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古い台所①

 夫の実家に住むことが決まった時、昭和50年代に建てられた田舎の大きな家を見て、ワクワクしたことを思いだします。
 ゆとりのある部屋数、お座敷と次の間をぐるりと囲む廊下、緑豊かな日本庭園。
 高いビルはひとつもない山里の盆地で、第3の人生をスタートしました。

 古くて広い家なので、全てリフォームするには大変な費用がかかります。
 最低限の手入れだけにして、あとは住みながら考えようという事になりました。

 幸いなことに夫の友人が協力してくれて、ウッドデッキの増設や二階の床の張替え、新しいシンクの設置をしてくれました。
 プロ並みの技術に驚き、見ちがえるようになったその場所を見て、とても嬉しかったことを覚えています。
 後日その方の家にお邪魔した時、DIYで家の中だけでなく、外の小屋も作られたとのことで始終驚くばかり。それは、使いやすいように工夫されて、安全にも考慮されたものばかりでした。
 家に対して興味があるのとないのとでは、居心地も全く変わると思いました。その方にはとても感謝しています。

 新しくなった部分は良かったのですが、何しろ古い家のこと、やはり住み始めるといろいろと気になるところが出てきます。
 壁や床は色褪せ、長年の汚れでくすんでいます。特に気になるのが台所。
機能的なキッチンには程遠いものでした。
 昔ながらの黄土色のクッションフロアの床に、緑色の葉っぱ模様があしらわれた石膏ボードの壁。水回りには水色のタイルが一面に貼られていました。
 シンクだけは新しく変えたものの、そこは紛れもなく古い台所でした。
 明かりは天井につけられた事務所を思わせる蛍光管のみ。その光が水色のタイルに反射して、寒々しい印象を与えていました。

 水回りは、先ほどの夫の友人が協力してくれて、白いボードを水色タイルの上に貼ってくれました。また、黄土色の床の上に白いクッションフロアを敷いてくれました。
 色が与える印象は大きなものです。寒々しかった雰囲気から、明るく清潔な印象へと変わったことにまた驚きました。
 驚きはもう一つ、空間の広さは変わらないのにとても広くなったように感じられるのです。

 この台所を、自分たちに馴染むように変えていくのが、新しい楽しみになりました。
 夫は料理が得意ではありません。でも幸いに、準備や片付けはしてくれます。古い台所を、もっといい雰囲気のステキなキッチンに変えたいな。
 
 居心地良い空間づくりを、ぼんやりと意識した瞬間でした。



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