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遺伝子変異・疾患まとめ - 2638文字

遺伝子変異型

一塩基多型 (Single Nucleotide Polymorphism, SNP)

定義: SNP(一塩基多型)は、ゲノムの特定の位置において1つの塩基(A, T, C, G)が他の塩基に置き換わる変異です。これにより、遺伝的な多様性が生じます。ハプログループは、特定のSNPのパターンによって識別され、母系または父系の祖先を追跡するために利用されます。

頻度: SNPは非常に一般的であり、ヒトゲノムには数百万のSNPが存在します。これらのSNPの一部は、特定のハプログループを特徴づけるものとして重要です。

影響: SNPは、遺伝的特徴(例えば、髪や目の色、病気のリスクなど)に影響を与えることがありますが、多くは無害です。また、ハプログループに関連するSNPは、特定の地理的地域や人々に共通する遺伝的背景を示し、進化や移住の歴史を理解する手がかりとなります。- 数千年単位

微小挿入・欠失 (Indels)

定義: Indelsは、ゲノムの特定の位置における1〜数塩基の挿入や欠失を指します。これにより、DNA配列が変更されます。

頻度: IndelsはSNP(単一塩基多型)ほど一般的ではありませんが、ゲノム全体に広がって存在します。

影響: Indelsは遺伝子の機能に影響を与えることがあり、特にフレームシフトを引き起こす場合に重大な影響を及ぼすことがあります。フレームシフトは、DNAまたはRNAの配列における挿入や欠失がリーディングフレームをずらす変異であり、その結果、正常なタンパク質の合成が妨げられ、不完全または機能しないタンパク質が生成されることがあります。これは、特定の遺伝子疾患や機能不全に繋がる場合があります。

短鎖反復配列 (Short Tandem Repeats, STRs)

定義: STRsは、短いDNAの配列が繰り返し存在する変異です。繰り返しの回数が異なることにより多様性が生じます。
頻度: STRsはゲノム全体に存在し、特に法医学や個人識別に利用されます。
影響: 繰り返しの数の変化が遺伝子の機能に影響を与えることがありますが、通常は中立的な変異です

コピー数多型 (Copy Number Variations, CNVs)

定義: CNVsは、ゲノムの大きなセグメント(数千から数百万塩基対)が重複したり欠失したりする変異です
頻度: CNVsは比較的少ないですが、ゲノムの大部分に影響を与えることがあります。
影響: CNVsは遺伝子の数や機能に影響を与え、病気のリスクに関連することがあります。

一般的な意味での遺伝的多様性 - 多型

多型(Polymorphism): 上記のような遺伝子変異が集まって、個々のゲノムの多様性を形成します。これらは個人の健康、外見、性格など多くの特徴に影響を与えます。
疾患との関連: 多くの遺伝的多様性は、特定の疾患や病気のリスクに関連しています。これらは遺伝子検査を通じて検出されることがあり、医療における個別化治療の基盤となります。

代表的な遺伝子疾患

1. 単一遺伝子疾患

SNP(Single Nucleotide Polymorphism)

嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis): CFTR遺伝子の特定のSNP変異による疾患。主に肺や消化器系に影響を与える。

ハンチントン病(Huntington’s Disease): HTT遺伝子の特定のSNP変異による神経変性疾患。運動制御や認知機能に影響を与える。

鎌状赤血球症(Sickle Cell Disease): HBB遺伝子の特定のSNP変異による血液疾患。赤血球の形状異常により、酸素運搬能力が低下。

Indels(Insertion/Deletion)

フェニルケトン尿症(Phenylketonuria, PKU): PAH遺伝子の挿入や欠失(Indels)による代謝疾患。フェニルアラニンの代謝異常が原因。

筋ジストロフィー(Duchenne Muscular Dystrophy, DMD): DMD遺伝子の挿入や欠失(Indels)による筋肉疾患。主に筋肉の進行性の弱化と崩壊を引き起こす。

2. 多因子遺伝疾患

SNP(Single Nucleotide Polymorphism)および環境要因

アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease): 複数の遺伝子のSNP変異や環境要因による神経変性疾患。記憶や認知機能の低下を引き起こす。

糖尿病(Diabetes Mellitus): 遺伝的要因(SNP)と生活習慣が関与する代謝疾患。インスリンの分泌や作用が異常を呈する。

高血圧(Hypertension): 遺伝的要因(SNP)と環境要因が関与する心血管疾患。血圧が慢性的に高くなる。

3. 染色体異常

CNVs(Copy Number Variations)

ダウン症候群(Down Syndrome): 21番染色体のトリソミーによる疾患。知的障害や特徴的な身体的特徴を伴う。

ターナー症候群(Turner Syndrome): 性染色体のX染色体が1本欠損している女性に見られる疾患。短身や生殖器の未発達が特徴。

クラインフェルター症候群(Klinefelter Syndrome): 男性の性染色体異常(XXY)により、身体的な特徴や生殖能力に影響を与える。

4. ミトコンドリア遺伝病

SNPおよびミトコンドリアDNAの変異

レーバー遺伝性視神経症(Leber Hereditary Optic Neuropathy, LHON): ミトコンドリアDNAの特定のSNP変異による視力低下を伴う疾患。

ミトコンドリアミオパチー(Mitochondrial Myopathy): ミトコンドリアDNAの変異により筋肉の機能が低下する疾患。

5. その他

SNP

色覚異常(Color Blindness): 色を識別する能力に影響を与える遺伝子のSNP変異。主にX染色体上のOPSIN遺伝子の異常が原因。

家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia): LDL受容体遺伝子のSNP変異により、血中のコレステロール濃度が異常に高くなる。

STRs(Short Tandem Repeats)

一部の疾患において、繰り返しの回数の変化が影響を与えることがありますが、特定の疾患に直接関連する例は少ないです。


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