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扉をぴちっと閉められません

今回のテーマは、「♯癖」である。
誰にだって何かしらの癖はあるはずだ。だけど、それが癖だとは気が付かないこともあるんだろうな。

改めて、自分の癖を考えてみた。そういえば……私は、扉をぴったり閉めることが苦手である。気が付くといつも、少しだけ扉が開けた状態になっている。流石に玄関の扉は逐一閉める。けれど、室内ならば、そこらじゅうの扉は少しずつ、開けっ放しである。

その癖があることにより、家族からすると扉の空き具合で私がそこを通ったことが分かるようだ。自分なりに気を付けてはいるのだけれど、すぐに油断してしまう。

夏は冷房の冷気が逃げるから、冬は暖房の暖気が逃げるから、きちんと閉めてほしいと指摘されてしょんぼりする。そのくせ、自分以外の人が開けっ放しにすると、ムッとするのだから都合がいい。

この扉を閉められない癖の原因には、一つ思い当たる節がある。これは、親に聞いた話だ。

全く記憶がないので3歳未満の頃だと思うのだが、祖父母の家のトイレに籠城したことがあるそうだ。トイレに入っている時、扉の内側に付いていた鍵で、がちゃがちゃと遊んでいたら開けられなくなった。狭いトイレから出られないことに気が付いたとき、大パニック状態に陥り、ぎゃんぎゃん泣きわめいたようだ。近所中が大騒ぎである。隣のアパートに住むお兄さんが、幸運にも開いていたトイレの窓の外から釣り竿を入れて扉を開けてくれたことで事なきを得たとのことだった。

そう言えば、祖父母の家のトイレは鍵がなかった。何者かにより取り外された痕跡があったから、騒動の後、祖父が取り外したのだと思う。鍵がないことにより、それ以降、トイレに誰かが入っているか、入っていないかの心理戦(?)が繰り広げられることになったのだけれど。

冒頭の話に戻る。私が扉をぴっちりと閉められないのは、「閉める=閉じ込められる(正確には自ら閉じこもった)」という恐怖が潜在意識に刷り込まれているからなのではないか、と思うのだ。これは、癖と言うより、トラウマと呼ぶものなのだろうか。軽めの閉所恐怖症なのかもなあ。

……そう言えば、クローゼットは全開、箪笥の引き出しはちょっとずつ開けっ放しである。これは、トラウマと言うより、だらしないのかな。

いいや、トラウマということにしておこう。

文:彩音
編集:アカ ヨシロウ 

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