消えた魚の行方
大漁、大漁。
どうだ、あねさ。
おら、釣りうまくなったべ。
はよ、うちさ、けーろ。
あねさのたまげる顔が、目に浮かぶ。
シュッ
…ん?
なんだ、今ん音?
シュシュッ
………?
誰も、おらん…
ん?
左手が、やけに軽………
あ"━━━━━━━━━━━━━っ!!
魚が無ぇっ!!!!
誰だ!! けーせ!!
けーしてくれよぉ…
おらの、初めての大漁………
泣いとってもしゃーねえ…
他のもん採って、けーろ…
***
たでま、あねさ。
今日、魚いっぺー釣れたんだ。
だども…ごめん、途中で落っことしてしもた。
けーる道々で、ぐみとあけび、採ってきた。
これで勘弁してくんろ。
………へ?
さっき、自分で持ってけーったじゃねえか、て??
魚を?
おらが、け??
いんや、おら、今初めてけーっただよ、釣り行ってから。
………狐か狸にでも、化かされたんか………?
***
日が、とっぷりと暮れた。
河童のわらしが、寝ぼけまなこをこすりながら、用足しに外へ出ると…
くすくすくすっ
『誰じゃっ!?』
あたりを見回しても、誰もおらん。
わらしの上では、笑うとる口のような三日月と、魚のうろこのような小さな星が、きらきら、きらきら、光っておったんと。
その三日月に、青ーい、尻尾のような、雲もかかっておったんと。
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