見出し画像

いつか壊されるものではなく、長く使えるモノをつくりたい

職人インタビュー:仕上げ担当 金森 淳

「元々建築にも興味があり、モノづくりをしたいという思いがあって、畑の違う業界で会社員をしていたのですが、木工やデザイン、図面引きなどを勉強できる学校に入りました。」

卒業後は、木工を中心とした特注家具のメーカーに就職。そこで請け負って作っていたのは、ホテルやレストランの椅子やキャビネット、店舗のフィッティングルームなど。最終的にはデザインをするところから塗装や仕上げまでを担当し、ひとつのものを一から作る面白さを体験。

「でも、モノづくりと言えども、商業のモノづくりはいつか壊されてしまうものがほとんどで、実際のユーザーに届くものとも少し違う。せっかくモノづくりをするならば、“長く大事にされるモノづくりがしたい”という思いが徐々に強くなっていきました。」

直にお客様に届くものが作れることの幸せ

ある日、履歴書とポートフォリオを持って、沼田椅子製作所の門を叩く。
突然の訪問者に驚かれつつ、そのまま面接となり、これまでの経験や人柄をみて、即採用に。

はじめは、ソファの座クッションの綿入れやウレタンを入れるなどのクッションづくりを担当。

「直にお客様に届くものを作れることに喜びを感じ、モノづくりを仕事にできることへの幸せを感じました。」

その後は、現在の仕上げ担当へ。この"仕上げ”という行程は、お客様に届く直前の場所。つまり、ブランドの顔ともなる最も重要な部分。

元々はブランドの生みの親のひとり、沼田雄三工場長が担当していた行程だけに、責任も重大。

ベテランだからと言って任せられる行程でありません。任せられる人がなかなかいない中、豊富な知識、まじめで信頼のおける人柄、そして、"良いものと悪いもの”が感覚的に分かるモノづくりのセンスを持ち合わせた金森さんが抜擢。工場長の丁寧なモノづくりを見て学んだ“bloccoイズム”を引き継ぐ職人なのです。

画像2

「自分がお客様だったら」が高い“blocco品質”の基準に

「プレッシャーも感じましたが、仕上げ行程の前に沢山の職人が作り上げてきた全てのパーツをまとめ、ひとつに組み上げ、ソファとして完成させる責任があります。」

ソファの見た目、バランス、ほつれ、ほこり、など、細かいところまでの全てが最後の行程で決まります。厳しいチェックの元、少しでも違和感があれば各パーツの行程の担当へ差し戻し、調整を行います。これが高い品質を保つ重要な作業であり、『blocco品質』のベース、基準となるのです。

オーダーソファなので、生地も形もすべてが違う。故に、マニュアルはなく、"こうだからこう”という答えがないものだからこそ、高い品質基準を保つ感覚が大切なのです。

「自分がお客様だったら」ということを基準にして高い品質を保ち、今では「金森基準」と言われるほどに。培うのが難しい部分であるからこそ、職人の感覚+お客様の感覚の両方の”感覚”を大切にしています。

画像3


100%は当たり前であり、通過点。完璧以上の120%を目指す。よりよいものを作って、お客様に届けたい。

「長く使うことで宿る、味わいが出るようなソファを作っていきたい。
そして、お客様にもっと満足してもらえるものをつくり、沢山の人に届けたいと思っています。」

例えば、中身はしっかりしているのに外側にほつれがあったり、デザインはいいのにフレームが壊れてしまうなど、どこかだめでも完成には至らない。

お客様には見えないけれど、ソファの裏地のタックステープをまるで定規をあてたかのようにまっすぐキレイに貼るなど、スピードではなく、ひとつひとつ細部にまで真心や職人魂を込め、手抜きをしない丁寧さを大切にしています。

完璧よりももっと上を目指さない限り、100%のものは生まれない。」と静かに力強く話す。

一見、無駄だとされそうなことまでをするのがbloccoのモノづくり精神

最近は娘も生まれ、「自分が作ったソファをベビーベッド代わりにしている」と笑顔で話す金森さん。娘の寝顔を見て、ますますモノづくり精神に熱が入ります。

「将来的にはソファづくりの全てのパーツの行程づくりを経験したい。」

このチャレンジ精神と一貫した想いの強さがbloccoブランドを支えているのです。

画像1


インタビュー・文:海渕恵理

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?