Kindleで読み上げ読書③ 『死を招くファッション 服飾とテクノロジーの危険な関係 』

人類の歴史は、ファッションの歴史でもあるのだなと思います。
防寒のためだけなら風を遮る布を纏えばいいだけのはずだし、光り物を身につける必要もないはずです。
だけど人間の欲望はそれに飽き足らず、ファッションが財産の象徴のようになり、財を尽くして着飾るようになりました。

『死を招くファッション 服飾とテクノロジーの危険な関係』
Alison Matthews David (著), 安部 恵子 (翻訳)
化学同人刊
3,850円

ファッションで死亡するというと、マフラーが何かに引っかかって首がしまって死亡とか、厚底靴で転んだり事故ったりというのを思い浮かべていたけれど、そんな形状の話だけではない豊富な事例に驚きました。

まず、ものに色をつける染料の技術って、科学の発展によってもたらされたんですね、想像もしていませんでした。
緑色にものを染める技術が開発されて大ブームになったそうですが、その原料というのがヒ素だっていうんだからヒーッてなります。

本書ではそんな事例を、産業革命前後を中心に語っていきます。

その他、ファッションの進化は、火事との戦いだったこともわかります。本書の中で何人の人が燃え上がって亡くなっていることか!
中でもバレリーナたちが、美しく着飾るためなら命を惜しまないといった署名までしているのには、美容やダイエットで命を落とす現代人につながるものを感じます。

ファッションのための新技術で、工場で働く労働者を強烈な体調不良から死に至らせ、出来上がった製品を身につけた貴族階級の人たちにも死をもたらすという連鎖を繰り返す。労働者階級がものを作るわけだから、そこで生まれた毒を含む商品は、最終的には貴族階級に行き着くわけです。
資本主義経済の仕組みを垣間見る内容でもあります。

暗闇で文字盤が光るラジウム時計を作っていた女工たちが、ラジウムを塗る筆を舐めて湿らせていたため、そのうち体が光り出し、猛烈な体調不良の末亡くなったという「ラジウムガール」の話は有名ですが、本書ではその当時の広告などが載っていて興味深いです。

なにより恐ろしいのは、こうしたファッションによる健康被害は、過去に留まらないところです。つい先日も、デルタ航空のユニフォームを着用して体調不良を訴える人が続出したとニュースになっていましたね。

本文の間に参考画像が挟まれていますが、細かな説明は本文でなされているので、見なくても問題ありません。画像は、美しい衣服やアクセサリーから、病気の症例まで、幅広く気持ちよくも悪くもなれます。おそらく紙だとモノクロになっているだろう画像がすべてカラーで見られるのも電子書籍の特権なので、詳しく見たい人にも電子がオススメです。

あとはダイエットしたい人も是非。
数々の身の毛もよだつ事例に、食欲すっかりなくなれますよ。

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