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ナギとアキ、1DK

”もしもし”

”あぁナギ、久しぶり”

”久しぶりだな、どうした”

”実はな、今度そっちに戻ることになったんだ
それで丁度いいから親元を離れようと思ってな”

”それで?”

”ただいきなり一人暮らしは何かと大変だし、不安も色々あるからな
そこでだ”

”……”

”ルームシェアしようぜ”

こうして
かつて親友だった
そして今度は
同居人となる親友との
他愛も無い生活が始まる


牛鬼 渚
堅物で口数が少ない人、でも口下手なだけ。
OL"n"年目。仕事は出来るけど性格が性格なのでちょっととっつきづらい。
家賃が浮くので二人暮らしを受けることにした。
週末のお酒タイムが楽しみ、その時だけは少し優しさが表に出る。

太宰 昭
牛鬼さんの小中時代の友人、親友と慕ってる。
高校の終わり頃遠方に越して、この度戻って来たので二人暮らししようと提案。今はフリーランスでなんか色々やってる。
牛鬼さんの週末のお酒タイムにお酌をするのが楽しみ、でも下戸。


・Reunion with my Old Friend

昭「おー!広いな屋上!」
渚「屋上付きの物件なんてあるんだな」
昭「これで10万ちょっとは優良過ぎないか?」
渚「まぁその分駅から距離あるからな」
昭「まぁそれぐらいなら快く受け入れてやるさ」
渚「で、荷物も大体整理終わったが」
昭「どうしようか?」
渚「今日は疲れた…明日は休みだしもう飯にしよう」
昭「どうせならここで食うか?」
渚「んー…いや、部屋で食って酒をここで飲む」
昭「よし、じゃあ飯買ってくるか」
渚「行くか」

ナニベントウニスル? カレーニシヨウカナ…

昭「ごっそさん」
渚「ちょっと食いすぎた…」
昭「ナギは昔から食細いからなぁ」
渚「はぁ…」
昭「んで、酒飲むのか?」
渚「飲むか…よっと」
昭「行くかー」
カンッカンッカンッ
昭「よっと、椅子と机も用意しといて正解だったな」
渚「そうだな」ガサゴソ
昭「おっとお姉さん、お注ぎしましょうか」
渚「いやいいよ…」
昭「まぁまぁ」カシュッ
渚「んん…」
昭「じゃあ私も…」
渚「ん」
昭「お、悪いね…じゃあ、乾杯」
渚「乾杯」
カン
渚「…はぁぁ」
昭「お疲れ様」
渚「お前もな」
昭「いやーしかし本当に二人暮らしが始まるとはな」
渚「何だよお前が言い出したんだろ」
昭「まぁそうなんだけどさ、ナギは何だかんだ私に付き合ってくれるけど流石にプライベートまで踏み込むのはどうかなって思ってたんだ」
渚「…」
昭「でも…まぁ…不安があるのは本音だったし、ナギなら信用できるからダメ元でな」
渚「…お前も何だかんだ気が小さいよな」
昭「私も人の子だからな」
渚「そうか…まぁ私もタイミング的に丁度良かったし、家賃も浮くからな」
昭「部屋もそこそこ広いしな」
渚「…広いけどお前の荷物でかなり埋まるじゃねえか」
昭「…すまん」
渚「いいよ、こっちの荷物は少ないからな」
昭「んふふ」
渚「…はぁ」
昭「なぁ」
渚「ん?」
昭「一口くれないか?」
渚「…お前下戸だろ」
昭「一口なら大丈夫だろ」
渚「…ほら」
昭「ありがと…あー!ひと仕事の後の一杯って味だな」
渚「ははっ、ただのビールだろ」
昭「疲労は最高のスパイスってこった、ははっ」

昭「あー…回るぅ…」
渚「だから聞いたろ…」
昭「いや…前よりは大丈夫…」
渚「ほら水飲め」
昭「んん…」
渚「まぁ少し静かにしてろ」
昭「ん…」
渚「…」
昭「…」
渚「…これからよろしく」
昭「…あぁ、末永くな」


・家計の牛頭天王

昭「…」
渚「おい」
昭「…」
渚「おい、顔上げろ、おい」
昭「いえ、このままで大丈夫です…」
渚「おい、顔上げろって言ってんだよ昭ァ!」
昭「ハイィ!」
渚「何買ったか言え、あと合計金額言え」
昭「えー…オーバードライブとコーラスとペダルチューナーと弦で計…」
渚「…」
昭「計…27000円…ぐらい」
渚「…月の食費、4万~5万ぐらいなんだ」
昭「はい…」
渚「…はぁ、いいやこれ以上言っても仕方ない」
昭「ハイ…スイマセン…」
渚「…今月肉食えると思うなよ」
昭「そっ!?そ、レハ…」
渚「この際だからその偏食も少しどうにかしろ」
昭「食えないわけでは無いんだけどさぁ…野菜は食ってて何が楽しいのかよくわからん」
渚「うるせえ生の玉ねぎ食わせるぞ」
昭「ヒエッ」
渚「お前そのくせパクチー好きだよな」
昭「あーそんな時期あったな」
渚「偏食って時期で変わんのか…?」
昭「さぁ…」
渚「でも最近野菜も高いからなぁ…」
昭「まぁ何とか美味いレシピは考えてみるよ」
渚「…とにかくそういう事だ、多少余裕あるからもやし生活にはならんが今後は気をつけろ」
昭「はい、ご厚意感謝します…」
渚「…あとでエフェクター使わせろ」
昭「お、気になるか」
渚「というかその値段って新品買ったのか?」
昭「やっぱ機材系は新品じゃないとなー」
渚「…」
昭「ナンデモナイデス」
渚「はぁ…」
昭「…ナギあれだな」
渚「あ?」
昭「嫁さんみたいだな」
渚「…クソ亭主が」
昭「ヒドイ!」


・赤顔の牛

ガチャッ
昭「ん、おかえ…え!?」
渚「はぁ…ぅあー…」
昭「おいどうした!顔真っ赤だzうわ酒くさ!」
渚「あー…水…」
昭「水!待ってろ!」バタバタ
渚「はぁ…うるせぇ…」
昭「ほら!飲めるか?」
渚「うるせぇ…飲めるよ…」
昭「どうしたんだ、今日会社の飲み会って言ってたけど」
渚「とりあえず…横にならせてくれ…」
昭「あぁ…ほら、肩」
渚「うぅ…」

昭「よっと、ほらジャケットも脱げ」
渚「…」
昭「下も」
渚「…」
昭「大丈夫か?」
渚「…こんな飲んだのは…多分初めて…」
昭「ナギがそんなになるってどんだけ飲んだんだ…」
渚「…同僚がな」
昭「ん?」
渚「同僚の女が…上司に酒飲まされそうになってな」
昭「あー…まだそういう奴いるんだなぁ…」
渚「それで代わりに付き合ったら…なんかよくわからん内に…」
昭「碌でもないな」
渚「いや…私だけじゃなくて…見てた飲めるやつが次から次へと飲みだして…」
昭「は?」
渚「…ほぼ潰れかけてた」
昭「何を…してるんだ…」
渚「知らねえよ…」
昭「んー…そいつらも案外助け舟出そうとしてたんじゃないか?」
渚「んなバカな…」
ブー ブー
昭「何か連絡来たみたいだぞ」
渚「ちょっと…見てくれ」
昭「んじゃあ失礼して…」
渚「あー…ぐるぐる…」
昭「…ふふ」
渚「あ…?」
昭「いや、これは明日自分で見な」
渚「…」
昭「…ナギ?」
渚「…zzz」
昭「しょうがないな…」
昭「いい夢見ろよ」

渚「…んん」
渚「グッ!?頭が…!?」
昭「よく眠れ…たのか?」
渚「少なくとも寝起きは最悪だ…ぐぁ…」
昭「まぁゆっくり寝てろ」
渚「…悪かった」
昭「ん?」
渚「面倒かけた」
昭「お互い様だ」
渚「…寝る」
昭「おやすみ」
昭「…ふぁ、さすがに徹夜は眠い…」
昭「少し寝るか…」

”お疲れさまです。今日は助けてもらってありがとうございました。
私、昔から断りきれない所があって…しかもお酒も飲めないので牛鬼さんが来なかったらどうしようかと思いました。
後で聞いた所、飲みだした皆も牛鬼さんを見て手を貸そうと思っての行動だったようです。(もちろんお酒好きな方だけだったようですが)
あと皆、牛鬼さんの事見直したって言ってました。実のところ私も牛鬼さんがちょっと恐いなって思ってたんですけど、今回の事で一気に印象変わりました。本当にごめんなさい。
良ければ、これからもどうかよろしくお願いします。”


・夢・現

渚「…」ゴクゴク
昭「うーん、今週の映画はいいかなぁ…」
渚「…」
昭「なんかDVD見るか?」
渚「なんでもいいぞ」
昭「そうだなぁ…これにすっかな」
渚「…お前アニメ映画とか見るのか」
昭「アニメ映画と侮るなかれ、この監督のはいい感じに狂ってるぞ」
渚「悪酔いするのは勘弁な」
昭「…多分大丈夫」
渚「…まぁいいけど」
昭「じゃあセット~」

渚「…ん?」
昭「この始まりで一気に引き込まれるんだよなぁ」

渚「あぁ、これは夢か…」
昭「夢だなぁ」

昭「オセアニアじゃあ常識なんだよ!」
渚「!?」

渚「うーん…」
昭「作画やばいなぁ」

昭「あー終わった~」
渚「ん…んん…」
昭「これが90分ぐらいってすごいよなぁ」
渚「なん…わかるんだけど脳が追いつかない…」
昭「わかる、明晰夢というかそんな感じ、おかしいけど理解が出来てる感じ?」
渚「うーん…夢に見そうだな…」
昭「そういうの影響受けるタイプか?」
渚「…わからん、けどいい夢を見た覚えは無い」
昭「えぇ…」
渚「…夢で飛び起きたことも正直ある」
昭「えぇ…安眠してくれ…」
渚「お前はもっと寝ろ」
昭「だって目覚めるし…眠くないんだよ」
渚「…早死するぞ」
昭「ナギも人の事言えないだろ」
渚「私は…」
昭「…」
渚「…」
昭「…もしこの生活がずっと続くなら、互いに長生きしような」
渚「…」

昭「…」ムクッ
昭(…いつも通りというか、目が覚めてしまった)5:42
昭(ん?)
渚「んんんん…」
昭「…ナギ?」
渚「グッ…ア…」
昭「おいナギ…」ギュッ
渚「ん…んん…」
昭「?」
渚「…zzz」
昭(あ、寝た)
昭(…夢ぐらいは幸せでいてくれ)
渚「…ん?」
昭「あ」
渚「…お前何手握ってんだ」
昭「…」
渚「…」
昭「…こっちは心配したんだぞ!」
渚「は?」
昭「寝る!」
渚「…何だあいつ」
昭(…目が冴えて寝れない!!)


・有給取得の昼下がり

渚「…」ポケー
渚(有給取ったはいいが暇だな…掃除も洗濯も終わったし…)
昭「…」カタカタ
渚「…」
昭「…んーんー」
渚「…」
昭「…別に喋って大丈夫だぞ?」
渚「いや…仕事してるし…」
昭「まあ時給換算じゃないし、物さえ出来りゃいいもんだから大丈夫」
渚「ん…」
昭「ちょうどいいや、少しきゅうぅぅぅ…あ゛ーけいしようと思ってたから」
渚「なんか淹れるか?」
昭「…せっかくだから散歩行こうぜ」
渚「んー」

昭「まだ寒いなぁ」
渚「サム…」
昭「お」
渚「なん…あ」
昭「ねーこねこー」
ニャーン
昭「おいでおいで」チョイチョイ

渚「野良だしあんなもんだろ」
昭「うーん…猫じゃらしがあれば…」
トコトコ
渚「おう…」
スリスリ
昭「あ、ずる」
渚「んな事言われても…」
昭「ナギって好かれるタイプなのか?」
渚「知らん」ナデナデ
昭「でもナギって動物とか子供とかに意外と好かれそうだよな」
渚「んな事無いだろ」
昭「いや~あるかもよ~?」スッ
渚「どうした急に」
昭「目線を合わせれば近づいてくれるかなぁって、ニャーン!」
ダッ
昭「ナンデ!?」
渚「お前そんな壁這う蜘蛛みたいな体勢するからだろ」
昭「(´・ω・`)」
渚「その体勢でその顔やめろ」
昭「あはは、んじゃあ帰るかー」
渚「んー」

昭「…ほふ」
渚「お前猫好きなのか?」
昭「そうだなぁ…結構好きかもな、あのどうにも人の思惑通りにならない感じが」
渚「ふーん、よく言うよな猫好き」
昭「人生何もわかんねえから面白いのさ」
渚「よくわからんね」
昭「ナギは?」
渚「…犬」
昭「というかナギって動物好きなのか?」
渚「特別好きでもない」
昭「ふーん、犬かぁ」
渚「いや別に強いて言えばだけど」
昭「…そういえばさ、高校の時のt
渚「そこまでだ」
昭「…犬っぽかったような気がしただけ」
渚「…」
昭「犬もいいよな、流石人類のパートナーだよ」
渚「お前も犬っぽいけどな」
昭「えぇ?」
渚「…首輪付けてないとすぐどっか行きそうなとこ」
昭「ならちゃんと首輪付けておいてくれよな」
渚「付けても脱走するだろ」
昭「するなぁ」
渚「…」
昭「…」
渚「くっ」
昭「はっはっは」
渚「晩飯どうすっか」
昭「どうすっかね」
渚「…お前仕事は?」
昭「んー今日はもうちょっとやっときたいかな」
渚「じゃあ今日は私が作る」
昭「お、ナギの飯久々だな」
渚「期待はするな」
昭「ナギのシンプルで優しい味好きだぞ」
渚「お前のたまに濃いぞ」
昭「シェフの気まぐれメニューだからな」
渚(でも全部美味いのがムカつく)
渚(そしてやっぱりこいつは猫かもしれない)


・何をしても一人

昭(…)
昭(平日、作業も無い、天気は晴れ)
昭(…)
昭「暇だな」
昭「…」
昭(暇を持て余しても一人…)
昭(…ヨガでもするか)
昭「ほっ」
昭「んー」
昭「…」
昭「ヨガファイア」
昭(…)
昭(出ないなぁ)
昭(…ギターでも弾くか)
昭「よっと」
昭「~♪」
昭「…」
昭(これと言って弾きたいものも無いな)
昭「あ」
昭(昼飯どうすっかなぁ…)
昭(あの気になってた店行こうかな)
昭「なら準備すっかぁ」

昭「えーっと、この鯖丼で」
「はーい、鯖丼ひとつー!」
昭(…)
昭(鯖丼?、サバ定食とかじゃなくて?)
昭(いい…惹かれる…)
「はい鯖丼おまちどうー」
昭「どうもー」
昭(おお、焼き鯖が乗ってる、大きい)
昭「いただきます」
昭(んん~、大きいから食べごたえあるなぁ)
昭(このジューシー感、大満足)
昭(そしてお新香でサウナ後の水風呂のようなすっきり感)
昭「ごちそうさまでした」
昭(なかなかどうして)
「ありがとうございましたー」
(鯖丼…初めて出したなぁ…)

昭(あ、あと夕食の買い物も行かないと)
昭(さてどうしたものか)
昭(…)
昭(焼き魚の丼にしようかな)
昭(でっかいブリでも乗せてやろうか)
昭(それとも普通に天丼にしようか)
昭(ナギはそういう方が好きだろうし)
昭(しかしナギはもう少し柔らかく考えてもいいんじゃないかなぁとはたまに思うが)
昭(まぁそれがナギらしさだからな)

昭「…」
昭(帰ってきてからも暇だった)
昭(…一人ってやだなぁ)
昭(二人暮らし始めてから特にそう感じるようになった)
昭(まぁ…ナギはOLだから仕方ないけど…)
昭(いっそ私も会社勤めすれば…)
昭(…)
昭(…無理、だなぁ)
昭(いや無理とかどうとか言う問題では無いけど…)
昭(…生きるって)
昭「難しいなぁ」
昭(…)
昭(…母さんならどう生きたかなぁ)

ガチャッ
渚「ただいま…?」
昭「…」スー…スー…
渚「…」
渚「おい、起きろ」
昭「…ん?」
渚「帰った」
昭「あぁ…お帰り」
渚「首おかしくするぞ」
昭「んん…こった…」
渚「というか飯どうした」
昭「…あっ」
渚「え」
昭「…悪い今から作る」
渚「いや…いいよ疲れてんだろ」
昭「いや大丈夫、十分寝たからな、面白いもん作るからな」
渚「まともな物作ってくれ」
昭「しょうがないな~」
渚(あいつが昼寝するなんて珍しいな)
渚(しかも…泣いてた?)
渚(…聞かないほうがいいか)

昭「おら出来たぞー」
渚「なんだこれ…」
昭「鰤照丼」
渚「鰤」
昭「世には鯖丼なるものがあるみたいだし、鰤もいけるかなーって」
渚「…」モグモグ
渚(…美味いなぁ)
昭「まぁ鰤の照焼乗せただけだからまずいわけないと思うけどな」
渚「頭は悪いがな」
昭「緩くいこうぜ」
渚「…そうだな」
昭「ふふっ」
昭(やっぱり、心地いいなぁ)
昭(ずっとこうであってほしいなぁ…)
昭(…宝くじでも当てるか)
渚(また変なこと考えてるな…)


昭(…やばい、寝れない)


・限界ギリギリデッドヒート

昭「…」カタカタ
渚「…」モグモグ
昭「…違うな」
渚「…」ズズッ
昭「…チッ」タンッ
渚「…ごちそうさま」
昭「…」
渚「洗ったら先寝るから」
昭「…」カタカタ
渚「…」

翌日
渚「ただいま…疲れた」
昭「…」カタカタ
渚「…おい」
昭「…ん?あぁお帰り」
渚「飯、買ってきたぞ」
昭「あぁ…悪い…あれ?何で買ってきてるんだ」
渚「お前忙しそうだから買ってくるって連絡入れただろ」
昭「んぁ?…あぁ本当だ」
渚「飯だけでも先食え」
昭「ん…」

モグモグ

昭「はぁ、腹いっぱい…」
渚「片付けとく」
昭「あぁやるよ」
渚「いいよ、続きやるんだろ」
昭「…悪い」
渚「…」

また翌日
昭「はぁぁぁぁぁぁぁ…」
渚「…お前寝てないだろ?」
昭「…2徹」
渚「寝ろ!」
昭「期限がだいぶギリギリなのに思いつかない…」
渚「あぁ…」
昭「んああああああ!!!!」
渚「ぅお」
昭「 」
渚「…おい」
昭「どうしよう…」
渚「…とりあえず風呂入れ」
昭「…」
渚「無理矢理にでも連れてくぞ」
昭「わかったわかったから…よっと」
渚「シャワーだけじゃなくて湯船にも入れよ」
昭「んー」

昭「っあ゛あ゛あ゛…」
昭「…」
昭「…」
昭「…あっ」
昭「…」
昭「…zzz」
渚「(寝るなよー)」
昭「…はっ」
渚「(だろうと思ったよ…)」
昭「2徹した後の風呂はやばい…」
渚「(まぁゆっくりしろ)」
昭「んん…」
昭「…」
昭「…」
昭「おああああああああああああああ!!!!!!!!」ザバァ
渚「どうした!?」ガラッ
昭「キタァ!!!!!!!!!」ダッ
渚「服着ろお!!!!!!」

週末
渚「疲れた…」
昭「おーお帰り、飯と酒の準備出来てるぞ」
渚「んー、お前あれどうした」
昭「無事完璧狂いなし!」
渚「そりゃ何より」
昭「悪かったな、迷惑かけた」
渚「お前もああいう風になるんだな」
昭「今回はキツかった…」
渚「風呂すら入らないのはどうかと思うぞ」
昭「いやシャワーは浴びてたし…」
渚「あとお前は短時間で済むんだから寝ろ」
昭「それは…はい…」
渚「ほら飯食うぞ」
昭「あそうだ、今日のビールはこちら」
渚「お前これ…高いやつだろ、しかも500」
昭「私からの奢りだ」
渚「…そうか」
昭(ちょっと嬉しそう)
渚「じゃあ食おうぜ」
昭「私もノンアルのビール買ってきたから乾杯するか」

昭「んじゃあ」
昭,渚「「かんぱーい」」


・悩み種

渚「んん…ぐっ」ベキッ
昭「何かすごい音したけど」
渚「スーツ着てデスクワークしてりゃこうなる」ボギベギ
昭「そうは言ってもそれは鳴っていい音なのか…?」
渚「…知らん」
昭「ナギって体硬いんだっけ?」
渚「んー…だいぶ」
昭「ストレッチぐらいはした方がいいんじゃないか」
渚「そんな気力ねぇよ…」
昭「手伝ってやるから、ほら」
渚「んんん…」

昭「はいじゃあ腕を前回しー」グルッ
渚「んっ」グルッ
昭「もっかーい」グルン
渚「ふっ」グルン
昭「次は後ろ回しー」グルッ
渚「んー」グルッ
昭「はいもっかーい」グルン
渚「んぎっ」グルン
昭「次は体側伸ばし、右からー」グッ
渚「ふっ」グッ
昭「左ー」グイッ
渚「んー」グイッ
昭「足を肩幅に開いて前屈ー」グッ
渚「いつつ…」グッ
昭「そのまま後ろに反らすー」ググッ
渚「フグッ…フッ…」ググッ
昭「硬いなぁ…」
渚「悪かったな」
昭「まぁちょっとずつな、次は腿上げー」スッ
渚「ほっ」スッ
昭「1、2、1、2」スッ
渚「ふっふっ」スッ
昭「そんで四股」
渚「四股?」
昭「股関節のストレッチには結構いいぞ」グイッ
渚「ふーん」グイッ
昭「ぅおー」グイッ
渚「んぐぐ」グイッ
昭「最後に座って」
渚「ん?」
昭「で、足開いたら押すから」
渚「それ全然出来ないんだが…」
昭「これもちょっとずつだな、ほら」グッ
渚「いででで!」
昭「3秒!3!2!1!はいOK!」
渚「はぁ…はぁ…」
昭「大丈夫か?」
渚「あぁ…今度はそっちもやってやる」
昭「お?優しく頼むな」
渚「はいはい」グッ
昭「うおー」グニー
渚「うわ」
昭「酷くない?」
渚「いや…ビビった…」
昭「そっかー」
渚「…正直仕返しもあったから…悪い」
昭「そういうとこナギだよなー」
渚「言わなきゃ良かった…」
昭「そういうとこ、じゃあ最後に深呼吸ー」スー
渚「すー」
昭「はぁ〜」
渚「ふー」

昭「はい、昭さんのストレッチコースどうでした?」
渚「…ちょっと楽になった」
昭「それは何より」
渚「というかお前結構柔らかいな」
昭「そうか?ほっ」Y字
渚「それ出来んのか…」
昭「出来るもんだな」
渚「ふーん…」
昭「なんだ、ナギも出来るようになりたいのか?」
渚「いや別に…」
昭「まぁせっかくだしそれを目標にしよう、何もなくやるよりは続けやすいんじゃないか?」
渚「お前が管理してくれ」
昭「ものぐさだなぁ」
渚「頼んだ」
昭「しょうがないなぁ」
渚「…お前そう言っていつも乗り気だよな」
昭「そうか?」
渚「…そういうとこ昭らしいよな、昔っから」
昭「それどういう事だ?」
渚「…昔っから面白そうな事には喜んで首を突っ込むくせにそんな風には見せないとこ」
昭「そうか?あぁでもナギにはしょうがないなぁってよく言う気がするな」
渚「なんだそれ」
昭「照れ隠しだよ」
渚「自分で言うな」
昭「ふふふ」
渚「はぁ」
昭「というわけで、頑張ろうか」
渚「…はぁ」


・ようこそスピークイージー

渚「…」
昭「いらっしゃいませ」
渚「おい」
昭「ご注文どうぞ」
渚「また金使い込んだだろ」
昭「ツールと割材で…1万ぐらい?」
渚「おい」
昭「いやだってこれはナギも楽しめるしそもそもナギだって最近1本ボトル増やしただろ」
渚「うぐっ…」
昭「なんだぁ?今度はスコッチに手出したのかこの〜2本ぐらい残ってるのに〜」
渚「くそっ、どうせ酒飲まないからと油断した…」
昭「キッチンは私の領域だ勝てはせん」
渚「こいつ…というかその服どっから持ってきた?」
昭「これ?ナギの」
渚「あぁ着てなかったベストか…」
昭「なかなか似合うだろ?」
渚「スリッパが滑稽だな」
昭「なんだよもー」
渚「汚すなよそれ」
昭「はいはい、そんじゃあ何にします?」
渚「ロック、ダブル」
昭「カクテル作らせてくれよ!」
渚「そう言われてもなぁ…」
昭「じゃあおまかせでいいか?」
渚「好きにしてくれ」
昭「あいよ、おまかせ一丁」
渚「寿司屋じゃねえんだ…」

カラコロン
トットットッ
シュワァ

昭「お待たせしました、ジョン・コリンズです」
渚「ウイスキーベースか」
昭「ウイスキーしか無いしな」
渚「あっ」
昭「ん?」
渚「いや…」
昭「?」
ゴクッ
渚「…少し甘すぎ」
昭「砂糖入れすぎたかな」
渚「でも飲めなくはない、ちょっとウイスキー入れてくれ」
昭「はいよ」
渚「…ん、ちょうど良くなった」
昭「それは何より」
渚「…ふぅ」
昭「早いなぁ、大丈夫か?」
渚「これぐらいじゃ潰れん」
昭「じゃあ次は…」

カラコロン
シャカシャカシャカ
スッ

昭「お次はカウボーイになります」
渚「牛乳と混ぜんのか…」
ゴクッ
昭「どう?」
渚「口当たりは良いな」
昭「へぇー、飲んでみたいなぁ…」
渚「こんなの飲んだら死ぬぞ」
昭「そうなんだよなぁ」
渚「…」
昭「こういう時下戸って困るよなぁ、味見すら出来ないし」
渚「博打だな」
昭「レシピ通りに作るとは限らんぞぉ?」
渚「作れ」
昭「ふふーん、さてお次は〜…というかカクテルって見た感じ甘いのばっかりだからなかなか悩むんだよな」
渚「…別にいいよ、少しぐらい甘くても出された物は飲む」
昭「…ありがと」

カランカラン
カシャカシャ
スッ

昭「オールドパル」
渚「オールドパル?」
昭「古い仲間とか旧友とか、そんな感じ」
渚「ふーん」
グッ
昭「どう?」
渚「…なんか変わった味だな」
昭「変わった味」
渚「でも嫌いじゃない」
昭「ナギそればっかりだな」
渚「出されたもんは文句言わずに飲むもんだ」
昭「そういうもんか」
渚「そういうもんだ」
昭「そうか」
渚「…それでだな」ガタッ
昭「ん?」
ガサゴソ
昭「うわそんなとこに…しかもこれ…ジン?ウイスキーじゃないじゃん…」
渚「その…これで作って欲しいのがあるんだ」
昭「何でしょう、隠してた事はとりあえずチェイサーに流して」
渚「これとバーボン1:1で割ってくれ」
昭「…正気?」
渚「フランシスアルバートっていう古いジャズシンガーが名前の元らしい」
昭「いやまぁ作るけどさぁ…顔近づけただけで酔いそう…」

カラカラン

昭「はい、えーっとフランシスアルバート」
渚「ありがと」
グッ
渚「…っあ"あ"あ"」
昭「どう考えてもキツいだろそれ」
渚「きっつい、けどいい」
昭「…水置いとくな」
渚「ん」
昭「もう3杯飲んでるんだから無理するなよ?」
渚「ん…」
昭「大丈夫かな…」


渚「はぁぁぁ…」
昭「顔赤いぞ」
渚「…昭」
昭「ん?」
渚「お前…何で私なんかと一緒にいるんだ」
昭「え?」
渚「昔っからそうだろ、暇さえあれば私に絡んできて…」
昭「それは…前言っただろ、ナギといると楽なんだよ」
渚「…」
昭「無理せず、自分でいられるのがナギの横なんだ。今の生活もかなり気に入っている」
渚「…私も」
昭「?」
渚「私も…お前なら特に考えずに物を言える、誰かに何かを言うときの枷がお前なら薄まる」
昭「それは…喜んでいいのか?」
渚「褒めてやってんだよ…」
昭「光栄だな」
渚「だから…何かあったら言え、何でもいい、引っかかってる事があったら言ってくれ、私は昭のことを…」
昭「…」
渚「…」
昭「…ナギ?」
渚「…zzz」
昭(寝てるーーーーーーー)
昭(嘘だろそこで寝るのか…私の事を何なんだ…!?)
昭(でも…そんな風に思ってたのか…)
昭(本当ナギは素直じゃないよな、昔から)
昭「…ありがとな」

昭(…さて、ベッドまで運ぶか)


・近所のおもしろおねーさん

昭「桜も咲いてきたなぁ」
渚「もうそんな季節か…」
昭「またあっという間に1年経ったなぁ」
渚「また飲み会増えるなぁ…」
昭「ナギ的には嬉しいんじゃないか」
渚「別にそんなに」
昭「飲めるからいいんじゃないのか?」
渚「うるさいのは苦手だよ」
昭「じゃあ私と飲む方が好き?」
渚「…別に」
昭「釣れねえなぁ」
「あ、アッキーじゃん」
昭「おうちびっ子共」
「遊ぼーぜー」
昭「んー?ちょっとだけだぞー?」
「よっしゃー!早く早くー!」
昭「というわけで少し待っててくれ」
渚「さっさと打ち負かしてこい」
昭「おらあ!いくぞちびっ子共ー!」
「わー!」
渚(…さらっと流したけどいつの間に子供と仲良くなってんだ)
渚(子供と走り回ってんの似合うなあいつ…)

「だるまさんが…ころんだ!」
昭「…」仁王ポーズ
「…だるまさんが…ころんだ!」
昭「…」考える人ポーズ
「…ブフッ」
「動いた!」
「ちょっアッキーそれはずるいだろ!」
「てかどうなってんのそれ」
昭「これには10年の修行が…」
「うそつけ!」

渚(相変わらず変なことやってんな)
「…」
渚「…ん?」
「おねーちゃんさぁ」
渚「なんだ?」
「アッキーと付き合ってるの?」
渚「…?」
「?」
渚「誰が?」
「おねーちゃんが」
渚「誰と?」
「アッキーと」
渚「…あれか?レズビアン的な?」
「え?違うよ?」
渚「…あぁ」
「どーなのー」
渚「…まずお前はひとつ勘違いをしてる」
「え?」
渚「あいつは女だ」
「…え?」
渚「あんな見た目だけどな」
「…え」
渚「だから答えはノーだ、悪いな」
「そー…なの…」
渚「…すまん、夢を壊したな」
「…ううん、大丈夫」
渚「そうか」
「じゃあ一緒に遊んでくる、ありがとおねーちゃん」
渚「ん」

昭「じゃーな、気をつけて帰れよー」
「「じゃーねー!」」
昭「いやぁ遊んだ遊んだ」
渚「結局フルに遊んだな」
昭「いやぁ悪い悪い」
渚「さっさと帰るぞ」
昭「あぁ」
渚「…お前」
昭「どした」
渚「…お前って男に勘違いされたことあるのか?」
昭「ん?あー格好がそっち寄りだとたまにあるな」
渚「それでか…」
昭「?」
渚「…次遊ぶ時スカートで行ってみろ、あぁでも下にショーパンは履け」
昭「なんで」
渚「面白い反応見れるかもな」
昭「んー?」

数日後

昭「おらーちびっ子共ー」
「お、アッキーぃ゛!?」
昭「どした」
「…」

「…アッキー女だったのか!?」


・憧れの憧れ

渚「なぁ」
昭「んー」
渚「今度の休み、人呼んでもいいか?」
昭「別にいいけど…珍しいな」
渚「この前、高校の同級生に会って…それでこの辺に住んでるって言ったら行きたいって…」
昭「同級生?…あーもしかしてあの3人か?」
渚「その3人、というか双子の妹」
昭「…あぁ」
渚「じゃあ昼過ぎぐらいに…
昭「なぁ」
渚「ん?」
昭「少しだけ…その子と話す時間くれないか」
渚「いいけど…別に話すこと無いだろ」
昭「私にはある」
渚「…わかった、買い物でも行っとく」
昭「悪い」

透「お邪魔しまー」
昭「いらっしゃーい」
透「あ、お久しぶり」
昭「君も変わらないね」
透「そっちも元気そうで」
渚「じゃあちょっと飲み物でも買ってくる」
透「え?うんわかった」
渚「昭が話があるんだとよ」
透「話?」
昭「そういうのは言わないもんだぞナギ」
渚「どうせそういう流れになるんだから変わらんだろ」
透「相変わらずだなぁ…」
渚「…行ってくる」
昭「気を付けてな」
透「いってら」

昭「まぁそこ座ってくれ」
透「はい」
昭「…」
透「…」ソワソワ
昭「…人見知りするタイプ?」
透「え"っ、いや、まぁ、そんな感じ」
昭「あれでしょ、意外だねって言われるタイプでしょ」
透「たまに」
昭「まぁそんな緊張しなくていいよ…って言っても難しいよね」
透「善処します…」(本当はイケメンで緊張してるのもあるけど)
昭「んふふ」
透「それで話って?」
昭「…少し昔話でもね、しようかなって」
透「昔話?」
昭「私とナギの事ってどれぐらい聞いてる?」
透「うーん、幼馴染みって事ぐらい」
昭「まぁそうだね、同じ小中で…というかナギほとんど説明してないな…」
透「昔のきーちゃんってどんな感じだったの?」
昭「うーん…割と今に近いかな、物静かで真面目でちょっと言い方に棘はあるけど口下手なだけな所とか」
透「あー少しわかる…」
昭「でも…昔の方が笑う奴だった気がする」
透「そうなの?」
昭「単に今は照れ隠ししてるだけだと思うけどね、昔も今も可愛い所があったね」
透「ふーん」
昭「ちなみに私ってどんな印象?」
透「え?うーん…漫画とかに出てくるような怪盗みたいな…いや、悪人ってわけじゃなくてね!?」
昭「ほーいいな!怪盗!トランプ銃とか腕時計ワイヤーフックとか作ってみようかな…」
透(えぇ)
昭「…うん、そんな私とナギが友達になるって変だと思わないか?」
透「え?いやそうでもないかな」
昭「え」
透「アタシも外国人の友達とかお嬢様の友達いるし…」
昭「あぁ、私もいたなぁ…そのまぁ私も昔はちょっと今と違くてな」
透「そうなの?」
昭「怪盗ってのは多分掴みどころがないとか変わったところがあるとかそういう感じなんだろうとは思うけど、昔はいわゆるクラスのリーダー的存在だったよ」
透「ほーん、確かにちょっと意外」
昭「でもそれはなりたくてなったわけじゃなかったから息苦しかったよ、好きな事したかったけど求められたのはそうじゃなかった」
透「…」
昭「そんな中ナギは私に興味を示さなくて、それで思ったよ
『そんな奴と話すようにすれば皆そんな事求めてこなくなるかな』って。
だから最初はそんな打算からナギと話すようになったよ、その時はまだ”牛鬼ちゃん”なんて呼んでたかな」
透「牛鬼ちゃんだったんだ」
昭「うん、それでナギに絡むようになって感じたんだ。すごく気持ちが楽だなって。ナギは私が何をしてもナギが感じたそのままを表現してくれる、笑ってくれるし、呆れてくれる、そして離れることも無かった」
透「あーきーちゃんらしいなぁ」
昭「そんな感じで小3ぐらいから中3までずっとつるんでたよ、でも中学後半辺りからナギがピリつくようになってな、受験だ何だって。それで間近になって限界来たんだろうな、ナギに殴られてね」
透「え…」
昭「殴られた事自体は痛くもなんとも無かった…いや物理的には痛かったけど、それより私はナギに何も出来なかったことが心が痛くて堪らなかった。そしてここからが君と話したかったことだ」
透「うん…」
昭「まずナギを救ってくれてありがとう。あの時再開したナギはすごくいい顔をしていた、君という存在がいたからだろうね。
そして私は君が心底妬ましい、ナギを救うのはなぜ私じゃなかったんだと何度思ったかわからない。悔しさで泣きそうになる事もあった」
透「…ごめん」
昭「…そういう所なんだろうな、ナギが惚れたのは」
透「…そこまで聞いてたんだ」
昭「うん、そして話してみてわかったよ、君は人を救える器だって。君にならナギを救えるって」
透「そんなんじゃないよ、少しだけ空手が出来るだけ」
昭「それでも、だ。だから改めてナギの親友として言いたい。
ナギを救ってくれて本当にありがとう」
透「アタシもそう言ってくれて嬉しい、ありがと」
昭「君は私の憧れの憧れなんだ」
透「きーちゃんに憧れてるの?」
昭「内緒だぞ?」
透「りょーかい、そういえばさ」
昭「ん?」
透「アッキーって呼んでいい?」
昭「もちろん…あ、そうだ」
透「ん?」
昭「…ナギって呼んでもいいよ」
透「え?」
昭「あいや…あの時ナギって呼んでいいのは私だけとか言っちゃったから…」
透「…別にいいよ」
昭「え…」
透「それは二人を繋ぐものだろうから」
昭「繋ぐもの…」
透「親友の証」
昭「…そうだね、ありがと透」
透「…初めて呼んでくれたね、名前」
昭「そうだっけ?」
透「多分」
昭「そっか」
透「じゃあこれからもきーちゃんの事よろしくね、アッキー」
昭「透もな」

渚「ただいま」
昭「おかえり、ちょうど良かった」
透「お菓子買ってきてくれたー?」
渚「ほらよ」
透「お、マリトッツォじゃん!一回食べてみたかったんだよね」
渚「頭悪いだろそれ」
透「たまには頭悪いのも悪くないよ」
渚「お前も頭悪いからか」
透「はぁ~~~~~~~~~?」
昭(仲良いなぁ)


透「じゃあそろそろ帰るね」
渚「駅まで送る」
透「別に大丈夫だよ」
昭「心配なんだよ、送ってもらいな」
透「あーは~ん」
渚「昭てめえ」
昭「ほら早く行った行った」
透「じゃあまた来るねアッキー」
昭「またな、透」

渚「なぁ」
透「ん?」
渚「昭と何話したんだ」
透「んー私達の話」
渚「はぁ?」
透「アッキー、大事にしろよ?」
渚「それは…わかってる」
透「ん」

昭「…」
ズズッ
昭(コーヒー…今日のは苦いな)
昭(でも、いい味だ)
昭(帰ってきたら、ナギにココア淹れてやるか)


・検証、検証、検証

昭「…」
渚「…お前本気でやるのか」
昭「知りたくなったら止まらないのよ」
渚「後始末誰がやると思ってるんだ」
昭「…頼んだ」
渚「おい」
昭「いざぁ」

ピチョッ ピチョッ

昭「経験上ビールの三分の一ぐらいでふらふらだから数滴でもいい感じに酔えそうなんだよな」
渚(スポイトどっから…)
昭「…ん、こんなもんかな。じゃあ乾杯」
渚「…乾杯」
ズッ
昭「まぁ、飲んだ気しないよね」
渚「当たり前だろ」
昭「あとは30分ぐらい様子見て記録するか」
渚「…飯食っていいか」
昭「あぁ、いっぱい食ってくれ」

30分~

昭「…意外と大丈夫だな」
渚「少し耳赤いぞ」
昭「そう?」
渚「というかそもそも飲むスピードとか胃の状態とか酔い方が変動する要因なんていくらでもあるだろ」
昭「だから飯食う前にやってるのよ」
渚「うーん…」
昭「『飲料:ビール アルコール度数:5% 量:数滴 約30分後の状態:特に変化なし、耳が少し赤くなる程度』…っと、こんな感じ?」
渚「…いーんじゃねえの」
昭「350ml缶の三分の一…およそ120mlでふらるからまだこれからだな」
渚「…」

渚(何が面倒って、こいつ酔った時絡み方がちょっとうざいんだよな)
そんなこんなで数週間、週末の昭のアルコール耐性検証が続いた

昭「そもそも本当に三分の一ぐらいだったかの確認もしないとな」
渚「いやそれはいいだろ…」
昭「とりあえず120mlでいっか」
渚(…うち計量カップなんてあったっけ?)
30分~
昭「ナギ~♡愛してるって言え ヒック よお前よ~」
渚「調子に乗るな水飲め水」
昭「なぎがつみぇあいー」
渚「寝ろ」

昭「うーん今回は半分の60mlでいくか」
渚「…」
昭「ところで先週の事あんまり覚えてないんだけどこの記録本当?」
渚「私の書いたことが信じられないっていうのかお前」
昭「いや…信じるけど…」
渚「代わりに書いてやったのに…」ブツブツ
昭(なんかいつも以上に冷たい…)シュン
30分~
昭「おあー…」
渚「…」
昭「えー…っと…意識はある程度あるけど…だるい…暑い…」
渚「…」カキカキ
昭「あ”ー…」

そして

昭「色々あったけどなんとか答え出せたな」
渚「…」
昭「意識が保ててなおかつちょうど気分良く酔える量はおそらく…」
渚「…」
昭「5%のビール15mlあたりだな、やったー」
渚「…聞くタイミングを完全に逃してたんだが」
昭「ん?」
渚「なんでそんなに飲みたいんだ、酒」
昭「ん~?」
渚「正直そんなに弱いのにあんなに飲んで体に悪いだろ」
昭「なんだ心配してくれてたのか」
渚「急性アル中で倒れられたら困るんだよ、お前の親になんて言えばいいんだ」
昭「悪かった、でも理由はちゃんとあるんだよ」
渚「なんだよ」
昭「ナギと一緒に酔っ払ってさ、バカな話したかったんだよ」
渚「…」
昭「そりゃまぁ飲んでなくても私達は変わらないけどさ、飲めない私からしたらちょっとした憧れなんだよ」
渚「…はぁ」
昭「そんな感じ」
渚「…」
昭「アルコール量は15mlの5%だから…」
渚「5ml減らせ」
昭「え?」
渚「1ヶ月に一回」
昭「…」
渚「それなら…一緒に飲んでやる」
昭「…心配性だなぁ」
渚「後始末誰がやると思ってるんだ」
昭「顔赤いぞナギ、ふふっ」
渚「ケツにバーボン突っ込んでやろうか…」
昭「ヒエッ」

そういうわけで月イチのイベント?が出来た
”夏は屋上でマットを敷いて星を見ながら
冬は暖房を効かせてアイスを食べながら
バカな話をしたいな”
昭はそんな事を言っていた
そう言う昭の顔は本当に子供のようだった
酒を飲めることよりも少しだけ、羨ましかった


・同性の親友でも

昭「んー明日雨かぁ」
ガチャッ
渚「あっつ…」
昭「明日雨だってよ」
渚「んー」
バタン
昭「…ん!?ちょっナギ!!」
渚「なんだよ」
昭「いや…その…」
渚「だからなんだよ」
昭「…流石に下着1枚で歩き回るのは女としてちょっと」
渚「しょうがないだろ着るもん忘れたんだから」
昭「そうだけどっ…!そうだけどっ…!」
渚「というかお前も女なんだからいいだろ」
昭「同性条件耐久限界超えてないかなぁ…」
渚「なんだそれ…いいから着させてくれ」
昭「あ、あぁ…」
昭(えぇ〜…私が気にしすぎなの〜…?)

渚「…って言われたんだけど」
同僚「いやそれは牛鬼ちゃんが恥じらい無さすぎ」
渚「いやもう大分長い付き合いだし…間は空いてるが小学校からのだぞ?」
同「相手がというよりそもそも女として、というか二人暮らししてたの?」
渚「あぁ」
同「えーどんな人?」
渚「…イケメン?」
同「え?」
渚「頭良いくせにネジ飛んでるイカれ変人?」
同「え?」
渚「ただまぁ…親友と呼びたい良い奴だよ」
同「…」
渚「…ん“ん”」
同「…え?イケメン?」
渚「多分…」
同「牛鬼ちゃん…いつの間にそんなお相手と…」
渚「は?」
同「いいなぁ…異性の幼馴染とか漫画の世界じゃん…」
渚「女だぞ」
同「え?だってイケメンって…」
渚「男とは言ってない」
同「…なんだぁ」
渚「なんだよ」
同「いやぁ、牛鬼ちゃん意外とやるなぁって思ったのに」
渚「お前こそどうなんだ」
同「…」
渚「…」
同「…異性の幼馴染ってどこで買えるかな」
渚「…卒アルで我慢しろ」
同「ヴェッ」

渚(あ、また着替え忘れた…)
渚(…)
渚「おい昭!」
昭「あー?」
渚「着替え忘れたから持ってきてくれないか」
昭「はいはい」
渚「…」
昭「んー?あぁこれか」
渚「…」
昭「置いとくぞー」
渚「ん」
ガラッ スッ
ガチャッ
渚「悪かったな」
昭「いーえー」
渚「…そういえば」
昭「ん」
渚「この間の事を同僚に話したら概ねお前と同じような事言われた」
昭「あ?あぁ、まぁ、そうだろうよ…」
渚「…そんなにか?」
昭「んー…というか普通に羞恥心を持ってほしいというか…」
渚「お前に普通を説かれたくない」
昭「世捨て人みたいな言われようだな、というかナギ割と昔からそういうとこあるぞ」
渚「…鶏ガラだしな」
昭「スマートって言うんだ」
渚「嫌味か」
昭「心配と擁護だ」
渚「…言っておくけど風呂場から素っ裸で走り出した事は忘れてねえからな」
昭「…あれは徹夜テンションだったし」
渚「…」
昭「…」
渚「…どうすれば女って自覚を忘れずにいられるんだろうな」
昭「そらもう恋よ、恋する女は美しいってな」
渚「なら一生忘却の彼方だな」
昭「干物…」
渚「…明日干物にするか」
昭(いやというかこれはおかん…)


・時には昔の

荷物整理中…
昭「んー…ん?」
渚「何だよ」
昭「こ…これは…!」
渚「なん…う"っ」
昭「小学校の卒アル!あれ?持ってきてたんだっけか!?懐かしー!」
渚「今は整理中だ後にしろ…!」
昭「もう1時間ほどやってる、そろそろ集中力が切れてくる頃で生産性が悪くなる、休憩を所望する!」
渚「くそっ!こういう時に限ってまともな事言いやがって…!」
昭「きゅーうーけい!きゅーうーけい!」パンッ パンッ
渚「クソガキかお前は!」
ガッ
昭「おっと、手四つで力比べか?よーし昭さん負けないぞ〜!」
渚「いいからそれ置けなに器用に顎で挟んでんだ!」
昭「もーさっきから何怒ってんだよナギ〜?」
渚「分かってて言ってんならぶちのめすぞ…!」
昭「わかったわかったから見ないから」
渚「…はぁ」
昭(今は)
渚「さっさと片付けるぞ…」
昭「はーい」

〜1時間後〜

渚「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…7割お前の物だったな…」
昭「ほらココア」
渚「あぁ」
昭「ちゃんとストレートのにしたぞ」
渚「あぁ」
昭「ふぅ、さて」
渚「あ?」
昭「んふふ」ピラッ
渚「あ」
昭「いややっばナギかわい」
渚「…くそが」
昭「あー懐かしいなぁ…ほらこの子、覚えてるか?」
渚「…お前が突っ込んできたせいで乱闘になった時のか」
昭「そうそう、この子がいじめられてる時にナギが間に入った時の」
渚「そもそも私は喧嘩するするつもりなんかなかったんだぞ、それをお前が飛び蹴りであいつらに奇襲したせいで面倒になったんだぞ」
昭「一応助けに入ったつもりでした」
渚「チンピラかよ…」
昭「でもその後あいつら大人しくなったじゃん」
渚「その代わり私達は危険人物のレッテルを貼られたけどな」
昭「男子からだろ?女子からはむしろ感謝されたじゃん」
渚「いやそういう問題では…」
昭「まぁいい思い出だよ、今になっては」
渚「…まぁそうだな、助けに入ったのは間違いじゃなかったと思いたい」
昭「かっこよかったぞ」
渚「…そういえばお前昔はもっと髪短くて男子みたいだったよな」
昭「暴れ回るから短くさせられてた」
渚「えっ」
昭「嘘だよ、邪魔だったからショートにしてた。今は髪いじりも楽しいから少し伸ばしたけど」
渚「その色なんなの?」
昭「イカすだろ」
渚「さぁ…」
昭「ナギは今よりちょっと長かったな、そんで後ろで一本に結んでたな」
渚「よく覚えてんなお前…」
昭「楽しかったからなぁ、ナギといるのは」
渚「…」
昭「お、この先生も懐かしいな。喋る時変な癖あったよな」
渚「…なんだっけ」
昭「んーとかえーとか言って喋り始める癖」
渚「…あれ古畑任三郎に憧れてたとか噂なかったか?」
昭「あーあったあった!そうかそれか、えーここはこの公式を使ってですね」
渚「…ふふ」
昭「いやーそれにしてもさぁ」
渚「なんだよ」
昭「ナギかわいいなぁ〜」
渚「お前な…あ」
昭「あん?」
渚「いや…」
昭「ん〜?」
渚「…」
昭「いやぁ、いい女になったなぁ」
渚(そういえば…卒アルに載せる写真を撮る時に私が緊張して顔がこわばってて、見かねたあいつがカメラマンの後ろで変顔連発してたな…)
渚(結果的にいい顔が撮れたとカメラマンは言ってた気がするけど、結局卒アル見てないな…)
渚(…いや見たくねえなやっぱ)
昭「ほら〜やっぱりこのナギいい顔してるよ〜」
渚「急にこっちに見せんじゃねえバカ!!///」
昭「えぇ…手で隠すほどか…」


・そういう日もある

週末の晩酌中
昭「…ナギ〜?」
渚「…んー」
昭「眠いのか?」
渚「…少し」
昭「今週残業多かったもんな」
渚「疲れた…」
昭「お疲れ様、頭撫でてやろうか」
渚「…ん」
昭「えっ」
渚「何だよ」
昭「いや…いつもなら嫌がるのにって思って…」
渚「…別にいつもも嫌がってない」
昭「えっ」
渚「…いや違う今のは…いやいいや」
昭「なんか今日変じゃないか?」
渚「私だってそういう日はある」
昭「そうか…」
渚「…」
昭「…」
渚「…撫でないのかどっちなんだ」
昭「え?あぁ、じゃあ失礼」
ナデナデ
昭「お疲れ様」
渚「ん」
昭(今日随分と素直というか大人しいというか…)
渚「…」
昭「…ナギ?」
渚「…んあ」
昭「 」ギュンッ
渚「ちょっと寝てた」
昭「もう寝たらどうだ?」
渚「いやまだ酒残ってるからいい」
昭「無理するなよ?」
渚「ん」
昭(いやあれだ、昔のナギっぽいんだ)
昭(今よりもう少し大人しくて内気で、内に秘める優しさを素直に出せる、そんな頃の)
昭(でも優しさは少しも痩せてないんだよな、不器用なだけで)
渚「昔…」
昭「え?」
渚「昔…昭と喧嘩別れする前はどんな関係だったかってたまに思い出そうとするんだが、うまく思い出せないんだ。どんな話してたかとか、どんな事してたかとか」
昭「…うん」
渚「たまにはそんな頃みたいな関係をもう一度感じたいと思う」
昭「そりゃあ…色々変わったからな、年も肩書も頭に積んだ記憶も」
渚「…」
昭「でも同級生って事も、親友って事も何も変わらないだろ?」
渚「…そりゃそうだ」
昭「それにっ、今の関係じゃ不満か〜?」
渚「節約してくれればな」
昭「考えておこう」
渚「…あぁそうだった」
昭「ん?」
渚「…こんな掛け合いをしてた気がするな」
昭「そうかもな」
渚「…何も変わらねえな」
昭「そうだよ。あんな事はあったけど、何も変わってないよ」
渚「あぁ…そうだったな」
昭「いつだってあの頃の関係を感じられるさ」
渚「…」
昭「…相変わらず心配性だな」
渚「…酒入ると余計にな」
昭「大変だな酒飲みは」
渚「ん…」
昭「…」
渚「…一個だけ何でも言うこと聞く」
昭「急だなおい…怖いな…」
渚「夏のボーナスだよ」
昭「その企業様にあるボーナスってやつのシステムよくわかんないんだけど、何なの?」
渚「…業績に応じて支給される臨時収入?」
昭「ふーん…私業績良かったの?」
渚「…そうかもな」
昭「ほう、じゃあどうしようかなぁ」
渚「…」
昭「…と言っても今この生活を続けてくれるだけで十分なんだけどな」
渚「給料がいくら高くてもボーナスは出るんだよ」
昭「そう言われてもなぁ…あ」
渚「?」
昭「…アキって呼んでくれよ」
渚「ちゃっちいな」
昭「流石にキレるぞリボ払いでホワイトファルコン※買うぞ」
※エレキギター、滅茶苦茶高い
渚「いやだって…」
昭「一時期呼んでくれてただろ」
渚「…本気か?」
昭「あの頃感じたいなー」
渚「わかったから…アキ」
昭「ンヒュェ」
渚「どっから出してんだその声」
昭「なんかくすぐったいな」
渚「アー…」
昭「っ」ビクッ
渚「ブフッ」
昭「ちょっおい!」
渚「はっはっは!」
昭「何だよもー!」
渚「悪かったってアキ」
昭「くそう」
昭(でもまぁ…)

((たまにはこんな日があってもいいか))


・器用貧乏の天才におまかせ

渚「…」
昭「えーっと?あとこれはこうで…」カタカタ
渚「…何してんの」
昭「んー?隣に住んでる妹さんの方…大学生だったかな、いるじゃん?レポート用にノーパソ買ったけどセッティングとかわからんって言って頼まれた」
渚「ふーん…」(大学生だったのか…)
昭「よし、これでOKっと。あとは〜…」
渚「変なの仕込むなよ、人のなんだから」
昭「私を何だと、使い方で困りそうなとこをメモで残すだけだよ…」
渚「…」
昭(ちょっと落ち込んだな)カタカタ ッターン
昭「よし、ナギちょっと渡してきてくれない?」
渚「何で」
昭「近所のちびっ子の自転車修理もやらなきゃいけないんでね、じゃあ頼んだ」
渚「えぇ…」

ピンポーン
JD「はいはーい」
渚「隣の牛鬼です、パソコン返しに来ました」
JD「はーい!今出ますんでー」
ガチャッ
JD「どーもどーもーあざっしたー、太宰さんは今お出かけかなんかっすか?」
渚「近くに自転車修理に行くって…」
JD「すげ〜あの人何でも出来そうっすからね〜。じゃあこれ渡しといて貰えますか?」
渚「これは?」
JD「まぁお礼って事で近くのおいしいお店でゼリー買ったんで良かったら二人で食べて下さい」
渚「どうも…」
JD「うーん」
渚「え、何ですか…」
JD「いや、牛鬼さんまつ毛長いし化粧したらガチ強いと思うんすよ。えっていうか今すっぴんっすか?」
渚「まぁ…はい…」
JD「やばたにえん」
渚「…あーあと中にメモ残してあるって、何か困ったら見る用に」
JD「いやー何から何までありがたいっす」
渚「じゃあこれで」
JD「はーいあざっしたー」
渚(やっぱギャル苦手だな…好意的なのはわかってるけど…)

昭「ただいまーっと」
渚「おかえり」
昭「渡せた?」
渚「あぁ」
昭「ありがとな、それは?」
渚「ゼリーだってよ、お礼だって」
昭「ほーん、これあそこのか。美味いらしいな」
渚「ふーん、自転車の方はどうだったんだ」
昭「パンクだったからチューブ持ってってちゃちゃっとやったよ」
渚「あぁそれで家にあったのか…道具とか持ってたのか?」
昭「このツールボックスには何でも入ってるのさ」
渚「便利な箱だな」
昭「ふふふ」


別の日
昭「じゃあ行ってくる」
渚「今日は何だ」
昭「近所の中学生が宿題わかんないから教えてくれとよ」
渚「…お前そういう人脈どこで作ってくるんだ?」
昭「ご近所付き合いってやつだ、んじゃ」
渚「…」
渚(残ってる家事やるか)

昭「ただいまー」
渚「おかえり」
昭「いやぁ最近の中学生って結構難しい事やってんのなー」
渚「私達とそんな変わってんのか?」
昭「変わってるっていうかガンガン進んでる感じ?多分中学のうちにやる範囲広くなってるんじゃないかなぁ」
渚「ふーん」
昭「一緒に悩んじゃったよ、結構忘れてるなぁ」
渚「もうそろそろ10年ぐらい経つからな」
昭「あ"ーそういう事言わんでくれー!まだやりたい事無限にあるんだー!」
渚「あぁ…そうだな…就職してからの1年が1番早いな…」
昭「ヨボヨボになっても愛してるぞ…」
渚「え、ずっと同棲するの確定なの」
昭「え?別に…それはそれで最高だけど離れても連絡取り合うぐらいは続けたいなぁって意味合いで言ったんだけど…」
渚「…」
昭「ナギ…っ!」キュン
渚「違う違うから違うそうじゃない」
昭「そういうとこほんとナギ」
渚「…」プルプル
昭「…まぁそれは置いといて、中学生のお母さんからこれ貰っちゃった」
渚「さくらんぼ?」
昭「田舎からいっぱい送られてきたんだってさ」
渚「結構あるな…」
昭「二人だと大変だな…お隣にあげるか?」
渚「そうだな…貰い物だけど…」
昭「何かいいな、こういうの」
渚「ん、そういえばお前さぁ」
昭「うん?」
渚「最近何でそんな何でも屋まがいの事してんの」
昭「何かよくわからんけど頼まれる」
渚「えぇ…というかお前何でもやるな…」
昭「流石に建物の設計とかトレーラーの運転は出来ないけどな〜」
渚「それは業者なんだよ」
昭「でも電工とか危険物取扱は持ってるぞ」
渚「何で」
昭「さぁ」
渚「さぁ?」
昭「何か…面白そうだったから?」
渚「…」
昭「そういえば重機の免許もいいなぁ」
渚「…」
渚(そういえばこういう奴だった)
昭「あぁ、免許といえば…ほら」
渚「…自動車免許?」
昭「せっかく免許あるからいつかドライブでも行きたいなーって」
渚「車無いだろ」
昭「それなんだよなぁ…金が…」
渚「…お前本気出せば年収500万とかいけるだろうに」
昭「まぁ…多分そうなんだろうけど、私は人と生きないと生きてる実感が感じられないんだ」
渚「人と…」
昭「うーん言い方が難しいけど…企業でどこの誰が喜んでんだかわからん仕事してるならそこらのスーパーで顔馴染みの主婦のレジ打ちしてる方が好きだよ、私は」
渚「それがフリーランスって生き方?」
昭「いやまぁ今の生き方も正直よく分かんないけど…うん…まだ分かってないよ、人生は難しいよ」
渚「…私もよく分かんない、けど今んとここれしか無い」
昭「あーあ、5000兆円欲しいな」
渚「3億で十分だろ」
昭「ランボルギーニかブガッティ買ったら終わりじゃん」
渚「…?」
昭「車、あぁでもフィアットでいっか」
渚「わからん」
昭「ナギは割と気にいるんじゃないかな、可愛いし」
渚「…別に可愛いのが好きなわけでは」
昭「えー?ほらこれ」
渚「うーん…?そもそも良し悪しがわからん」
昭「街中の車見るのも楽しいぞ」
渚「…まさかエンジンまでいじれないよなお前」
昭「自信はそんなに無いけど」
渚「そういうのどこで覚えてくるんだ…」
昭「乙女の秘密」
渚「乙女…?」
昭「乙女」
渚「…そう」


・ワルの気持ち

昭「〜♪」
渚「なぁ洗濯物干すの手伝ってくれないか」
昭「うん?ちょっとだけ待ってくれ」
渚「ん… ん?」

猛暑を凌ぐ装いをした昭の胸元に何か見えた
それはいわゆる"裏の世界"に生きる者が体に入れるというあれに見えた

渚「…!?」
昭「…何?どした?」
渚「いや…」
昭「なんだぁ?セクシー昭さんに見惚れたか?」
渚「は?」
昭「釣れんなぁ…よしOK、干そう干そう」
渚「…」
渚(どうしよう…言った方がいいのか…?いや別に今時入れるのは普通だろうか…)
渚(…ちょっと様子見よう)
昭「?」


昭「あ"ーあっつ…急に暑いのは本当にキツいな…」
渚「そうだな…」
昭「でも買い物は行かなきゃならんのよな、何か必要なのある?」
渚「んー…麦茶のパック頼む」
昭「ほい」
渚「…お前その格好で行くの?」
昭「え?いいでしょこれで」
渚「いや…中寒かったらあれだし…」
昭「あー薄いの羽織るか…これでいっか、じゃあ行ってくる」
渚「いってらっしゃい…」
渚(思わず言ってしまった…でもあいつが良くても世間がどう思うかはまた別の話だからな…)


渚(結局言えずに日が経ってしまった)
同僚「どしたの牛鬼ちゃん」
渚(別にフリーランスだからビジネスマナーというかそういうのは関係無いしなぁ…)
同僚「…あれ?」
渚(いや、うん、入れてるのかだけ聞いて余計な事は言わないようにするか…)
同僚「おーい」
渚「…え?」
同僚「考え事してた?」
渚「まぁ…」
同僚「おねーさんに言ってみな?何でも聞いちゃうぞ?」
渚「いや方針は決まったからいい」
同僚「えっ」
渚(…干渉し過ぎだろうか)
同僚「(´・ω・`)」


渚「ただいま」
昭「おかえりー今日も暑かったなぁ」
渚「外しんどい…」
昭「じゃあ先にシャワー浴びな」
渚「んー…?」
渚(…あれ?無い?)
昭「…どこ見てんだえっち」
渚「えっおまっ」グイッ
昭「ちょちょちょまっ!?えっ!?何っ!?さすがに急に来られると私もビビるぞ!?」
渚「えっあっちがっ」
昭「もー何だよー…顔怖いから何かやらかしたのかと思って肝が冷えたぞ」
渚(えぇい変な流れだがここで聞くか)
渚「いや…お前胸元に入れ墨無かったか?」
昭「え?」
渚「…?」
昭「…あー!あれね!ほらこれ」グイッ
渚「!?」
昭「今日は腰の辺りに付けてるんだけどさ、違うよこれシールだよタトゥーシール」
渚「…シール?」
昭「最近は自分がデザインしたのを印刷してシールに出来るんだって、だからちょっと遊んでた」
渚「…」
昭「楽しくなってNAGI♡LOVEってのも作ろうかと思ったけど直前でさすがにこれは無いなって思ってやめた」
渚「…っ!っ!」
昭「えっどしたの、疲れた?」

よく分からないが無性に安堵した

昭「あぁなんだ、本当に入れてたと思ったわけか」
渚「そんなのあるなんて知らなかったし…」
昭「あぁ…それはごめん…言えばよかったな」
渚「いや…あまり干渉するのもあれだし…」
昭「んーまぁ問答無用でやめろって言うのはあれだけど、ナギはそういう言い方しないって分かってるから」
渚「…どうかな」
昭「…もしかしてピアスも嫌だったりする?」
渚「…よくわからん、ピアスはまだ隠しようもあるし社会から認められてる方だと思うし…」
昭「あー…まぁナギは普通に会社勤めだからってのもあるんだろうな、社会のしがらみにも従わなきゃなんないだろうし」
渚「神経質というか潔癖なだけだと思うけど」
昭「そうかもしれないけど、そういう感覚はそれはそれで大事にしてほしいと思う。それはナギが育て上げた物だし」
渚「…そういうもんか?」
昭「ある意味自分の事を大事にしてるって事だし」
渚「…そういうもんか」
昭「そういうもんさ」
渚「…」
昭「でもたまにはワルになってみないか?」
渚「…そうだな」
昭「マジ?じゃあナギ専用のとっておきをデザインしなきゃな!」
渚「いや簡単なのでいいよ…」
昭「でも乗ってくるとは思わなかったな」
渚「まぁ見えないとこなら大丈夫だろうし、それに…」
昭「?」
渚「たまには遊んだっていいかなって」
昭「いいねぇ〜ワルだねぇ〜」
渚「お前に毒されてきたんだよ」
昭「んふふ〜welcome to my side〜、ついでにAKIRA♡LOVEも付けない?」
渚「それはいい」
昭「(´・ω・`)」


・ただいま、お帰り、また来年

昭「なぁナギ」
渚「ん」
昭「お盆どうするんだ?」
渚「あー…一応休みも出てるから墓参り行くんじゃないか」
昭「そうか…」
渚「お前は?」
昭「んー…」
渚「?」
昭「いや…父さん今海外行ってて…今年は一人で墓参り行くんだよな…まぁ仕方ないんだけど」
渚「あぁ…」
昭「まぁそういうわけで」
渚「…あー」
昭「?」
渚「一応どこなのか教えてくれ、なんかあった時用に…」
昭「えーっと…ここ」
渚「いつ行くんだ」
昭「明後日…かな、昼過ぎぐらいに着くように行く感じ」
渚「わかった、私は明日から一泊して帰る」
昭「おいよ」
昭(…なんで場所聞いたんだろう)

翌日
渚「じゃあ行ってくる」
昭「気を付けてな、暑いし」
渚「お前もな」
ガチャッ バタン
昭「さて…明日の夜まで一人か…どうしよっかな」
昭「…あ、色々用意しないといけないんだった」


渚母「あ、来た」
渚「待たせた」
渚父「元気そうだな」
渚「そうか?」
渚父「隈も少し薄くなったんじゃないか?」
渚「わからん」
渚母「ほらさっさと電車乗るわよ」
渚「はいはい」

ガタンガタン
渚母「ところで昭ちゃん…だっけ?元気にしてる?」
渚「あぁ、変な事やってるよ」
渚父(変な事…?)
渚母「あなたが友達と同居するなんて、ほんと昔だったら考えられなかったわね」
渚「私は今でも思ってるよ、まさかあいつとなんて」
渚母「ほんとよ、大事にしなさいよ」
渚「…わかってる」
渚父(よくわからんが…いい子を友達に持ったようで良かった)
渚「あぁ…あと…」
渚母「?」
渚「明日…朝早めに帰るから…」
渚母「え?なんで」
渚「いや…ちょっと用事が…」
渚母「用事って何よ」
渚「…」
渚母「…」
渚「…昭、親父さんが海外に行ってて一人で墓参り行くんだよ」
渚母「…」
渚「だから…その…」
渚母「わかったわ、好きにしなさい」
渚父「いいのか?」
渚母「この子が決めたのなら余計な口出しはしないわ」
渚「…悪い」
渚母「怒ってはないわ、もうあなたも大人なんだし」
渚「…」
渚母「…失礼の無いようにね」
渚「…ん」
渚父(すっかり仲も回復したようでほんとに良かった…)

昭(花…は行く途中でいいか、線香も向こうで買えるだろうし…あとなんだ?)

渚「やっと着いた…」
渚父「この年になると長時間乗車はくるものが…」
渚母「もう来てるはずなんだけど…」
親戚「お、来た来た。こっちー」
渚母「あ、いた」
親戚「おひさ、渚ちゃんも元気?」
渚「まぁまぁ…です」
親戚「ちゃんと食べてるー?」
渚「んまぁ…」
渚母「話は後にして早く行きましょ」
親戚「えー可愛い姪っ子との貴重なお話時間を…」
渚母「家着いてからでいいでしょ全く…」
親戚「はいはい、じゃあちゃっちゃと墓参り行きましょ」
渚(助かった…)

ブーン
渚母「あんたのとこは変わりない?」
親戚「そうねー、今年は畑に猪もあまり来なかったみたいだし」
渚母「何か対策でもしたの?」
親戚「近所で飼ってる犬の毛をちょっと貰って撒いたぐらい?」
渚母「あぁ、それ効くんだ」
親戚「今のとこね、換毛期の時に結構抜け毛出たから向こうも助かったって」
渚母「ふーん」
渚父「(なぁ渚)」
渚「(?)」
渚父「(母さん、今まであんなに喋ってたっけ?)」
渚「(…さぁ)」
親戚「あ!そういえば渚ちゃんお昼何がいい?田舎だからあんまり種類は無いけどさ」
渚「ん…いや…何でも大丈夫です…」
親戚「何でもかー、じゃあまぁ暑いし蕎麦か何かにしよっか」
渚「蕎麦良いですね」
親戚「天ぷらも頼んじゃって良いよー」
渚「いやそこまでは…」
親戚「山菜の天ぷらが美味しいとこでねー」
渚(聞いてない…)

昭(昼…どうすっか…暑い日は逆に熱いものという事でラーメン、いくか)

親戚「はい家着いたよー」
渚母「どうもね」
渚「ん“ー…」
親戚「お疲れさん、まぁゆっくりしてって」
渚「はい」
渚(…昭に連絡するか)
渚母「あそうだ、渚明日早めに帰るんだって」
親戚「え!?なんで?」
渚母「用事あるんだって」
親戚「そっか…わかった、じゃあ先に駅まで送っちゃうね」
渚母「悪いわね」
親戚「可愛い姪っ子のためなら」
渚母「ほんと好きね…」

〜♪
昭「おん?ナギから?」
ピッ
昭「あいよどうした」
渚『こっちは今着いたところって事だけ』
昭「律儀だなぁ」
渚『うるせえ』
昭「こっちは今昼飯…あっどうもー」
渚『…どこにいるんだ?』
昭「ラーメン屋、塩が美味いとこ」
渚『…今日暑いだろ』
昭「暑いからだろ、ナギは?」
渚『蕎麦食った、あと天ぷら』
昭「天ぷらいいなー」
渚『蕎麦だけで良かったんだけど叔母さんに押し切られた』
昭「やるな、叔母さん」
渚『…じゃあそういうことで、ラーメン来たんだろ?』
昭「来た、美味そう、じゃあな」
渚『ん』
ピッ
昭「ふふ、さて食べるか」

親戚「な〜ぎさちゃん」
渚「?」
親戚「明日早めに帰るんだって?」
渚「あ、はい」
親戚「じゃあ先に駅まで送っちゃうね」
渚「すいません…」
親戚「いいのいいの、用事か何かあるの?」
渚「まぁ…そんな感じで」
親戚「聞いちゃってもいい?」
渚「えーっと…今同棲してる小学校からの友人がいるんですけど…今年親が一緒に墓参り行けなくて一人で行くみたいで…それで…」
親戚「一緒に行こうと?」
渚「まぁ…はい…」
親戚「あらまぁ」
渚「あいつにも行く事言ってないし、正直変だとは思うんですけど…」
親戚「えーでも小学校からの友達なんでしょ?もう家族みたいなもんじゃん」
渚「ん…んん…」
親戚「友達の事好きだねぇ」
渚「別にそういうんじゃ…」
親戚「どんな子なの?」
渚「んー…

昭「へっぶし!」
昭「あー…あー?」

翌朝
渚「すいませんありがとうございました」
親戚「いいのいいの、じゃあ体に気を付けてね」
渚「はい」
親戚「また来てね」
渚「はい」

昭「…ん?メール…」
昭「…着いたら連絡しろ?」
昭「心配性だなぁ…」
昭「さてどうしよっかな…まだ時間あるし、家事やるか」
〜♪
昭「なんだやる気になってたのに、もしもし⤴︎もしもし⤵︎?」
昭父『もしもし⤴︎もしもし⤵︎?昭?』
昭「おうダディ、わっつあっぷ」
昭父『ふぁっきんほっと、そっちは?』
昭「あっちー日にあっちーもん食っても湿度高かったら意味無いよなーって気分」
昭父『はっはっは、こっちは湿度は低いから暑いけど割と楽だぞ』
昭「くそう裏切り者。で、どした?」
昭父『今日墓参り行くんだろ?』
昭「あぁ、昼過ぎぐらいに着くように行くつもり」
昭父『悪いな、一人で行かせる事になっちゃって』
昭「まぁ仕事なら仕方ないだろ」
昭父『ん…まぁそういう事だからあいつにもそう伝えといてくれ』
昭「私達を裏切って外国でサマーバケーション行ってるって伝えとくよ」
昭父『あれ?俺日本語で喋ってるよな?』
昭「はっはっは、冗談だよ。じゃあ」
昭父『おう、気を付けてな行くんだぞ』
昭「ん」
ピッ
昭「ふむ…やる気無くなったな…いやまぁやるかしょうがない」


昼過ぎ
昭「さーて今日は昼飯どうし…」
渚「…おう」
昭「…ナギ?お前どうして…」
渚「いや…その…一人で行くのも…なんか…あれだろ」
昭「…」
渚「…」
昭「ナギ…私の事好きすぎだろ」
渚「ばっ!?」
昭「はい寺で騒がないの、ほら墓参り行こうぜ」
渚「くっ…」

昭「…」
渚「…」
昭「…よし、ほらナギも」
渚「…いいのかな」
昭「ここまで来といて何言ってんだ」
渚「ん…」
渚「…」
昭「…」
渚「…ん」
昭「おし、じゃあ昼飯食って帰るか」
渚「おう」
昭「そういえば本当はアヤメを供えたかったんだけど時期的にな…」

今年は友達連れてきてくれたのね

昭(勝手に来たんだけどな)
渚「…時期的になんだよ」

ふふ、心配だったのよ 大事にしなさいね

昭(もちろん、親友だからな)
渚「おい」
昭「え?」
渚「時期的に」
昭「あぁ、そうそう時期的に無くてさ…


昭母(あの人も相変わらず忙しそうね)
昭母(でも代わりに親友ちゃんが来てくれたし…あの子が良く話してくれたナギちゃんかしら)
昭母(二人がずっと仲良くいれるよう信じてるわ、昭)


・見た目は中性美女、嗜好は…

-某ショッピングモール
昭「色々あるなぁ」
渚「あるなぁ」
昭「でっかい肉置いてるかなぁ」
渚「安かったらな」
昭「えー安かったらいいのか?」
渚「こんな時ぐらいはな」
昭「よっしゃ早く確認しに行こう」
渚「野菜も食えよ」
昭「えー?」
渚「えーじゃない」
昭「しょうがねぇ…なぁ…?」
期間限定カブト・クワガタコーナー
昭「…」
渚「あと何買うんだったかな…」
ヘラクレスオオカブト「やぁ」
昭「あ…あ…」
渚「お前寄るとこ…あれ?」
ニジイロクワガタ「ちょっと話そうやぁ」
昭「 」プルプル
渚「おいアキ聞いてんのか」
昭「あれ見てきていい!?」
渚「は!?」
昭「ちょっと!ちょっとだけだから!!」
渚「いや…いいけど…」
昭「うっひょおおおおおおおお!!」
渚「うるさ…」
昭「お、おぉ…ヘラクレス…これいいサイズだなぁ…角も綺麗に伸びてる…」
渚「…」
昭「ニジイロクワガタやっぱすごい色だなぁ…どの角度からでもずっと見れる…」
渚「…」
昭「え、サタンオオカブト!?こんなとこで扱っていいのか!?ふさふさじゃん!?」
渚(本当にうるさいな…連れと思われたくない…)
昭「ねぇママ…」
渚「誰がママだ誰が」
昭「あたしコーカサスオオカブトとコガシラクワガタほしい…」
渚「ヘラクレスとやらじゃないのかよ」
昭「ヘラクレスもいいんだけどな、ていうかそっちも欲しい」
渚「…バカやろう何だこの値段」
昭「えー?だめぇ?」
渚「というかさっきから何だその子供口調」
昭「やっぱ甲虫を前にすると人は子供になるのよ」
渚「お前人目というのを…」
少年達「「…」」
昭「おうなんだちびっ子共、見せもんじゃねーぞぉ」
渚「やめろ絡むな私が同類と思わせるな」
少年「おにーちゃん虫好きなの?」
昭「かっこいい虫が特にな」
渚(お兄ちゃんなのは流すのか…)
少年「じゃあどれ好き?」
昭「難しい事聞くなぁ…逆にどれ好きよ」
少年「えー?やっぱヘラクレスかな」
少年「いやオオクワガタだろー」
少年「日本のカブトムシでしょ」
昭「あー王道もいいよなー」
少年「で、どうなの」
昭「そうだな…皆かっこいいから皆好きだぞ」
少年「えー?ずるくないそれ?」
少年「僕達ひとつに決めたのに」
昭「誰も一番って言ってないだろ、それぞれがそれぞれの進化を遂げて身につけたかっこよさだからな。そりゃかっこいいよ」
少年「ずるい大人だな」
昭「一つ教えてやろう、子供は大人になれないけど大人は子供になれるんだな〜」
少年達「「え〜」」
昭「というわけでナギ」
渚「…」
昭「買って♡」
渚「…」
ギュイッ
昭「いでででで!!」
渚「邪魔して悪かったな」
昭「あ“ー!ほっぺ取れる!取れるから!」
少年達「「…」」ドキドキ

渚「はぁ…」
昭「んー…欲しかった…」
渚「そもそもお前世話出来るのかよ」
昭「え…出来るでしょ…」
渚「飽き性だろ」
昭「…」
渚「代わりに世話するのとかやだぞ」
昭(ママ…)
渚「ほらさっさと買い物済ませるぞ」
昭「へいへい…ん?」
期間限定化石コーナー
昭「…」
渚「…」
昭「マ 渚「もう一回やられたいか」
昭「…」
渚「…」
昭「…肉見に行くか」
渚「…そうだな」


・うるさくはないけど

渚「…なんだって?」
昭「いやだから、知り合いからバーやらライブやらヘルプ頼まれて…今週は夜遅くまで家いないから」
渚「いや…まぁいいけど…」
昭「だから夕飯は悪いけどナギの方でどうにかしてくれ」
渚「わかった…」
昭「寂しい思いさせちゃうけど許しておくれよよよ…」
渚「その自信はどっから湧いてくるんだ」
昭「ひとえに、愛」
渚「傲慢な愛だな、人の気も知らんで」
昭「えーじゃあ一人で寂しくないってのかこの薄情者ー」
渚「ガキじゃあるまいし一人でもどうって事無いだろ」
昭「知らんからなー、人恋しくなって電話してきても30分しか出てやらないからなー!」
渚「なげーよ仕事しろよ」
昭「んふふ」


-day1-
渚「じゃあ行ってきます」
昭「行ってらっしゃい、昨日言ったけど夜いないから」
渚「ん」
バタン
昭「えー…っと、午前はあれとあれと…」

渚(…夜飯どうしよっかな)
渚(帰ってから作るのも面倒だなぁ…)
渚(今日は弁当でいいか…)
渚(…)
同僚「牛鬼ちゃーん」
渚「ん?」
同僚「お昼行こーよ」
渚「ちょっと待っててくれ」
同僚「…それいつまでだっけ?」
渚「え?明日…」
同僚「ヒュッ」
渚「…」
同僚「…お昼食べたら全速でやればなんとか」
渚「…」

渚「ただい…」

渚「…」
渚(弁当買ったのに玄関開けてからいないのを思い出すとは)
渚(…月曜で疲れてるな)
渚(…)
渚(静かだな)

Vo「ギター!今日だけの特別サポート!アキラ!」
昭「イエー!お前ら飯食ったかー!空腹の方が生存本能働いて私らの音楽でキメれるぞぉ!」
Vo「何言ってんだお前!?」
昭「じゃあここで飯の小話でもひとつ、前に鉄火丼とか親子丼とかあるけど焼き魚の丼ってないよなーって思ってたら鯖丼なんてもの見つけて…
Vo「ギター弾けよお!」
ワイワイ


-day2-
渚「…お前ちゃんと寝てんのか」
昭「ん?寝てるよ」
渚「そう」
昭「?」

渚(今日はどうしよっかな)
渚(どっかで食うかな…でも店知らないし…)
同僚「いやぁ…何とか間に合ってよかった…」
渚「よかったな」
同僚「牛鬼ちゃんもありがとねぇ手伝ってくれて」
渚「気を付けろよ」
同僚「何か奢るよ」
渚「別にいい…あ」
同僚「い?」
渚「…この辺りで夜飯食えるとこ知ってるか?」

渚「た」

渚(また言いかけてしまった)
渚(…いや防犯上言った方がいいんだっけ?)
渚(やだなぁ…空き巣と鉢合わせとか…)
渚「…」
渚「ただいま」
渚(曲でもかけるか)

昭「いらっしゃませ」
客「あ、どうも…えっとジントニックで」
昭「かしこまりました」
客「(ちょ、ちょっと)」
バーテン「(はいはい?)」
客「(あんなイケメンバーテンさんいましたっけ!?)」
バーテン「(あー今日明日だけのお手伝い的な感じで)」
客「(えー…もったいない…目の保養…)」
バーテン「(すいませんね)」
昭「お待たせしました、ジントニックになります」
客「はい…どうも…」
昭「今日明日だけでごめんなさいね」
客「ん“ん”っ」
昭「…ところで明日もお仕事では?」
客「飲まなきゃやってられないんで」キリッ
昭「…チェイサー置いておきますね」


-day5-
昭「…」
渚「…何だよ」
昭「いや…ナギニウム欠乏症が…」
渚「何言ってんだ」
昭「あと3日…」
渚「…」

同僚「牛鬼ちゃ〜ん」
渚「ん?」
同僚「今日飲みに行かなーい?」
渚「…」
同僚「あ、でもイケメン同居人がご飯作ってるんだっけ?」
渚「いちいちイケメン付けんでいい、まぁいいけど」
同僚「え、いいの?」
渚「あいつ今週夜いないんだよ」
同僚「どしたの」
渚「なんか知り合いのヘルプ入ったって」
同僚「…そういえばさぁ、聞いた感じだとその人」
渚「?」
同僚「…フリーターなの?」
渚「…」
同僚「…」
渚「!?」

昭「うー」
Ba「どしたんすか昭さん」
昭「ナギと飯食いたい…」
Vo「同居してる幼馴染だっけ?」
昭「そう、今週は夜帰るの遅くなっちゃうから夜飯は一人でどうにかしてもらってる」
Dr「仲良いんすね〜」
昭「ナギはいい女だぞ〜男だったら結婚したいぐらい」
Vo「ベタ惚れじゃないか…何だったら今でも求婚してそうな勢いだな」
昭「まぁ愛してるのは今もだし」
Ba「(…昭さんってそっちなのかな)」
Dr「(いや両方いけるのかもしれない)」
Ba「(どっちにしてもあんなイケメンに好かれるの羨ましいなぁ)」
Dr「(ねー)」

渚 ゴクッゴクッ
渚「…ぷはっ」
同僚「おーいい飲みっぷりだねぇ」
渚「そんな見ないでくれ」
同僚「ごめんごめん、でもその飲みっぷり見ちゃうと私も飲みたくなるなぁ」
渚「無理するなよ」
同僚「グラスなら大丈夫、すいませーん生ビールのグラスお願いしまーす」
ハーイ
同僚「でさぁ、ここ奢ってあげるから同居人の話聞かせてよー」
渚「んー?特に面白い話無いぞ」
同僚「なんかあるっしょー、あと写真とか」
渚「写真…無い気がする…」
同僚「えぇー写真撮ってよー」
渚「無いもんは無い…いや一枚あったわ」
同僚「えーどれどれ」
渚「これ今のとこに引っ越したばかりにあいつが撮って送ってきたやつだな、ほら」
同僚「グワー!何この目が眩むような美女は…」
渚「同居人」
同僚「女神と住んでんの?」
渚「同居人っつってんだろ」
同僚「やば、これがおゆはん作って家で待っててくれんでしょ?」
渚「これ言うな、4割ぐらいの確率で変なの出てくるけどな」
同僚「それぐらいはギャップ萌えでしょ、はぁ…いいなぁ…というかそれ抜きでもご飯作ってお帰りって言ってくれる人が家にいるってのがいいなぁ」
渚「…」
同僚「ん?」
渚「それは…正直今回で思い知らされたというか…」
同僚「うん」
渚「あいつが勝手に私のこと好いてきて、同居して飯作ってくれるまでに至って、それが当たり前のように感じてたけど普通に考えたらそんな幼馴染みいないよなぁって…」
同僚「あえ、幼馴染みなんだっけか」
渚「ん」
同僚「いい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜なぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
渚「…羨ましいか?」
同僚「そこまで来たら同性でも羨ましい」
渚「…そうか」


渚「ただいま…」

渚「…」
渚(1週間一人で寝付くのは寂しいもんだな、意外と)
渚(人は失って初めて気付くって事か)
渚「…」

~♪
昭「ん、はいはい昭さんですよ」
渚『私だけど』
昭「なんかそれあれだな、親みたいだな」
渚『微妙にわかるのがムカつくな』
昭「で何、どしたの」
渚『今日は帰り何時ぐらいになるんだ?』
昭「んー…多分1時過ぎるなぁ」
渚『わかった』
昭「ん」
渚『…』
昭「…あ、それだけ?」
渚『…そうだけど』
昭「なんだぁてっきり寂しいのk
ピッ
昭「…切られた」
Vo「例の同居人?」
昭「そうそう」
Vo「あれだったら先に帰っても大丈夫だぞ?」
昭「いいのか?」
Vo「今日ぐらいは早めに帰ってあげな、もう遅い時間だけど…」
昭「…じゃあお言葉に甘えて」
Ba「お疲れっしたー」
Dr「したー」

ガチャッ
昭「たっだいまぁ…あれ」
渚「…zzz」
昭「あれ寝ちゃってんじゃん」
渚「…ん」
昭「お、起きた」
渚「…」
昭「先に寝ててよかったのに」
渚「…風呂沸いてるから」
昭「あ、沸かしといてくれたの?ありがてぇ…」
渚「…」ポリポリ
昭「…えーっと?」
渚「…おかえり」
昭「 」ギュンッ
渚「…寝る」
昭「 」

昭「ただいま、ナギ」


-day7-
昭「というわけで今日で夜勤は終了ーいやー働いた」
渚「夜勤…まぁ夜勤か…」
昭「まぁ今日は多分ある程度早めに帰れるから」
渚「ん…ところでお前さぁ」
昭「?」
渚「…お前ってフリーターなの?」
昭「フリーランス」
渚「いや…確かにそう言ってたけど」
昭「フリーランス!」
渚「…わかった」
昭「フリーターじゃないから!」
渚「わかったから…」
昭「フリーター呼ばわりとは聞き捨てならねェ!昼飯作ってくれないと許さん!」
渚(安いなぁ…)

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