あなたが生まれたその日の日 10/28

”綺麗な色だね”
”睨んでんじゃねーよ”
”美人の目だよ”
”蛇みたいだな”

目については色々言われてきた、良いことも悪いことも。
もういちいち嘆くことも無くなったけどそれでも傷つかない何てことは無い。
人は良いことよりも悪いことの方が頭に残りやすいらしい。
きっと祖先は私みたいなハムレット型だったのだろう。
それでも生き残ってきたのはきっと、
”彼女”の言葉のような存在があったのだろう。

「…」
「…なにマリー?」
「ん?メルの目きれーだなーって」
「はいはい」
「もー、もうちょっと喜んでよー」
「何回言われたと思ってるの…嬉しいけどさぁ…」
「初めて会った頃から言ってる気がする」
「もう3年ちょっとだから週イチと考えて年52回ほどで×3だから…」
「メルそういうところあるよね」
「え?」
「すーぐそうやってよくわかんないこと考え出すとこ」
「…もしかして変?」
「変じゃない?」
「ぅえ…」
「でもそういうところも好きだよ」
「…マリーのそういうところも変だよ」
「これはだって自分に無いところだもん」
「んー…」
自分に無いところが好き
私には無い考え
「そういえばメルそろそろ誕生日じゃない?」
「そういえばそうだね」
「今年こそ何かやらないの?」
「んー…いいよ、悪いし」
「またぁ?私は別にいーのに」
「いーの、平日だし」
「ん゛ー」
「怒んないでよ」
「いいもん、トール達も呼ぶもん、GOに入ってはGOに従えだもん、こっちから祝うもーん」
「…なんか発音違くない?」
「japã~o♪」
「?」
「あれ?わかんない?」
「うん…いやそれより、トオル達も呼ぶの?」
「だって中学の時も何もやってなくない?」
「そうだっけ…」
「じゃあ決まり」
「えぇ…」
なんだか大事になっちゃったなぁ…
でもやめてとも言えないし…
…まぁいっか

「というわけでトール達なんかない?」
『また急だのう…そういえば誕生日知らなかったなぁ』
「あれ?知らなかったっけ?」
『そうね、エイミーそういうの言わなそうだし』
「まぁそういうわけよ」
『さいで』
『きーちゃんの時はお菓子やらあげたけど』
「お菓子いいね、最近和菓子?好きって言ってた気がする」
『和菓子かぁ、結構高そうじゃない?』
『大福とかなら何個か買えるんじゃない?』
「いいねいいね、他は他は?」
『お姉ちゃんなんか花の髪留めあげてたよね?』
『あー月下美人?あれ誕生花だったから』
「タンジョーカ?」
『生まれた日にちなんだ花があってね、10月28日だと…ヤハズカズラだ』
『花言葉は…”美しい瞳”』
「!」
『いいじゃんぴったりじゃない?』
『はー苗も売ってるんだ、ツンベルギアって名前みたいだけど』
「ヤハズカズラ…花言葉…」
『マリー?』
「ありがと!ちょっと色々探してみる!」
『頑張ってねー』
ピッ
「いいことを聞いちゃった」

「アタシ達も何か贈ろっか」
「でも28日って平日じゃない?」
「あっちの学校そんな遠くなかったら帰り寄ればいいんじゃない?」
「そうしよっか」
「何にしよっかね」
「どしよっかね」

「メルメルメルメルメルメルメルメルメル!!」
「Stay!!」
「ハイ」スンッ
「なにもーうるさい」
「えーっと…なんだっけ」
「えぇ…」
「あそうそう、和菓子好きって言ってたよね?」
「うん」
「どんなのが好き?」
「どんなの?うーん…好きって言ったけど実はそんなに食べたことあるわけじゃないからこれって言うのはまだ無いの」
「じゃあ色々食べてみたい?」
「そうだね」
「ちなみに何食べたの?」
「お団子とどら焼き」
「Tá certo!」
「ところでさぁ」
「?」
「ニホンの誕生日を祝うときってsurpriceが多いって聞いたけど」
「え?」
「それはいいの?聞かなかったほうがいい?」
「…Nao há problema」
「え?」
「喜んでくれるものあげたいから」
(気づいてなかったのかな…)
「というわけで当日をお楽しみに~」
「はいはい」
ちょっと抜けてるところもあるけど、マリーは本当に人が好きなんだなぁっていつも思う
「なにアメリアちゃん誕生日なの?」
「え?うん、もうすぐ」
「おーおめでとー、それでマリアちゃんあんな張り切ってるんだ」
「そうみたい」
「それにしてもマリアちゃんってほんとにアメリアちゃん好きよね~」
「中学の頃からあんな感じでね、なんでなんだろうね」
「その目に惚れたとか~」
「惚れたってそんなぁ」
「いやーでもマリアちゃんじゃないけどキレイな色だよね」
「んぇぁ…」
「んじゃあ当日また祝うね~」
「うん、ありがとね」
惚れ…惚れ?

「用意はいいかヤローども!」
『イェア!』
『何そのノリ?』
「まぁそれは置いといて、プレゼント決めた?」
『こっちはメガネ拭きと』
『シュシュにしたよ~』
「いいね~」
『和菓子はマリーがあげるかなぁと思って』
『実用品~』
「おっけー」
『そういえばそっちの学校ってどの辺りなの?』
「〇〇の方だよー」
『んー…ギリ寄れるかな?』
『そうね』
「あ、こっち来る?じゃあ間辺りで待ち合わせでどう?」
『じゃあ●●で』
「ハイー」
『マリーはプレゼントどうしたの?』
「ンーフフー♪」
『おーしーえーろーよー♪』
「ナイショー♪」

「というわけでメルー、今日用事は?」
「え?特に無いけど」
「じゃあ行こー」
「え?ちょっどこに!?」
「いいからいいからー」

「…あ、トール?そろそろそっち着くよー、うん、うん、はーい、じゃあ後でねー」
「あ、トオル達も来るの?」
「ちゃんとプレゼントもあるって」
「なんか悪いなぁ」
「大丈夫だって、私達がしたくてやってるんだから」
「そう?」
「そうそう」
「うーん…」
「メル顔ニヤけてる」
「!///」グリグリ
「お、マリメル来た」
「おー」
「トール!ジュン!おひさー!」
「おひさー」
「「いえー!」」パンッ
「ジューン久しぶり」
「エイミーも元気そうでなにより」
「じゃあどっか入ろっか」
「行こっかー」

「というわけでー」
「「「誕生日おめでとー」」」
「あ、ありがと…」
「何歳になったのよー」
「16、というか同い年…」
「メルは私よりお姉ちゃんなんだよねー」
「おねーちゃーん」
「おねーちゃーん」
「やめてよもー…」
「んじゃあそろそろプレゼントタイムにしましょー」
「誰からいく?」
「じゃあ私ー、私はねぇ、これ」
「…わぁ、シュシュだ」
「おー、ちょっと付けてみてよ!」
「んー…」ゴソゴソ
「…どうかな」
「ア”ー!カ”ワ”イ”イ”ー!」
「パステルグリーンいいねー、さすおね」
「( ・´ー・`)」
「写真撮らせて!」パシャシャシャシャシャシャ
「メガー!」
「マリーフラッシュフラッシュ」
「ん、満足」
「世界が…眩しい…」
「大丈夫?」
「ウン…」
「ゴメン」
「イイヨ…」
「…じゃあアタシいい?」
「ウン」
「アタシはこれー、メガネ拭き」
「これもカワイイー!」
「ネコかわいいね」
「エイミーは猫が似合う気がしたのよ」
「ネコ似合う?」
「そうねぇ、黒猫?」
「じゃあラッキーアイテムだね」
「黒猫ってそうなの?よく縁起悪いって言われることない?」
「確かにうちの方だとそうだけどニホンだと逆らしいよ」
「はえー」
「トール…」
「いや!違う!単純に黒猫かわいいなーって!」
「わかってる、トオルはそんな子じゃないって」
「それは…良かった…」
「トールは優しいもんネー」
「アリガタキオコトバ…」
「じゃあ最後マリー?」
「ハーイ、じゃあまずこれ!」
「なんかいっぱい…あ、和菓子?」
「そう!大福とかまんじゅうとか色々買ってみた!」
「来る途中買ってたのこれだったんだ」
「いっぱい食べてねー♪」
「…」ゴクリ
「お姉ちゃん…」
「…」
「それとねー…これ!」
「…これ何?」
「えーっと…そう!ツンベルギア!」
「ツンベルギア?」
「またの名を~…ヤハズカズラ!」
「あ」
「お」
「ヤハズカズラ?」
「花言葉は、”美しい瞳”!」
「え…」
「メルにはいつも言ってるけどね、たまにはこういう言い方も…えーっと…雅?でしょ?」
「…」
「…メル?」
「…今までもね、キレイとか言われたことが無いわけでは無いけど、それと同じくらい目つきが怖いとかも言われたの
それでね、怖いって言われたことのほうが覚えてるの、変だよね
でもね、マリーのこの”言葉”はきっとずっと覚えてるよ」
「メル…」
「嬉しいよ」
「…そういえばね、なんでメルの目にこんなに心惹かれるんだろうって思ったんだけどね、私に無いものだからなんだと思うよ」
「うん」
「キレイな色があって、外の光をその目で見れて、羨ましいって思うと同時に好きって気持ちが溢れるの」
「うん」
「初めて会ったときから、メルが羨ましくて、メルが眩しくて、メルが大好きだよ」
「うん、私も、私が持ってないものを持ってるマリーが大好き」
「…エヘヘ、なんか恥ずかしくなってきちゃった」
「え」
「え?」
「…」ムニィ
「むぇ!?にゃ、にゃに!?」
「…」グイーッ
「にゃにー!?」
「あーお二人さん、イチャイチャはよそでやってくれんかのう」
「暖房代わりに丁度いいからここでいいよ」
「タフケテー!」

ヤハズカズラは蔓性の植物のようなので蔓用にネットを用意してみた。
冬はあまり花が咲かないらしいのでその時が今から楽しみ。
それと貰った和菓子、どれも美味しくてますます好みが決められないなぁと思った。

私が持ってないもの、マリーが持ってるもの
ダークブラウンの髪、健康的な褐色肌、誰とでもフレンドリーなところ、ポジティブなところ
私が持ってるもの、マリーが持ってないもの
レッドジンジャーの髪、雪のような白い肌、思慮深いところ、慎重なところ
自分で言うと変だけど、きっとマリーにネガティブだって怒られるから少し頑張って自分を良いように言ってみる。
生まれも育ちも全く違って、この地で出会った真反対な私達。
だからきっと、パズルみたいにぴったりハマったのだろう。
この広い世界でそんな彼女に出会ったこと、神様に感謝しよう。
私達のこれからに、どうか祝福を。

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