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クラスの子ども達2

初めて講師として担任を持つ。これまでの子育ては私1人に子どもが2人。

これが先生1人と子ども35人となると全く違うことに愕然とした。講師一年目、2年生を担任していた時、特に1人の男の子には手を焼いた。子ども達にしてみれば不慣れな新米先生がやってきてなんなんだ!と思う事が多々あったと思う。私は子ども達をまとめよう、きちんとやらせよう、そんな見当違いの空回りをしていた。

その男の子は、常に不機嫌でかっとすると手が出てしまう。そんな彼に私は真っ向勝負を挑んでいた。私には大きく受け止める余裕がなかった。口をとがらせ私に食ってかかる彼をどう受け止めればよいのか。話したり怒ったりなだめたり苛立ったり。日々悪戦苦闘していた。

そんなある日、わたしは生活科の授業でこんな話をした。

「今みんなは、沢山の大人に見守られています。登下校中、横断歩道に地域の大人が黄色い旗をもって立っているでしょ?みんなが安全に渡れるように守ってくれている。君たちが大きくなったら今度は君たちが大切な人を守る番よ。大切な人を守ってね」

すると、
あの私と真っ向勝負していた、
私が1番手を焼いていたあの男の子が言った。

「じゃあ俺たち先生を守らんな」

しばらく言葉が出なかった。
でも
涙が後から後から溢れ出てきた。

子ども達がざわつく。「先生が泣きよる〜」「あー先生泣かした〜」
男の子は照れ臭そうに笑っていた。

職員室で主任の先生にこの話をした。日頃の私の悪戦苦闘ぶりを温かく見守ってくれていた先生は言った。

「ね。先生ってこんな嬉しい事があるから辞められなくなるのよねぇ」

翌日、気さくによく話しかけてくれていたクラスの保護者が言った。
「ふふふ。先生泣いたらしいやん!」

子ども達はとんでもなく大きなものを私にくれた。愛とか思いやりとか心の傷とか。

次は講師3年目、一年生を担任した時のエピソードを。

つづく




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