頑張れない馬
頑張れない馬。
私のことである。
若い頃の私は、ものすごい速さで走る馬だった。
多分。
猪突猛進だし、とにかく動きながら、走りながら考える。
仕事が早いと言われ、どんどん仕事が増えた。
先日、多度大社の神馬が勇退することを知った。
私も若い頃の馬力はすっかり影を潜め、そろそろ牧場で日長一日草を喰む暮らしがしたい。
もう馬車馬のように走れない。
今はくたびれたところに、後ろに親を乗せて走らないといけない。
もう、走れないなぁ。
もう一踏ん張りがもうできない。
するにしても、今のコースじゃないところを走りたい。
そんなこの頃。
頑張れない馬が5月にまた人参をぶら下げた。
先程、女優の山本陽子さんの訃報を知る。
仲良しの友達が役者をしていて、よく陽子さんの別荘に行って楽しい時間を過ごしていた。
この夏も楽しそうだった。
素敵なネックレスをしているから褒めたら『陽子さんが買ってくれたの。』と言っていた。
いろいろ話を聞いていたので(その前は小川真弓さんともご縁があった友達。)、小川真弓さんや山本陽子さんが私にとっても身近な存在だった。
放浪記も出ていたから、森光子さんも。
私がいる世界とは全く関係のない世界の話を聞くのは楽しかった。
嗚呼。すごいなあ。
私は望まないコースをがむしゃらに走ってきただけだ。
もちろん、得たものもたくさんある。
けれど最近、違うことをしたいなぁ。と思うのだ。
(それが何かが分からないのだけど)
『自由に生きる』
憧れるけど、実は難しいことだ。
でも、どんどん、『今を変えたい』気持ちが大きくなっている。
分からないから、
目の前のことを頑張ってきた。
でも、それでは今のコースの延長があるだけだ。
変えたかったら数ミリでも向く方法を変えないと変われない。
明日突然、私の明日がなくなったら後悔しないだろうか。
そんなことを思った夜。
頑張れない馬は、とりあえず5月まで人参を楽しみに、よたよた歩く。
山本陽子さんのご冥福をお祈りします。
友達はとてもショックで悲しいだろう。
今はかける言葉が見つからない。
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