教育社会学 note⑥ 0724
〈大テーマ〉
学歴社会とは何かを明らかにし、高学歴化が進行するとどのように変化するのかについて、学力の視点から述べよ。
0 はじめに
・少年非行の現状と犯罪・非行に対する社会学的アプローチを紹介し、調査結果を通じて子どもたちがどのような規範意識を有し、教師と関わりを持っているのか。
1 学習課題
(1)非行少年に対してどのような指導や支援が必要か様々な視点を検討しつつグループで討議してみよう。
(2)少年事件を取り上げ、その事件に関わる被害者・家族・地域社会・学校・マスコミなどがそれぞれどのような社会的反作用を向けるのかを考えてみよう。
(3)犯罪・非行に対する理論や解釈は、本章で紹介した以外にも発展している。その他の理論を調べて少年非行に対する理解を深めてみよう。
2 日本における少年非行の現状
非行少年の定義 少年法第3条
①罪を犯した少年(犯罪少年)
②14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年(触法少年)
③保護者の正当な監督に服しない性癖等の一定の事由があり、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をする恐れのある少年(虞犯少年)
法律的には非行少年には該当しないが、飲酒や喫煙、深夜徘徊その他自己または他人の徳性を害する不良行為少年・・・「少年警察活動規則第2条」
〇非行少年の現状
検挙人数は1980年前半を境にして減少傾向にある。
6割が中学生高校生。
3 少年非行に対する社会学的アプローチ
研究対象である犯罪・非行は社会の縮図とも言い換えられる。
社会的貧困や格差、新たな技術や媒介(SNSや電子マネーなど)そして、現代家族の生活様式や労働環境などが犯罪・非行の要因や手法として明らかにされてきた。
→これまでの主要な犯罪や非行に対する社会学的なアプローチを概観し、少年非行に対する理解や見方について学ぶ
①社会解体論とシカゴ学派
<社会解体論>
社会集団内の関係性が解体し、社会成員の規範が弛緩することで様々な社会問題が発生することに注目した概念。(シカゴ学派と称されるシカゴ大学社会学部の研究者が中心となって展開した。)
ショウとマッケイ・・・シカゴ市内の非行少年の居住地に注目
貧困層が集中する「遷移地帯」(移民が主に移入し居住するスラム化した地域)において高い非効率を示す。同地域内で生育した人々は反社会的な価値観を有し、さらに法律や社会規範に対して拒絶する傾向があることを明らかにした。
→少年非行は生物学的な資質(遺伝など)によるものではなく、貧困や居住地域などの社会環境に関連することを示した。
☆余談☆
個人的には、この話、ONE PIECEの魚人島編の話に繋がる気がする。
魚人街が貧困だったかどうかは、わからないけど、
居住地域としての環境としては、海賊になる者が多かったり、人間を嫌う者が多いという環境の中で育ったから、
人間のことをよく知らない魚人たちも、人間に対する嫌悪感を強く持っており、結果的にホーディのように極めて反社会的な行為に及ぶ者が現れることにつながったのではないだろうか。
ホーディが倒されたあと、魚人街はどうなったのだろう…
②緊張理論と非行下位文化論
アメリカの社会学者マートンは、デュルケームのアノミー論を社会構造論的な視点から再考し、社会構造に起因する緊張状態が犯罪・非行の発生要因となることを指摘。
<デュルケームのアノミー論>
欲望が規制の及ばない状況に陥り肥大化していくことに注目
<マートンの緊張理論>
人間の本性を善良と捉えて、社会の緊張状態が人々を犯罪・非行に追いやる
マートンは・・・
貧しい階層の人々の犯罪・非行が高い発生率を示すため、「文化的目標」と「制度化された手段」という図式を用いる。
アメリカンドリームに代表する富の獲得…「文化的目標」
文化的目標を達成するための合法的な手段…「制度化された手段」
→しかし、実際にこの手段で多くの富を獲得できるものはごくわずかであり、貧しい階層にある人々にとっては、奥の富を獲得できる制度化された教育環境や労働環境の手段でさえ関わりにくい状況…
「制度化された手段」は不平等感を与える→緊張状態を生み出す
緊張状態に置かれた人々の一部は、逸脱や犯罪行為を行って富の獲得という「文化的目標」を遂行しようとする。
マートンは犯罪・非行という逸脱行為を正常な反応と捉えている。
社会構造の観点から、それらの逸脱行為は、個別的な要因よりも社会的な圧力により表出した結果ではないかと捉えた。
<コーエンの非行下位文化論>
非行下位文化とは、非行少年が有している全体社会とは異なった特有の文化や価値観を指している。→非行下位文化は大都市部の労働者階級において形成される
非行下位文化は大都市部の労働者階級において形成される。
→出身階級の規範
労働者階級においては、この中産階級とは異なる価値観(非功利性や短絡的な快楽主義など)が優先される場合が多い
③ 学習理論
サザランドの分化的接触理論
クロワードとオーリンの分化的機会構造理論
サザランドは、身体的な特徴に注目する生来犯罪人説などの犯罪行動の先天的な決定論を批判し、犯罪・非行の原因を様々な要因の複合として究明しようとする多元因子論も批判する。
☞犯罪行動や属性や遺伝の産物として理解するのではなく、犯罪文化の接触など人々の社会的な相互作用の過程から学習される行動様式として後天的に習得されると考えた。そして、その相互作用は個々人に違いがあることを「分化(differential)」として理解した。
分化的機会構造理論は、成功の達成のために合法的な機会に恵まれなければ犯罪・非行といった非合法な機会を得ようとするが
その際に因襲的な非合法的価値観や徒弟制度的な体系、年齢構成などの様々な要素が影響することを明らかにした。
④ 漂流理論と中和の技術
<マッツァの漂流理論>
コーエンの非分下位文化論の中産階級の支配的な価値観に対抗する非合法的な価値観の学習に対して、その価値観をもつ非行少年が中産階級の支配的な価値観をも取り入れており、合法的な価値観と非合法的な価値観を漂流していると指摘する。
☞成長過程においては合法的な価値観にも影響を受けており、自らの非行行為という矛盾した状況を言い訳などで正当化する…葛藤の中和化
⑤ラベリング論
ベッカー
「社会集団は、これを犯せば逸脱となるような規則をもうけ、それを特定の人びとに適用し、彼らにアウトサイダーのラベルを貼ることによって、逸脱を生み出す」
セレクティブサンクション
・・・<何を>したかより、<誰が>したかによって人々の反応が異なり、評価が変わること
アメリカ合衆国では、ラベリング理論に基づいた4D政策が実施
<4D政策>
・「非犯罪化(decriminalization)」」
犯罪とみなされていた行為を犯罪の定義から除外すること
・「ダイバ―ション(diversion)」
刑事司法・少年司法システムから犯罪者・非行少年を除外すること
・「デュープロセス(due process)」
裁判所の裁量権を制限すること
・「非施設化(deinstitutionalization)」
できる限り収容施設に入れない
ラベリングの視点は、教師の児童生徒に対する社会的反作用など教師自身の自己反省を促す知見を与えてくれる。
⑥ボンド理論・セルフコントロール理論
<ボンド理論>
「人はなぜ犯罪・非行をしないのか」という命題を前提に半税や非行の抑制要因を考察。
→社会との絆(4つの要因)
①愛着②投資③巻き込み④規範概念
<セルフコントロール理論>
自らの欲望を自己規制できない人が犯罪・非行に至ると考える。
しつけなど幼少期の親との関わりが犯罪や非行への対応として重要だと考える。
→幼少期の親との関わりが、社会的な絆である「愛着」や「規範観念」を促進させ、セルフコントロールを高める。
4 児童生徒の規範意識と教師の関係
①児童生徒が行う逸脱行為
「決してしてはいけない」「しないほうがよい」の回答の割合
・小学生の9割は「よくない」
・中学生高校生「飲酒や喫煙」「化粧や洗髪」についての回答割合が低下
②ぜったいにしてはいけないことをしたときに一番怒る人
・最も高いのは全般的に母親
・次に父親
・先生(小中学生は高く、高校生は低い)
③教師との関係
・気楽に話ができる → 過半数
・期待されている →全体的に低い
・授業以外では話したくない→1割
④理想の教師像
・話を聞いてくれる (小~高にかけて上がる)
・おもしろい (小中高ともに3割程度)
6 今後の少年非行とその指導・支援
非行少年を含めた児童生徒は、様々な社会的背景をもちつつ親や教師から影響を受けている。
教師は児童生徒の社会的な関係性を注視し、自らの言動が与える影響を自覚することが重要
しかし、それは児童生徒と距離を保つことを意味するのではない。どのような指導や支援がその子にとって必要なのか、その指導や支援がその子に及ぼす影響がどのようなものかを意識することによって、少年非行やいじめ、不登校などの学校問題の解決への第一歩が踏み出せる。
7 まとめ
(1)非行少年に対してどのような指導や支援が必要か様々な視点を検討しつつグループで討議してみよう。
(2)少年事件を取り上げ、その事件に関わる被害者・家族・地域社会・学校・マスコミなどがそれぞれどのような社会的反作用を向けるのかを考えてみよう。
(3)犯罪・非行に対する理論や解釈は、本章で紹介した以外にも発展している。その他の理論を調べて少年非行に対する理解を深める
(1)
①非行を防ぐための指導支援と、②再び非行行動を起こさせない指導支援が必要だと考える。
まず、①の場合にも②の場合にも大切だと言えるのが、社会の絆の力だと思う。
家庭内でのつながり、学校内でのつながり、社会におけるつながりなど、人とのかかわりの中で、愛着が形成されたり規範意識を醸成したりすることは、「してはいけない」というラインをこえてしまいそうなときのブレーキになる可能性になり得ると考える。
文部科学省
(2)
自分が知る中でも特にショッキングだった神戸連続児童殺傷事件について調べた。
記事を読んでいくうちに、事件を取り巻くいろいろな立場の人たちに感情移入してしまい、なんともやるせない気持ちになっていく。
親としてや教師として、今の子供にはどのような関わりが必要なのかをしっかり見極めて、関わることの必要性を感じずにはいられない。
また、地域の子どもでも、あいさつしたり声をかけてつながりを形成する必要性を改めて実感した。
(3)
犯罪心理学の視点からのアプローチ
社会学的なアプローチではないが、重要な視点であると考える。