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『リカ』シリーズのリカは何歳なのか ※20230903追記

五十嵐貴久著の『リカ』がシリーズ化していた事を最近知り、過去編である『リバース』まで読んだ。

そこで「リカって結局何歳なの?」という疑問を追求してみたいと思う。

3作目である『リバース』が時系列的には一番最初らしいので、そこから描写を拾って考察するものとする。

※4作目『リハーサル』で追加情報があったので修正しました。


※核心に触れるネタバレはないとは思いますが、『リカ』『リターン』『リバース』を読んでいないと分からない部分があります。未読の方はご注意を。

本文中の描写


テレビはカラーです。教会にあった白黒の小さなテレビとは違って、画面も大きいし、デザインもすっきりしています。

『リバース』一章より

白黒テレビは日本では1953年から放送開始、カラー放送の開始は1960年から。
参考:Wikipedia 『白黒テレビ』

家にあるのは最新式の全自動洗濯機で、初めて見ました。村ではまだ洗濯板を使っている家もあるぐらいですけど、とても便利なものですね。

同上

全自動洗濯機そのものは1965年から発売されていたが、性能があまり良くなかった為、本格的に普及するのは1980年代に入ってからだったらしい。雨宮家は金があって見栄っ張りなので性能より目新しさで導入した可能性はなくもないと思う。
参考:『洗濯機の歴史』


留守番電話のメッセージだった。

『リバース』四章から

留守電のサービス開始は1977年、当初は東京のみ。翌78年に対象が全国に拡大。長野の教会に当てた電話なので78年以降と思われる。
参考:Wikipedia『留守番電話』


家電製品に関する記述を元に、最も早ければ1978年時点で15歳=1963年頃の生まれという仮説が成り立つ。第1作目である『リカ』(2002年)の時点で39歳、続編である『リターン』で49歳という事になる。

《9月3日追記》

第4作目『リハーサル』の後書きで、『リバース』は1970-80年代の物語という記述があった。『リバース』は作中で3年が経過しているので、年代をまたいだとすれば1978年ないし79年から物語がスタートしている事になる。仮に78年時点でリカが12歳と仮定すると1966年生まれ、『リカ』の時におよそ36歳となる。

疑問

幸子は上京するまでカラーテレビや洗濯機を見た事がなかったのか

参考元のWikipediaの記事によると、70年代にはテレビ番組はほとんどカラー放送になっていたらしい。60年代半ばに山間の集落で生まれた私の母は、物心ついた時にはカラーテレビが家にあったという。槇原村の当時の文化レベルについての描写がほとんどない為憶測の域を出ないが、教会は家電製品は最低限のものでいいという方針であり、他の村民は所有していたのかもしれない。

洗濯機も、全自動以外ではローラー式や二槽式などが先んじて全国に普及している。こちらも描写の少ないものから行間を読むような推測だが、洗濯板を使っていたのは一人暮らしのお婆さんとか、機械化の恩恵が少ない、あるいは新しい技術についていけない家の話だったのではないだろうか。幸子も「全自動洗濯機を見るのは初めて」としか書いていないので、他のタイプは知っていた可能性がある。

自分語りで恐縮だが、私は東日本大震災で被災し、自宅を失った。家人の伝手で高台に残った空き家を借りて住んでいたが、その頃に親戚の家に処分されず残っていた二槽式洗濯機を譲ってもらい使っていた時期がある。生まれてこのかた全自動が当たり前だった私にとって、脱水の為にいちいち洗濯物を移し替えるのは面倒だった。そこから考えると確かに「便利」ではある。

おまけ・刑事の『菅原』の年齢

『リカ』から『リバース』までの3作品に『菅原』という刑事が登場する。『リバース』だと千尋の失踪について調べる若い刑事、『リカ』ではリカと対峙する初老(本間より年上なのは確実)の刑事として描写される。この人はいくつなのか。
調べたところ、中卒でも警察官になるのは不可能ではないらしいが、高校卒業程度の学力が要求されるようだ(参考:中卒から警察官になれるってホント?)。昭和の募集要項は現代と違うかもしれないが、恐らく高校卒業はしているのではないだろうか。
2002年に42歳だった本間より年上なので、仮に菅原を45歳として計算すると1957年生まれ、浪人や留年をせずストレートに高校を卒業して試験をパスしていれば1975年に警察官になり、同じ年に千尋の失踪事件の担当になった━━、という事で辻褄は合う。
結論として、『リカ』登場時点で45歳以上だと思われる。

『リハーサル』(90年代)で30代らしい。同作では携帯電話やAEDの存在が明記されている。携帯は1987年AEDは1998年頃に導入されたらしい。
1978年に高卒で警察官になり、98年でまだ30代。1959-60年生まれだとすれば『リハーサル』時点で38か39歳、本間の同期である原田の先輩という点を鑑みれば1959年生まれで本間や原田より一つ歳上、という事でほぼ確定……したと思いたい。


後発の作品でこの仮説をひっくり返すようなネタが出てこない事を祈りつつ、ここまで読んでくださった方への感謝を結びの言葉としたい。


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