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【書評】確率思考の戦略論を要約!徹底解説していきます!

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どーも、消費財メーカーでデータ分析をやっているウマたん(https://twitter.com/statistics1012)です。

個人活動として、スタビジというサイトYoutubeチャンネルでデータサイエンスやビジネスについての発信をしています。

この記事ではUSJをV字回復に導いた敏腕マーケター森岡毅さんの「確率思考の戦略論」について解説していきます!

確率思考の戦略論は多くの数学好きマーケターに読みつがれる名著でして、データを活用してビジネスに価値を生み出したいビジネスマンにはぜひ読んでおいてほしい書籍なのですが、これだけ読んでも正直森岡さんすげえとしかならない可能性が高いので注意が必要です。

この記事ではそんな注意点や私なりの考えも取り入れながら3つのパートに分けて解説していきます。

■消費者のプレファレンスとは
■売上のビジネスドライバーを見極める
■プレファレンスを拡大するための方法

以下のYoutube動画でも分かりやすく解説していますので是非御覧ください!

消費者のプレファレンスとは

まずはじめに消費者のプレファレンスについて見ていきましょう!

この書籍では、森岡さんと盟友の今西さんがいかにしてUSJをV字回復に導いたかが数学的観点で述べられています。

この書籍で語っている内容を簡潔に言ってしまうと、ビジネスの成否は消費者のプレファレンス(好意度)で決まる、ということ。

さて、それではこのプレファレンスがなぜ重要なのか、そしてプレファレンスが何者なのかについて見ていきましょう!

消費者のプレファレンスとは、消費者のある商品に対する好意度です。

会社のランチに行く際に知らずのうちにいくつかの選択肢からお店を選んでいると思います。

それぞれのお店に対してプレファレンスが振られているのです。

5日間のうちにあなたが何回Aというお店に行くのかはプレファレンスに基づく確率で表されます。

1回も行かない確率は、XX%
1回行く確率は、XX%
2回行く確率は、XX%というように。

Aというお店が大好きでプレファレンスが高かったとしても5日間で1回もいかない可能性はあります。

そして、それぞれの消費者のプレファレンスに基づく行動を全て集めたものがAというお店のシェアを構成するのです。

そしてその消費者のプレファレンスに基づく行動を全て集めたものは負の二項分布NBDモデルと呼びこのように表されます。

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つまりNBDモデルが分かればAというお店の売上がおおよそ予測できることになるのです。

負の二項分布はNegative binomial distributionというのでNBDモデルと呼ばれます。

このモデルを使ってUSJの売上を予測し、売上を拡大するために必要なビジネスドライバーを見極めてV字回復に導いたのが森岡さんなのです。

負の二項分布自体は一見複雑そうに見えるかもしれないのですが、概念は難しくありません。

負の二項分布はMというパラメータによって支配されます。

つまり、Mさえ理解しておけばよいのです。

Mは、ある期間に購入できた購入対象人数のうち実際に購入された回数の割合です。この時購入は1人何回でもできるものとします。

100人の購入対象者のうち10人が2回ずつ購入した場合のMは10×2/100=0.2となりますね!

つまり購入対象人数×Mで全購入回数が算出されます。
100×0.2=20回!

ここまでざっと消費者のプレファレンスについて説明してきましたが、このプレファレンスの定義はわかりづらく混乱しかねない部分です。

まとめますと、
プレファレンスそのものは消費者のある商品・ブランドに対する好意度
それを総合したものが商品やブランドのシェアを構成し、負の二項分布NBDモデルで表すことが出来る。
そして、全体の購入対象人数のうち総購入回数の割合であるパラメータMがNBDモデルを支配しているんです

売上をブレイクダウンしてビジネスドライバーを見極める

続いて、ブランド・商品のシェアは、消費者個人のプレファレンスの総合値であるNBDモデルで表すことが出来、そしてNBDモデルはパラメータMに支配されているのでしたね。

つまりシェアを拡大していくためには、Mを上げていくことが至上命題になります。

ただもう少し解像度を上げるために売上をブレイクダウンしてパラメータMとの関係性を見ていきましょう。

一般的な定義より

売上=総購入回数×平均購入金額なので

Mの定義:ある期間に購入できた購入対象人数のうち総購入回数の割合より

売上=購入対象人数×M×平均購入金額になります。

そして、この購入対象人数というのをブレークダウンすると、

購入対象人数=総人数×認知率×配架率になるんです!

プレファレンスを支配するMがいくら高くてもその認知率と配架率が低いとそもそも購入対象人数が少なくなりプレファレンスのポテンシャルを活かしきれないのです。

認知率とは、その名の通りどれだけの人に認知されているか。

配架率という言葉は、聞き慣れないかもしれませんがメーカーでは頻繁に登場する用語で、どれだけの割合の小売に展開することが出来ているかを表した指標です。

いくら認知率が100%でも全国で1店舗だけしか扱っていなければほとんど購入することができないでしょう

日用品が例に取り上げられているので配架率という言葉が使われていますが、要はどれだけの人がその商品・サービスを手に入れたいと思った時に手に入れられるようになっているかということです。

ただ注意しておきたいのが、Webサービスであれば配架率は基本100%であり、むしろ初期フェイズはあえて配架率を下げてターゲットを絞ることも戦略の1つです。

例えばFacebookは、ローンチ初期にハーバード大学の学生だけしか利用できなかったのは有名な話ですね!

先ほどの売上のブレイクダウンに戻りましょう!

プレファレンスの支配パラメータMをブレイクダウンするとどうなるのでしょうか?

Mは

過去購入率×エボークト・セットに入る率×年間購入率×年間購入回数

で表されます。

過去購入率というのは、その名の通り全体の対象人数のうち過去に購入された人数の割合です。

そしてエボークト・セットというのは、あるカテゴリーの中で自分が購買する可能性のあるブランドリストです。

先ほどの例を再び取り上げると、会社のランチで毎日いくつかの選択肢からお店を選んでいると思いますが、これはいくつかのお店があなたのエボークト・セットに入っている状態なのです。

ランチのエボークト・セットにAが50%、Bが30%、Cが20%入っていたなら、10日間ランチすると、Aに5回、Bに3回、Cに2回行くことになります。
このエボークト・セットの中での割合が年間購入率になります。

年間購入回数はカテゴリーによってある程度決まっているのでコントロールが難しい部分です

これで売上をだいぶブレイクダウンすることが出来ました。
最終的に
売上=全対象人数×認知率×配架率×過去購入率×エボークト・セットに入る率×年間購入率×年間購入回数×平均購入金額

と分解することができますね。

売上を伸ばしビジネスゴールを達成するためにはこれらの要素のうちどこに伸びしろがあるかを見極めることが大事なのです。

認知率が足りないのか
配架率が足りないのか
プレファレンスの総合値を支配するパラメータMが足りないのか
価格が低いのか

ちなみに平均購入金額を下げてプレファレンスを一時的に上げることも可能ですが、それは現実的ではありません。

平均購入金額を上げつつもプレファレンスを同時に高めていくプレミアムプライシングの戦略が売上を伸ばしていく鍵です。

だからこそ書籍では、認知率と配架率とプレファレンスに経営資源を集中せよ!

そしてその中でも特に注力すべき無限の可能性を秘めているのはプレファレンスであると言っているわけですね

プレファレンスを拡大するための方法

さらに踏み込んでプレファレンスを拡大するための方法について見ていきましょう!

プレファレンスの総合値を支配するMを増やすためには新規のお客さんを獲得しMを増やす水平的な展開と既存のお客さんの購入回数を上げてMを増やす垂直的な展開があります。

100人の購入対象者のうち10人が2回ずつ購入している状態から、
20人が2回ずつ購入する状態にするのが水平展開
10人が4回ずつ購入する状態にするのが垂直展開

そして、この2つの方向のうち森岡さんは水平展開をするべきだと強く語っています。

先ほどのMをブレイクダウンした要素のうち
(過去購入率×エボークト・セットに入る率×年間購入率×年間購入回数)

過去購入率とエボークト・セットを上げるのは水平展開
年間購入率と年間購入回数を上げるのは垂直展開
のアプローチです。

森岡さんは水平展開をすることにより既存のお客さんのリピートも増えMが効率良く拡大すると言っています。

森岡さんの言っていることは正しいのですが注意が必要です。

これをそのまま真に受けて水平展開をして新規獲得をするために価格を下げる・クーポンを配布する・TVCMを投下する
とだけ考えてしまうとまずい。

それって、消費者のプレファレンスを上げることに繋がっていますか?っていう話なんです。

あくまで「消費者のプレファレンス」を水平展開して上げていくことが大事。

価格を下げるのもクーポンを配布するのも、価格という要素を使って一時的に購入を促しており持続性のあるMの拡大ではありません。

TVCMの投下は認知率の向上にはつながるかもしれませんが、それだけではMの水平展開にはなりません。

ここで、水平展開のいい例と垂直展開の悪い例をあげておきましょう!

例えば、水平展開の良い例はネットフリックス。

ネットフリックスは多くのユーザーに刺さるコンテンツをものすごいスピードで投下しています。

つまり先ほどのMの水平展開にあたります。そしてそれ自体が既存ユーザーの解約防止につながり全体としてMを効率的に拡大しています。

逆にソフトバンクが行った牛丼や31の無料クーポン・キャンペーン。

あれは既存顧客の解約防止という意味でMを垂直拡大しにいったのですが、
根本的にそのキャンペーンは事業とのシナジーはなく、プレファレンスというよりも価格のコントロールに近い施策。

さらにキャリアの事業は成熟しており解約率はほぼ一定。

その中で既存顧客の垂直拡大を無理に取りに行ったのですがほとんど効果がなかった悪い例です。

もちろん一概に全てを水平展開するべきだとは思いませんが、消費者のプレファレンスを拡大する意味での新規獲得を意識してブランド・サービスの拡大につなげましょう!

まとめ

ここまでで確率思考の戦略論について徹底的に解説してきました!

森岡さんは赤字体質を脱しV字回復を成し遂げるほどの売上目標を達成するためにはさきほどの要素のうちどこをどれだけまでドライブさせればよいのかを徹底的に分析し、そして、そのビジネスドライバーを限られたヒト・モノ・カネの資源の中でどのようにアロケーションして拡大させていくか戦略を練っていったのです。

傍から見ていると、大きな予算をかけてハリーポッターが当たってV字回復というように見えなくもないですが、実はそこに至るまでに、USJそのもののコンセプトを再定義し予算をできるだけおさえつつ多くのプレファレンスを獲得できる施策を打ち続けそこで得たキャッシュを基にハリーポッターを成功させるという緻密な数学的ロジックが隠されていたのでした。

森岡さんの他の書籍とも合わせて読むと理解が深まります。

ぜひ数学マーケティングの思考を身に着けて、データの力でビジネスをグロースさせていきましょう!

それでは、本日の覚えて帰って欲しいキーワード!!

いってみましょう!
・プレファレンスとは消費者のある商品に対する好意度であり、それを総合したものはパラメータMに支配される負の二項分布NBDモデルで表される
・売上=全対象人数×認知率×配架率×過去購入率×エボークト・セットに入る率×年間購入率×年間購入回数×平均購入金額とブレイクダウンされる
・認知率と配架率を改善しながらNBDモデルを支配するパラメータMを水平拡大していくことがビジネスゴールを達成するために必要である

以上、ウマたん(https://twitter.com/statistics1012)でした!

スタビジというサイトYoutubeチャンネルでデータサイエンスについての発信をしていますので、こちらもよろしくお願いします!

それではまた今度!
Let's statistics×bussiness「スタビジ」!

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