餘部橋梁物語 第10話 知事上京編 第2話
> さて、出発当日、大きな責任を胸に感じながら知事一行は銀河の乗客となるのですが、このお話は明日以降にさせていただきたいと思います。
前回は、兵庫県知事は国鉄総裁に会うために、名門急行「銀河」1号車の客となったのですが、この車両は元々国鉄が外国人観光客向けに作ったこともあり、カーテンは西陣織、さらに室内の壁は桜の木を使った豪華な内装でした、しかし、アメリカ人にはこの仕様が気に入らなかったらしく、その後作られたマイネ41(現在の開放式A寝台車の原型)に至っては、淡い緑の塗り潰しの内装を要求されたそうで、国が変われば文化も変わることをまざまざと見せつけられたそうです、となりに連結されている車両がその車両なのです。
さて、区分室に収まった知事と秘書は荷物を室内に置くと、下段の寝台に腰を下ろして遅い夕食を駅弁ですませるのでした。
昭和31年の時刻表 神戸21:10発 東京は翌日の9:03着となっている。
列車は既に三ノ宮を離れ、一路大阪に向かって走っていきます。
時折聞こえる、物悲しい汽笛を聞きながら、遅い時間ではありましたが、もう一度秘書と打合わせをするのでした。
大阪を過ぎて、京都のつく頃、流石に多少は眠る必要があろうということで、二人は床につくことにしたのです。
秘書は、
「失礼致します。」
と断って、上段寝台の客として、知事は下段のベッドに横になりやがて夢の世界に運ばれるのでした。
夢の世界で知事はうなされていました。
それは、国鉄総裁に剣もほろほろに、断られている夢を見ていたからです。
「国鉄では、第1時5ヵ年計画の初年度であり、老朽資産の取替えなど戦争で酷使した車両などを更新する必要があるので、そう言った駅の請願まで聞いていられませんよ。」
「人も乗らないような駅を作るのであれば、もっと輸送力の逼迫している東海道線の改良に努めますよ。」
「今日は忙しいので、この辺で帰ってくれるかな。」
全く取り付く島もありません。
知事は大変困ってしまい、「そこを何とかお願いします。」と懇願するのでした。
よほど大きな声だったのでしょう、慌てて秘書が、知事を起こします。
「どうしたのですか、大丈夫ですか、かなりうなされていたようですが。」
秘書に起こされ、夢を見ていたことに気づくのでした。
「は、夢か。」
「夢でよかった。」
知事は独り言を呟くと、「ありがとう、もう大丈夫だ少し疲れているのかもしれないから、安心してくれたまえ。」
もう一度、知事はベッドにもぐりこみ、夢の世界へと入っていくのでした。
銀河は、ちょうど名古屋駅を出発したところでした。
さて、国鉄本社の話し合いの結果は・・・・
さて、この話はまた後ほどさせていただきたいと思います。
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