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旅に出る日を待ち侘びて

8月26日、ここは静岡発・新千歳行きの飛行機の機内。
飛行機は地を確かめるような足取りで搭乗ゲートからゆっくりと離れ、滑走路へ向かう。

実に5回目となる北海道。
はじめての北海道は高校時代にオープンキャンパス(という名の旅行)で訪れた。
楽しんだのも束の間、帰りのセントレア行きの飛行機が台風の影響で欠航してしまい、空港で夜21時頃まで待機する羽目に。結局、やむを得ず、運行を再開した羽田行きの便に乗り、東京の見ず知らずの公園で一夜を過ごす、なんてトラブルに見舞われた。
高校生の自分にとってはハードすぎやしないか。

2回目は大学受験(落ちた)、大学生になってからは旅行で札幌、登別、小樽を訪れた。
学生時代の愉快な思い出と(既に美化されたが)ほろ苦かった思い出が共存する、特別な土地なのである。

離陸して数分、左手に雲の中からぴょんと顔を出す富士山が見えてきた。
そして普段は気にも留めない夏の象徴である入道雲を、ボーッと眺めつつ、北海道の記憶を呼び起こす。
そして今回の旅への高揚感に入り浸る。

富士山を見て、静岡での生活も残り1週間を切ったのだと改めて認識する。
というのも周囲よりも半年遅れての大学卒業に伴い、8月末で静岡を離れることにした。
来年の4月に社会人として働き始めるので、それまでの間は人生で1番といっても過言でないくらいの自由を手にする。

莫大な自由を手にしたが故に、逆にどう時間を使おうかと一瞬困ったが、論理と理屈は排除すれば僕には結局旅に出る、一択だった。(同世代より一歩抜きん出たスキル取得に時間を割くことが社会人になる前の準備としては最適だろう)

そんなこんなで9月の上旬からの海外へ行くことに決め、気づけば航空券を予約していた。
海外は2年半ぶりで、随分と我慢したものだ。

今回の旅はみんな大好きタイと以前北部を横断したインド、そしてネパール、バングラデシュと少し馴染みのない国も訪れてみようと思う。
帰り航空券はひとまず取らないことにしたので、細かく計画は立てず、都度ルートを決めることにする。

なぜ旅に出る?

棒立ち姿を不意に撮られた@インド・ニューデリー
ザ・インド感溢れる写真

旅好きな人なら誰もが考えるであろう、このテーマ。
僕はなぜか時間と場所が変わる度にこのテーマへの答えが変わる。笑

▷ 一度切りの人生なのでせっかくなら死ぬまでに地球の隅から隅まで冒険してみたい
▷ バックパッカーって響きがカッコよくね?(単純)


自分なりに答えを導いてきたが、今回の旅はどうやらもっと核心に触れるような、原点があるのではと考えるようになった。

心をほぐす

今回、長旅に出る理由を自分に問うた結果、"心をほぐすため"という結論に行き着いた。

ここで少し自分の性格の話ができれば。
最近強く自覚するのが、僕は自分が強く心を突き動かされたものにしか興味を示さない人間であるということ。
世間で流行しているものや周囲が興味関心を抱くことに対しては無関心であることが多く、自分がふとハマったものにだけ固執する。
つい論理や理屈を重視してしまうので、時間とお金をそこに費やして得られるものがあるのかと、頭の中で考えてしまうのだ。
その結果、大抵のことは価値がないと判断してしまい、興味を示した上で、行動を起こす(チャレンジしてみる)ことが滅多にない。

あとは感情に濃淡が生じない人間でもある。(字面だけ見ればロボットじゃねえかよw)
ひどく落ち込むこともなければ、感極まって泣くこともない。
常に感情を平坦に維持しようとする、そんな性格。

この冷淡で面白みの欠片もない性格を今では受け入れつつも、ふと嫌気が差すときも実は結構ある。笑
例えば、何かサプライズをされた時に、素直に喜びを表現できなくて、相手をがっかりさせてしまったのでは?と人目を気にすることもあった。
逆も然りで、周囲の人が何か落ち込んでいる時に、表面上では共感を示す行動をしていても、心の底からその人の気持ちに寄り添いきれなかったり…。
他の人はユーモア溢れる、明るく、社交的な性格で羨ましいな〜と何度思ったことか。

そんな感情を扱うことが随分と苦手な自分から少し離れたいと思うとき、僕は無性に旅へと出たくなるのだ。

旅中の何気ない一コマ

論理と理屈で興味を抱くものを決めると述べたが
このルールに従えば、旅なんて正直生産性のない行為だと思っている。
日本にいれば安全で快適な生活を送ることができるし、
海外へ旅に出たから価値観変わる、なんて美味しい話はない。
結局のところ、旅はお金と時間を消費して周遊するだけの自己満に過ぎない。

でも、それでも、僕が旅に出るのは
旅中の些細な一コマに触れる、その瞬間が愛おしいから。
至ってシンプルだけれど、旅に出てようやく分かった。

普段微動だにしないカチコチに固まった感性がグッと働き出す。
アンテナが張り巡らされ、五感から入る全ての情報に意味があると感じる。
すると僕の心は徐々にほぐれ、ジーンとくる言語化しがたい"何か"を心の中で反芻する。

飛行機の搭乗を待っている時
入国審査を抜け、空港を出た時
舌鼓を打つほどの料理を食べた時
広大な砂漠で満点の星空を見上げた時
拙い英語でも現地の方と仲良くなれた時
何とかなる精神で幾多のトラブルを乗り切った時

ホーリー祭り@インド・ウダイプル
バックパッカーの聖地・カオサン通り
ここに来ると"帰ってきたな〜"と安堵する
ランタンの街@ベトナム・ホイアン
この後、店の人に写真代という名目でお金を要求されたw
名前忘れた、ワットなんちゃら@タイ・バンコク
インド・ムンバイのお店にて
なぜか一緒に写真撮ったけど、店の商品は一切買いませんでした。
おっちゃん、ごめんよ。
アンコールワットを案内してくれたガイドさん
笑顔でココナッツジュース持ってますが、すいません、美味しくなかったです。
岡部の旅フォトで一番気に入っている一枚@インド・ジャイサルメール
こちらも笑顔で写真撮ってますが、ラクダに長時間乗ると太ももが筋肉痛になることが分かりました。足のプルプルに耐えています。

こうした一コマを紡いでいく一連の作業こそが、旅の醍醐味なんじゃないかな。

旅に出る日を待ち侘びて

「当機は間もなく着陸態勢へと入ります。シートベルトを緩みのないよう、しっかりとお締めください」

CAのアナウンスで、意識は一気に現実へと向く。
気づけば窓の外は夏を象徴するような青空から北海道の広大な平野へと変わっていた。

北海道を訪れた2週間後には、久しぶりに大きなバックパックを背負い、パスポートを握りしめ、タイに降り立つのだ。

実感は全く湧かない。
飛行機の予約書類を何度も見返し、本当に海外に行くのだと自分に言い聞かせる。

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次の旅はどんな一コマと出会うのだろうか。
その些細な一コマに自分は何を感じるのだろうか。






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