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餘部橋梁物語 第11話 いよいよやって来た国鉄本社
みなさま、こんばんは。
本日も、しばしお付き合いくださいませ。
夜行列車銀河の乗客なった知事一行は、不安の面持ちをもったまま、眠れぬ夜を過ごすのでした。
> 「夢でよかった。」
> 知事は独り言を呟くと、「ありがとう、もう大丈夫だ少し疲れているのかもしれないから、安心してくれたまえ。」
> もう一度、知事はベッドにもぐりこみ、夢の世界へと入っていくのでした。
> 銀河は、ちょうど名古屋駅を出発したところでした。
> さて、国鉄本社の話し合いの結果は・・・・
> さて、この話はまた後ほどさせていただきたいと思います。
と言うところでお話は終わっていましたよね。
知事と秘書を乗せた、急行「銀河」は、その歩を順調に東京に進めていました。
午前7時、個室のドアをノックする音が聞こえます。
白い詰襟を着た給仕【列車ボーイ】が、新聞を届けにきたのでした。
新聞を受け取りながら、秘書は、給仕に次の停車駅で駅弁を買ってくるように命じるのでした。
再び先ほどの年配の給仕が、弁当をもって再び二人が過ごす個室のドアを叩くのでした。
給仕は、弁当のお釣りと引換に僅かなチップを受取ると、足早に部屋を出て行くのでした。
ここで、意外と思われるかもしれませんが、当時の優等列車には「給仕」と呼ばれる人たちが乗車しており、外国同様にチップを渡すのが習慣となっていました。
チップの全面廃止に動いたのは、昭和39年の東京オリンピック開催前であり、給仕という名称から、乗客案内係と呼ばれるようになりました。
話は違う方向に行ってしまいそうなので、軌道修正をさせていただきます。
列車は、9:04分、東京駅に定刻到着、給仕が東京駅に到着した旨を伝えます。
給仕は、慇懃な言葉使いで
「お客さま、列車は定刻に東京駅に到着いたしました、お持ちするお荷物はございますか。」
白い詰襟の制服もまばゆい、中年の給仕が声をかけるのでした。
「ありがとう、このカバンだけだし、大切な書類が入っているから自分で持つから」
知事は、給仕に対して返事をすると、そのまま狭い廊下を歩いて出口の方に向かうのでした。
東京駅16番ホームに到着し列車から降り立った二人には、朝の光がまばゆく感じられました。
現在では新幹線ホームが増えて在来線ホームは丸の内側に押しやられている印象を受けますが、当時は八重洲口側まで在来線ホームが広がっており、さらに八重洲側出入り口は現在では想像もつかないような小さな駅でした。
これが本当に東京駅?そんな小さな駅だったのです。
それが現在では・・・。
知事と秘書は、最後の打合わせをするために丸の内側の東京ステーションホテルの一角でコーヒーを飲みながら最後の打合わせをするのでした。
総裁との面会は10時ですから、時間的には充分に時間があったからです。
知事と秘書は、ホテルの一角から見える本社を見ながら呟くのでした。
「なんとも、威圧感のあるビルだなぁ。」
当時、国鉄本社は丸の内の最も一等地の場所にどんとその居を構えており、陸の王者として君臨するには充分すぎるほどの威圧感をもって存在していました。
元鉄道省の庁舎として使われており、昭和38年に完成する国鉄本社の新館は未だ建設されていませんでしたので、戦災を経験した本館の威容は周囲を圧倒するのに充分な建物でした。
国鉄本社は、戦時中はアメリカ軍の爆弾攻撃に耐えるために屋上に数センチの鉄板を埋め込んで防弾仕様にしたとかといった話を聞いていましたが、初めて見る国鉄本社ビルは、東京中央郵便局が多くの人が出入りする関係で少しは入りやすい雰囲気をもっているのに対して、威圧的な言いかたを変えれば安定感のある建物にも思えてくるのでした。
これから始まる対談に、緊張を感じながら知事と秘書はその歩を進めていくのでした。
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