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【動画解説】基礎から始めるフライキャスティング#2ピックアップレイダウン

YouTube動画のシリーズ『基礎から始めるフライキャスティング』の第2弾、ピックアップレイダウンの補足説明をさせていただきます。

まだご覧になっていない方は是非ご覧ください。

ピックアップレイダウンとは


ピックアップレイダウンとは、水面に置いたラインを後ろに抜き上げて、
それをもう一度前にまっすぐ伸ばすキャストで、
その頭文字をとってP.U.L.D.と表記されることもあります。
ここでも、無駄に文章が長くなるのを避けるため、
これ以降はP.U.L.D.と書くこととします。

用途

このキャストは実際の釣りで使う機会はそれほど多くはないでしょう。
しかし、ロールキャストに次いで
オーバーヘッドキャストの基本となるキャストです。
ロールキャストでフォワードキャストのコツをつかんだら、
今度はこのピックアップレイダウンで
バックキャストのコツをつかんでください。

そして、普段の練習や釣りにおいても、最初にロールキャスト、
次にこのP.U.L.D.をやってキャストの感覚をつかんでから始めると、
その日の練習や、釣りをスムーズに運ぶことができます。

手順


それでは、P.U.L.D.のやり方をご説明します。
練習する場所は、ロールキャストと同じように水辺でも良いですし、
芝生のような地面でも構いません。
ただ、水辺のほうがピックアップの感覚が実際の釣りに近く、
そのコツがつかみやすいので、
どちらかといえば、そちらをお勧めします。

セットアップ

まず、ロッドにリール、ラインをセットしたら、
ロッドティップからロッドの4倍程度のラインを出しておきます。
そのままではキャストできないので、
ロールキャストをするなどして、ラインをまっすぐに伸ばします。
地面で練習する場合は、
ラインを自分で引っ張って行ってまっすぐにしてもかまいません。

ラインをまっすぐにしたら、
ロッドティップを水面近くに低く、ラインのほうに向けて構えます。
グリップは強く握らないように、
肩や腕の筋肉などにも力が入らないよう、リラックスしてください。
このリラックスするということは、たぶん皆さんが思っている以上に
大事なことです。

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ピックアップ


この状態から、腕をたたんでロッドを立てていきます。
スピードはゆっくりはじめ、スムーズに加速していきます。

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ロッドを立てていくにつれて、
ラインは手前から先端に向かって
水面を離れ空中に持ち上がっていきます。
ロッドの角度が時計の文字盤で10時ぐらいまで持ち上げたら、
さらに加速しながら腕をたたみつつ、軽くひじを持ち上げます。
高く持ち上げる必要はありません。
ほんの5㎝から10センチ程度で十分です。

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リーダーを残したラインのほぼすべてが水面から離れるころに、
それまで軽く持っていたグリップをじんわりと握ります。

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この次の瞬間、水面に残っていたリーダーも水面から離れていきますが、
最後のフライが水面を離れる瞬間、すべての動きを止めてください。
この突然のストップによりラインは狭い直線的なループを描き、
勢いよく、後ろ斜め上に向かって飛んでいきます。

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そして、その次の瞬間、
強く握ったグリップを再び緩めてリラックスした状態に戻します。
この時、グリップは親指で下から支えられ、
残りの4本の指でひっかけているような状態になっています。

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この、グリップの使い方ですが、
ロッドを立てていく段階では
人差し指から小指にかけた4本の指で
グリップを下から支え、
ロッドが前に倒れないように、
ヒールとよばれる、
小指側手首の近くにある小さな骨にひっかけるようにします。
決して強く握らないでください。
この時、親指は少しグリップから離していても良いでしょう。

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最後の段階でグリップを握るときは、
この4本の指を親指方向に握り、
グリップを親指にぶつけるようにします。
こうすることにより、ロッドは素早く少しだけ回転します。
これはフリックなどと呼ばれます。
この時、人によってはグリップを握るというよりも、
手首を開くように指示する人もいると思いますが、
ぼくはどちらかというとそれよりも、
このように、グリップを握るようにしています。

うまく出来たら、
ラインは水面から静かに離れて、
斜め上後ろに向かって伸びていくはずです。
ラインが水面を離れるときに大きなしぶきが上がるようでしたら、
途中で力が入りすぎている証拠です。
きれいに後ろに飛んでいきませんし、
だいいち実際の釣りでは
この大きなしぶきで魚を追い散らしてしまいます。
ゆっくりスタートし、スムーズに加速することが大事です。

芝生などの地面で練習する場合は、
このラインが水面を離れるときの状態を確認するのは
難しいと思いますので、
この点でも、この練習は水辺でやったほうがより良いでしょう。


レイダウン


ピックアップがうまく出来たら、今度はレイダウン。
つまり、ピックアップで後ろ上空にまっすぐ伸びているラインを
再び前の水面に下ろすキャストをします。

ピックアップの終了時の手の位置は
ほぼロールキャストのキーポジションと
同じ位置になっていると思います。

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ピックアップで後ろ上空に飛んだラインが
まっすぐ伸び切るタイミングで、
ロールキャストのフォワードキャストのように
斜め下、前に向かってロッドを下ろしていきます。

この、ピックアップのループが伸び切るタイミングというのは、
前を向いているとわかりづらいかもしれません。
ピックアップしたときに後ろを振り返って目で見て、
それにかかる時間をカウントしてみると良いかもしれません。

フォワードキャストの開始時のラインの状態が
ロールキャストとは違って、
まっすぐになっているので、
ロッドに負荷をかけやすくなっています。
ですから、ロールキャストよりも
力を抜いてキャストできるはずです。

ロッドを振り下ろすときの感じは、
やはりロールキャストでやったように、
胸の前50~60㎝ほどの場所に
ブロックなどの動かない、硬いものを想像して、
それに向かってロッドを加速、
最後にそのブロックをたたき、
ストップします。

そしてその後、力を抜いてロッドを最初の位置まで戻します。

トラブルシューティング

P.U.L.D.のおおよその流れはこのようなものです。

しかし、ここまで見ただけでは、うまくできないこともあるかもしれません。
良く起こるトラブルとそれの対処法をご紹介します。


リーダーが絡まる


フライキャスティングをしていると、
いつの間にかリーダーやラインが絡んでいることがあります。
そんな時は、前後どちらか、
もしかしたら両方でラインが交差していることが考えられます。

これはテーリングループと呼ばれるもので、
初心者ばかりでなく、かなりの上級者でもたびたび起こる問題です。

テーリングループはキャスティング中のロッドティップの動きが直線的でなく、途中が下に膨らんだ軌跡を描くとおこります。
この、ロッドティップの軌跡のことは、ロッドティップのパスと表現されることも多くあります。

ロッドティップが直線の場合

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ロッドティップのパスがこのように直線的であれば、
できるループのアッパーレッグも直線になります。
このロッドティップの直線的なパスのことは、
英語のStraight Line Pathの頭文字をとって、
ロッドティップのS.L.P.と表現されることもあります。

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ロッドティップの軌跡が下にへこんだ軌跡の場合(テーリングループ)

ロッドティップのパスが下のように、
途中が下に膨らんだ形になると、

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ラインは、そのロッドティップの動きと同じ動きをしようとし、
それがループのアッパーレッグの形となって現れます。
結果、できるループはテーリングループとなります。

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そのようなロッドティップが下に膨らむ軌跡を描く原因をいくつかご紹介します。

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力の入れすぎ

先ずは、キャスト中に途中で急に力が入ってしまう場合が考えられます。
この、力の入れすぎというのが、
テーリングループの原因として最も多い例かもしれません。

急激な力の入力

最後のロッドをストップする位置に向かって
スムーズに加速するよう気を付けてください。
決して途中で力が急に入らないように。
特に水面を使ってキャストする場合、
ピックアップの時に、水の抵抗が働くため
それに負けないようにしようと、力が入ってしまいやすいのですが、
この場合にも、あくまでもスムーズに力をくわえるようにします。
水の抵抗を使ってじっくりロッドを曲げていき、
最後、ロッドを止めるときに、
グリップを”じんわり”と握って止めることにより、
曲がったロッドが復元する力でラインが
水面から引き抜かれるというイメージです。

ロッドの振り角が狭すぎる

そのほかに考えられるテーリングループの原因としては、
ロッドの振り角が狭すぎるということが考えられます。

ナローアーク

ロッドは曲がることでそのティップの位置は一旦低くなります。
ロッドの振り角が小さいと、最初と最後のロッドティップの位置は
ロッドが曲がったときの位置よりも高い位置にありますので、
上の図のような軌跡を描くことになります。

広げたアーク

最初と最後のロッドをもう少し倒してやれば、
この高さが同じレベルになります。ので、
上のような直線的なロッドティップの軌跡を得ることができます。

力の入れ方はスムーズに行っているのに、
テーリングループが出来てしまう場合は、
このことを疑ってみてください。

レイダウンで上を狙いすぎる

また、レイダウンで上を狙いすぎると、
やはりロッドティップのパスは下に膨らんだカーブを描き、
テーリングループとなります。

ピックアップは上に、
レイダウンは下にキャストするイメージで
行ってください。

ラインがまっすぐ伸びない


リーダーが絡むのと同じぐらいよくおこるのが、このラインがまっすぐ伸びないということです。
これにもいくつかの現象が考えられます。
ループの形状を見て判断できることもあるし、そうでない場合もありますが、
代表的なものを挙げておきます。


ループの幅が広い

まず、ループの幅が広すぎると、
ラインがしっかり伸び切らない場合があります。
ループの幅は、当面の目安としては1メートル以下になるよう目指してください。

特にループの上側の部分、アッパーレッグとかトップレッグ、あるいはフライレッグなどと呼ばれていますが、これがまっすぐでなく、山なりの曲線になってしまう広いループはオープンループと呼ばれ、ラインに与えられた力が分散してしまい、ラインがターンしきらず、途中で落下してしまいます。

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オープンループ


ちなみにループの下が側の部分はローアーレッグ、ボトムレッグ、ロッドレッグなどと呼ばれています。

このようなワイドループになってしまう原因の主なものと、
その修正方法をご説明します。

ロッドを振るスピードに加速が足りない

ロッドを振るスピードに加速が足りない場合は
ロッドは大きく曲がりませんので、ロッドティップのパスは
下の図のようになります。

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ロールキャストの時に説明したように、胸の前50~60㎝ほどのところに
ブロックを想像して、そのブロックに向かって、それを叩くのをイメージしながら、スピードをつけるようにしてみてください。

ロッドを振りすぎている。

前後でロッドを振りすぎてしまうと、前後のループの幅は広くなってしまいます。

ワイドループ

上の図の左の位置までロッドが移動することで
ラインがターゲットに向かって方向づけられるとします。

これよりも少しロッドが倒れた位置でロッドを止めると
下の図のように狭いループが得られるのですが、

ナローループ

それよりもロッドを振ってしまって、
ロッドを止める位置が下の図のようになると、
ループは広くなってしまいます。

ワイドループ2

ピックアップの時はだいたい1時から2時あたりを、
レイダウンの時は10時ぐらいの位置を目安にロッドを止めてください。

特にロッドを振る時に手首の動きを大きく使いすぎると、
ロッドティップのパスは山なりになってしまい、
ループの幅が広いだけではなく、オープンループになってしまいます。

レイダウンの時は一旦10時の位置でロッドを止めた後は、
そのまま流れるように、ラインが水面に向かうのに合わせて下げて、
元の位置に戻します。
いわゆるフォロースルーですね。

ループに力がない


ラインが伸び切るのに必要な力が与えられなかった場合も、
当然のことながら、ラインは伸び切らず、落下してしまいます。
ロッドに加える力が小さすぎる場合はもちろんそうですが、
それ以外にもいくつか原因が考えられます。

タイミング
ピックアップの後、レイダウンを始めるタイミングは
早すぎても、また反対に遅すぎても、
ロッドを十分に曲げることができません。

ロッドが曲がらないということは、ラインにそれが伸び切るだけの力を与えるとこができません。
当然、ラインは伸び切る前に落下してしまいます。

ちょうど良いタイミングというのは、
ピックアップしたラインが後ろへまっすぐ伸び切ったときです。

タイミングが早すぎる場合

タイミングが早すぎる時は、
ストロークの前半では、まだループがある状態で、
ラインがまっすぐ伸び切るまでは、
ロッドにはそれを十分に曲げるだけの負荷がかかりません。
そして、ループがほどけてまっすぐになったときに始めて
ロッドに負荷がかかります。
そうなると、ラインフライがターゲットまで届くだけのエネルギーを
ロッドに蓄えることができず、結果ラインは途中で落下してしまいます。

早いタイミング

上の図のように、ループが残っている間にロッドを振っても
このループがほどけ切るまでは、ロッドにはあまり負荷をかけられません。

早いタイミング2

ラインがほぼまっすぐになって初めて、ロッドに負荷がかかり始めるので、
本来、ロッドはブルーの線の距離だけ振ることができるものが、
オレンジの線の分の間はロッドを曲げることには、
あまり役立っていないことになります。

また、速すぎるタイミグでロッドを振り始めた場合、
ロッドの振り方によってはテーリングループになります。
ラインが伸び切るまでの間に、
ロッドがゆっくりと、ロッドティップがキャスト方向に向くように
角度をかえながら”にじりでて”行くとテーリングループになります。
これはにじり出るを英語でそのまま言う、
クリーピングといわれる現象です。

早いタイミング
クリーピング

タイミングが遅すぎる場合

遅い場合は、ピックアップで一旦まっすぐになったラインがたるみ始めます。
この時にレイダウンを開始すると、ストロークの大半はこのラインスラックを取ることに使われてしまいまい、ロッドに十分な負荷をかけることができないません。
その結果、ラインに十分なエネルギーが与えられず、途中で落下してしまいます。

遅いタイミング
遅いタイミング2

ピックアップしたラインが後ろの地面に触れてしまう。

ピックアップしたラインは後ろ斜め上空、
およそ30度程度の角度で伸びていくのが良いと思います。
もちろん、慣れてきたらこの角度は自在にコントロール
できるのが良いのですが、
先ずはこの高さを目安に練習してください。

よくある例としては、
ピックアップの時に、後ろに投げようという意識が強すぎるあまり、
キャストの最後の方に手首を大きく開いてしまうことです。

こうなると、ラインは上ではなく、下に向かってしまうため、
知らない間にフライが後ろの地面に引っかかってしまうことになります。

手首使い過ぎ

上の図の左のロッドの位置でロッドをストップすれば、
ラインはブルーの矢印の方向に引かれるため、
後ろへ高く伸びていくのですが…

手首使い過ぎ2

ここで勢いよく、手首を大きく開いてしまうと
ロッドは上の図のように下向きに振られてしまいます。
その結果、ラインは下に向かって引かれてしまい、
後ろの地面に向かってしまうのです。

ピックアップは後ろというよりも、
後ろの斜め上に向けて投げるようにしてください。
反対にレイダウンは下に向けて投げる感じです。

トラブルの原因はほかにもいろいろ


以上、起こりうるトラブルとその原因の代表的なものをご紹介しました。
ほかにもいろいろな原因で、様々なトラブルが生じえます。
また、原因が1つだけではなく、複合的に起きている場合もあります。
…というよりも、複合的に起きている場合のほうが多いでしょう。

どうしてもうまくできなければ第3者に見てもらうのが近道


自分一人でもある程度トラブルを修正できるように解説してきましたが、
どうしてもうまくいかないという場合は、
誰かフライキャスティングのことがよく分かった
第3者に見てもらって、
原因解明と修正をするのをお勧めします。

ぼくも個人レッスンにも対応していますので、
ご興味があれば、
下のリンクをご覧ください。


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