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基礎医学研究者が大幅に増えないのは、仕方がないことだ

医学は大きく、基礎医学臨床医学の2つに分けられます。医学部に入り、多くの学生は、臨床医の道を目指すことになります。一方で、一部の学生は基礎医学の道を志し、研究者になりますが、その数は非常に少ないのが現状です。「優秀な医学生こそ、基礎医学の道に進むべきだ」という高尚な意見は十分理解できますが、理想論にすぎない側面もあると思います。

基礎医学研究者の待遇は悪い

厚生労働省の調査によると、臨床医の平均年収は1300~1400万円です。一方で研究医の平均年収は700万円と言われています。単純に計算すると半分の年収なのです。しかも、この数字はアルバイトによる収入を含めた額で、実際に所属している機関からの報酬は約400万円程度です。世の中お金だけではないのは事実ですが、生活していくためにはきれいごとばかり言ってられません。これほど年収に差があれば、基礎医学研究者を目指す人が少ないのも十分理解できます。

基礎医学の面白さをあまり教えられない

医学部では基礎医学→臨床医学の順番で講義が行われます。基礎医学には、解剖学、組織学、生理学、薬理学、病理学などが含まれますが、これらを約1年かけて学ぶことになります。もちろん、臨床医学につながる非常に重要な内容ではありますが、臨床とは(一見)かけ離れた内容と非常に膨大な量の知識から、「基礎医学が好き!面白い!」と思う学生は非常に少ないようです。また、基礎医学研究を体験できるような実習期間は、通常1~2カ月程度設けられています。基礎医学研究の真の醍醐味は、「未知の真理を解明する」ことですが、これほど短期間でその面白さを教えるには無理があるでしょう。

多くの医学生は臨床医を目指して医学部に入学している

多くの医学部生は、中高時代から比較的頭がよく、論理的に考える力が身についています。医学部に入るような学生(特に国公立)は、知的好奇心が強い傾向にあり、基礎研究にも大いに興味を持つでしょう。そして、このような学生こそ、研究医に向いているとも言えます。私もそうでしたが、多くの学生は、大学に入る前の段階で臨床医以外の道を良く知りません。そして、大学に入ってから、研究医の道があるのを知ったとしても、既に決めた目標から大幅な路線変更するのにはそれなりの勇気が必要なのです。特に、臨床医と比較した時の待遇の悪さをはじめとした、さまざまな因子が弊害になって、研究医への転向は難しいものとなります。

ならどうすればよいのか?

私の個人的な見解ですが、臨床医を目指してきた医学生に、路線変更を期待するのは困難だと思います。もともと、何らかの研究者や学者を将来の職業として希望している高校生を対象に、基礎医学の面白さややりがいに関する普及活動を行うことで、基礎医学研究者を増やすのが良いのではないでしょうか。あるいは、研究の成果に合わせて、誰もが欲しがるような報酬を設定するのも一つの手だと思います。

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