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ひなちゃんとの真剣勝負!

 ひなちゃんがやってきてからの一月は正直あまりよく覚えていない。四六時中ただただ眠くてぼーっとしていた。
この期間は妻と僕の親が交代で家事をしてくれていた。我々のミッションは、この一月の間にひなちゃんのお世話を一通りできるようになること。それに徹した。
 病院で一足先にひなちゃんの世話をしていた妻に、だっこの仕方やおむつの代え方、ミルクの飲ませ方などを伝授してもらう。さすがは六日間の先輩だ。我々なりのコツも踏まえて教えてくれた。
最初のうちはほとんど二人での共同作業でしていた。おむつを替えること一つを取っても、慣れるまでは手が4本ほしかったからだ。
片手で汚れを確認しながらもう一方の手で拭くと、それだけで2本の手が埋まってしまう。加えてばたばたと威勢良く蹴り続けるひなちゃんの足を持つ係が必用だった。
 ミルクを飲ませておむつを替えて寝かしつける。このサイクルを3時間おきに延々と繰り返した。常に眠くて、それ以外に何か考えるということがほとんどできなかった。
ただそんな中でも1日に1・2時間は頭がパチッとさえるタイミングがあって、その間にLineを一気に返したり仕事を片づけたりしていた。
特にきつかったのは寝かしつけがうまくいかない時だ。真夜中に泣き続けるひなちゃんをだっこして家中を徘徊する日が続いた。そんな時は、寝ぼけながらも絶対にひなちゃんを落とさないことだけを考えていた。
寝たと思ってベッドに置くと、数分も経たないうちに起きてしまう。0歳にして今自分が置かれている状況にいち早く気付くというのは非常に関心である。
起きずに寝かしつけられたら我々の勝ち、ひなちゃんが起きたら負けというまさに真剣勝負だ。
でも、それがいやだと感じたことは今のところ一度もない。どんなに眠くて起き上がるのが辛くても、我が子はやはり何よりもかわいいものだ。
 ある日、妻と一緒にひなちゃんをお風呂に入れながらぼんやり考えた。こうしてひなちゃんのお世話をただただ一生懸命にする日々も、後から思い返したらきっと一瞬なのだろう。あっという間に大きくなって、パパ臭いとか生意気なことを言い出すに違いない。
でもそれでいいのだ。今のうちに足でもかじっておこうかなんて考えながら、この瞬間を大切にしたいと思った。
1ヶ月検診を前に、ひなちゃんはもう新生児という肩書を卒業しようとしている。

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