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「美味しんぼ」再読備忘録2024「手間の価値」-第二巻「幻の魚」第1話-

今回から第二巻を再読していきます。まずは第一話「手間の価値」ですね。そして常連キャラのひとり、「周大人」こと「周懐徳」さんの初登場回になります。

日曜日に栗田さんは文化部の先輩田端さん、花村さんを誘って横浜中華街に遊びに来ています。山岡もダメ元で誘ったらついてきたが、横浜の場外馬券場に来るついで、と知り落胆する栗田さん。

しかし、「美味しんぼ」の物語のフォーマットの一つである「普段はこれっぽっちも役に立たないが、とりあえず食い物に関することだけは山岡の出番」というのが、周りに周知されつつあるということだろうか。中華街のあちこちで日本に馴染みのない食材、技法などを皆にレクチャーする山岡。やはり食い物のことだけは頼りになるな。

その後、一同は花村さん主導?で女性誌でオススメされていた「大南楼」に到着した。その女性誌は「アンノン」。ここ笑うとこやで。しかし、「アンノン」で取り上げられていたからということもあって、長蛇の列である。

かなり並んでようやく自分たちの番になった一同。「忙しいから早く座って」と殺気立った女性店員やブスッとレジ前に座り「いらっしゃいませ」の一言もない店主らしき親父の態度に山岡は不満そうである。トラブルの予感がするな。

「ゴマソースとチリソースの料理を一緒の取り皿一枚で喰え」と言われ、さらに別のテーブルの家族が麺類を注文した際に「メン類はバラバラに注文しないで、安いから。一グループ一種類で」と客に言っているのを聞き、ついに山岡の堪忍袋の尾が切れる。

そして「客を粗末にするようなこんな店で何も食べちゃいけない。出よう!」と出ていく。食べなかったが勘定は一応払ったようだ。これはツライ。

この女性店員や店主がかなり接客悪いけど、中国人の店って料理店に限らず、こんな感じの店員多くない?そもそも。なんか偉そうで横柄なのが多いというか。いやただ単にぶっきらぼうなだけ、日本語があまり上手くないからつっけんどんに聞こえるだけ、みたいな可能性も逆にあるよな。

さて、ともかくも最初の店で食べられなかったので一同は再挑戦しようと雑誌で紹介されていたもうひとつ大人気店である「宝華飯店」に向かう。ここも当然大行列だ。また並んで待つ。そして入店し、自分等の注文の料理が運ばれてくる。

山岡は運ばれてきた豚バラ煮込みを一口食べる。そして箸を置き、店員を呼びこう言う。「この豚バラ煮込みは出来そこないだ。食べられないよ」と。

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!と喝采をあげたい

「何だって」と怒る店員だけでなく、さっきの店でも食べられなくて代金だけ払った花村さん、田端さんも怒り出す。「すこしくらいマズくてもいいじゃないの!」と花村さん。いや、それは流石にどうかと思うが…。

「宝華飯店」の店主も包丁を振りかざして調理場から出てくる。「出来損ないとはなんだ!」「うちの店はマスコミに取り上げられてて大評判なんだ。有名人も来てくれてるし」と大激怒である。

山岡は「まずいものはまずい」「この店に来た有名人はみな味のワカラン連中のようだ」と反論し、激昂した店主は包丁を振り上げる。包丁を振り上げた店主の腕を掴み「やめんか」と止める謎の人物の登場となる。

しかし第3話「寿司の心」でも山岡の挑発に怒った店主の銀五郎が包丁を振りかざしていた。調理人の怒りを表す誇張された表現だと思うが、現代では出来ない表現であるかもしれない。

その謎の人物は自ら「周懐徳」と名乗り、「さきほどから一部始終見てました。ここは私に免じて収めて下さい」と騒動を収めようとする。さきほど、ということは最初の店の「大南楼」の騒動から、中華街の顔役である周大人は警戒してついて来ていたのだろうか。いや、それは正しいけど。

怒りが収まらない「宝華飯店」の店主は「日本人に中華料理の味がわかってたまるか」と言う。それが山岡に火をつけたのか、「客にひどい料理を出しておいていばるとは呆れる」「すくなくとも自分はこれよりうまい豚バラ煮込みを作れるぞ」と反論し、「出来るわけない」「出来るわ」と言い合いになる。

折角、騒動を穏便に収めようとした周大人のとりなしもこれでは台無しである。収拾がつかないのと、日本人である山岡が本当に「本物の豚バラ煮込み」を作れるのか、という興味もあり、周さんは「じゃ自分の家に来て下さい。そこで豚バラ煮込みを作ってください。勝負です。判定は私がやりましょう」と提案する。

山岡は了承し、中華街の肉屋で豚バラを買う。周さんは車を手配してくれたようだ。車は周さんの大豪邸に到着する。その敷地や建物や内装もすごいが、厨房もまたすごい。調理器具や調味料なども揃っており、大きな料理店なみである。山岡と「宝華飯店」の店主が対決するにも充分だ。

「では3時間後に」と周さんに告げて、調理に取り掛かる山岡。行きがかり上、「手伝う」という栗田さんたち。しかし、手伝うようなことはないので、まあ見ててくれと山岡。

工程を説明しつつ調理する山岡。皮付きの豚肉の下ごしらえをして、茹でて、味をつけ、これを蒸すだけ、である。手間はかかるが確かに難しい技術は要らなそうで、これで「宝華飯店」に勝てるのかと不安になる栗田さんたち。

さて、二時間かけて蒸し上がったので、いよいよ対決となる。判定は周さんと奥さん。公平を期すために「宝華飯店」からはいつも店で出しているものと同じものを持ってこさせた、とのこと。

食べ比べると完全に山岡の勝ちである。「中国人が中華料理で日本人に負けるなんて」と周さん夫妻は愕然となる。山岡が作ったのは本当の東坡肉(トンポウロウ)であり、「宝華飯店」はただの豚バラ煮込みであり、しかも煮込みが足りないと酷評される。

マスコミに取り上げられ大人気となり、客が押し寄せたために仕込みに二時間もかかる煮込み料理を丁寧に作るのが馬鹿らしくなったんだろう、と山岡に解説され、スゴスゴを帰っていく「宝華飯店」の店主。

ここまでは良い。しかし周さんの「有名になって堕落する方も悪いが日本人も良くない」という発言と、それを受けての山岡の「マスコミで紹介されると皆が押し寄せる。自分の舌でなく有名だからとチヤホヤする。これじゃ店が堕落するのも当たり前だ」と言う。

ここ、おかしくないか。そりゃ手抜きする中国人が悪いやろ?。なんで客の、日本人のせい、になんねん?。この辺からなんかただ美味い、不味いだけでなく、作者の主義主張を山岡の声として語らせる場面が増えてくるのだった。まあ偏見に凝り固まった、面倒くさい主張は聞き流し「美味しんぼ」の面白さだけを味わうとしましょうか。

例によってこの「美味しんぼ」のこの東坡肉(トンポウロウ)を再現しているYOUTUBEチャンネルは数多くあります。

https://www.youtube.com/results?search_query=%E7%BE%8E%E5%91%B3%E3%81%97%E3%82%93%E3%81%BC+%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%BC+

ここにあげときますので興味があったらご覧ください。一番上に来る「美味しんぼ」のアニメも今は無料でYOUTUBEで観られるんですよ。良い時代になったなあ。実は「美味しんぼ」のアニメ化は当時としてはかなり出来が良いので、原作と見比べるのも面白いですよ。原作をリスペクトして良い「改変」を加えてるんですよ。

時代といえば、中国からNO1料理人が来日して、本場の中国料理を振る舞ったけど、その頃の日本人の口には合わず、皆が料理を残し、主人公しか「美味い美味い」と受け付けなかったが、自分の味が分かる人がひとりでも居てくれて良かったと料理人が言うという漫画の回を昔少年誌の連載で読みました。その漫画の題名は忘れましたが、そういう時代性もあったのかな?と。

つまり本格的な中国料理を日本人が受け入れるにはまだ時間がかかったということ。日本の中華料理の元祖である陳建民さんは日本の味覚に合わせたアレンジを行い、そのアレンジこそが今日の日本での中国料理、とりわけ四川料理の普及に多大なる効果を発揮したと云われています。

この頃、バブル時代で本場の中国料理を食べに香港や上海などにグルメ旅行に行く人が多かったけど、味が濃すぎて口に合わないって言う人も結構居ました。日本人には中国料理より台湾料理のほうが、より日本人の口に合う、美味しいというブログの記事なども幾つか見たように思います。

保守的というか喰ったことない味に対して嫌悪感がまず先に立ったといいますか、当時の日本人はまだまだ田舎者だったということでしょうか。世界中から美味しいものを探し出し、聞いたことのない世界各国の料理を流行のスイーツや牛丼屋の目玉メニューにまでしてしまう現代とは隔世の感がありますね。







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