて、全体に。インターネットの中ですべての人に与えていく。

個性というより、みんな、だれかが言ったこと、だれかが感じたこと。印刷技術が発達してからは大量に配るコピペ文化。

コミュニケーションが教育そのものになる

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