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乱数鉄道旅で、どこかに飛ばされよう(後編)

前回のあらすじ

筆者と、無理やり連れてこられた不憫な友人の2人は、乱数に身を任せ、見知らぬ駅に飛ばされる「乱数鉄道旅」を行っている。
東京駅から発った我々は、「蒲田」「桜木町」「鶴見」「川崎」「横浜」に飛ばされたあと、再び京浜東北線の呪いによって聞いたこともない駅「洋光台」に飛ばされることになった。さて、旅の行方は…!

6.洋光台

13:29

これまで蒲田、桜木町、鶴見…と喧騒の街を歩いてきたが、ここは打って変わって静かな街だった。
駅の周りには多くのマンションが立ち並ぶ、神奈川のベッドタウンといった感じだ。
春の陽気と静かさが、まるで小学校の早帰りの日のような空気を醸し出していた。なんだか、形容しがたいけど、懐かしいのである。

友人の提案で、近くにイトーヨーカドーに行くことにした。確かにイトーヨーカドーはベッドタウンにあるというイメージがある。
ヨーカドーにはノートや筆記用具を買いに来た親子連れが複数いた。そうだよな、1年生のみなさんは小学校の準備をしなきゃですもんね。街を歩くと、こういう日常の一コマを見ることができるのが好きだ。

7th.JUDGEMENT

洋光台は京浜東北線しか通っていないので、このまま大船方面に抜けられればはやく京浜東北線とおさらばできる。









よし!!!!!!!!
幸いなことに、大船まで抜けることができた!
京浜東北線とさようならできそうだ!!

7.大船

14:06

大船まで来たは良いものの、もう改札の外に出る元気はない。今考えれば大船駅から見える名物「大船観音」に行けばよかったとも思っているが、既にこの乱数鉄道旅の過酷さにやられ、そんなことも考えつかなかった。

さあ、元気を出すために、もっと面白い行き先を求めて、先へ急ごう。
まだ14時だから、希望はある。

8th .JUDGEMENT

大船駅は横須賀線や東海道線が通るなんとも夢の広がるターミナル駅である。
朝から京浜東北線にしか乗っていないので、頼みますから、
横須賀線で鎌倉に行ったり、東海道線で熱海とかに行かせてください。
頼みます。
本当に頼みます。










おい京浜東北線!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ばか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
東京に!!!!!!!!!!!!!!!!
戻るだと!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

東十条、東京の北の方である
京浜東北線はもう嫌いになりました。
もう京浜東北線に乗りたくありません。
お前の清々しい青色が嫌いです。
列車の顔が嫌いです。
さようなら。
しかもせっかく神奈川の南まで来たのに、東京にもどれと?
もうね、アホかと。馬鹿かと。

「なんで京浜東北線引いたの?なんで?オマエノセイダ!」
「そもそもこんな乱数鉄道旅とかいうのを始めたお前が悪い」
「熱海とか行こうよ、もういいよ」
「いや、だって沢山選択肢はあったじゃん、なんでポイントで京浜東北線引くん?」

このときから、友人との空気がだんだん悪くなってきた。

すこしズルだが、東十条に向かうのに京浜東北線だけを使うと大変効率が悪いので、上野東京ラインを使って少しショートカットをすることにした。
暫くは、あのキモい青い車体からは離れる。

8.東十条

15:21

1時間半かけて、東京まで戻ってきてしまった。今までの神奈川の南まで行った時間は何だったのか。乱数一つの気まぐれで、私達の身が転がされている恐ろしさが、皆さんはわかるだろうか。

せっかく東京の知らない街に飛ばされたので、今回は外に出て散歩することにした。
というか、散歩をしないとここに飛ばされた意義が見いだせないので、無理やり「飛ばされた意味」を作るために散歩している。

東十条商店街
Encanto!
古い建物

おかしい、私は見知らぬ街を散歩するのが大好きなはずだ。大好きなはずなのに、東十条の散歩は全然楽しくない。乱数旅によって私の好きなことが歪められている。おかしい。これは手を出してはいけないことをしてしまったのかもしれない。

9th. JUDGEMENT

私が始めたことだから最後まで私が責任を持って完遂させる。
東京の北の方まで飛ばされてしまったので、このまま埼玉県の方に行って大宮あたりで散歩できたら楽しいだろう。










どうして南の方に行くかな!!!!本当に!!!!!!!!!
意味がわからないよ。
また戻るのかよ。

しかも大森の隣駅は、一番はじめに訪れた「蒲田駅」である。

今1時間以上かけて東京の北に来た意味はなんだったのか?

どうしてまた30分かけて南の方に戻るんだろうか?

どうしてこんなことやっているんだろう。

こんなことやって何の意味になるのだろう。

いや、そもそも「移動」というのは意味があるのだろうか?

よくよく考えれば、身を移動させるだけの行為である「旅行」に意味はあるのか?

9.大森

16:23

どうして南に行って、

北に行って、

南に行っているのだろう。

大森はどうせ京浜東北線しか通っていない。
ここまで来たらもうどこに行っても良い。
どんなところが来ても驚かない。

10th.JUDGEMENT









!?!?!?!?!?!?!?

そこは!!!!!!!!!
さっき!!!!!!!
行っただろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

10.桜木町

16:55

もう見た。もう見たよ。この景色は。もう見た。

さっきより西日に傾いた。

10時間かけて同じところに帰って来るの、

本当に面白すぎる。
そして、悲しすぎる。

はははははははは、、、、帰りたい。

11th.JUDGEMENT

時刻17:00をまわった頃だ。この乱数鉄道旅のルールは「家に帰れなくなりそうになるまで」だ。まだまだ家には帰れる時間なので、先に進む。







次の列車が横浜線直通だったので、
よ う や く 京浜東北線から脱出することができた。

でも別に嬉しくない。
なぜなら、横浜線がおそろしくつまらない路線だからである。

京浜東北線は数駅ずつにターミナル駅があるので、路線を変えるチャンスが複数用意されている。
しかしながら横浜線は橋本までJRの乗換駅がない(私鉄の乗り換え駅はたくさんあるのだが…)。JR限定の乱数鉄道旅には全く向いていない路線だ。
京浜東北線が如何に楽しい路線だったか、失って初めて分かる大切さ。

11.長津田

17:28

長津田。こんなことをしなければ全く降りないであろう駅である。

ここでも、ここまで飛ばされた意味を作るために一生懸命散歩をした。

しかし、何も覚えていない。

ただ、近くにあったマルエツを散歩して何も買わなかったという記憶だけある。

12th. JUDGEMENT

ここからなぜか八王子方面の番線しか出ないというスーパーミラクルが発生した。しかしながら、駅数は出ても「2~4」しか出ないという超つまらない工程が生まれた。

ということで、ここからはダイジェストでお送りします。

横浜線で降りた駅

12.町田

17:51

13.相模原

18:00

14.相原

18:16

15.八王子【終】

18:41

終点、八王子に到着。

もうこれ以上遠くに行くと家に帰れなくなりそうなので、
今回の乱数鉄道旅のゴールは八王子となった。

というか、もう早く帰りたかった。

友人は気がおかしくなっていた。

私も気がおかしくなっていた。

夕飯 ここまで来ておいて、八王子ラーメンではない

帰りの電車で、今日という一日は一体何だったのだろうと考える。

蒲田で商店街をお散歩。
桜木町で赤レンガ倉庫と海上保安庁資料館。
鶴見で銀だこを食べた。
川崎でガチャを引いた。
洋光台でお散歩。
東十条でお散歩。
桜木町で2回目の、西日に傾いた景色を見た。
長津田で感情が無い散歩。

ふむ、列挙すると意外と充実しているように見える。
しかし、実際そこにあるのは「乱数一つで身が飛ばされる絶望感」である。

そして、友人との空気は非常に悪くなった。

言わずもがな、この乱数鉄道旅は「水曜どうでしょう」のサイコロの旅を模倣してやっているものだが、どうでしょう軍団の皆さんはこれを笑顔(?)で完遂しているのだから、ものすごいタレントである。
あれをみんなで成し遂げるには、並大抵の覚悟ではやっていけないだろう。

結論

乱数鉄道旅をやると八王子に飛ばされ、
友人関係が不安定になることが判明した。


八王子に行く際は、ぜひ乱数鉄道旅で関係を不安定にしたい人と一緒に行ってみては如何だろうか。







ルール変えてもう一回ぐらいやりてえな。


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