2023サンフレッチェ広島全選手採点パート1 GK&CB編
はじめに
2023年のJ1リーグも終わりました。降格が1チームのみでACLがシーズン終盤に差し込まれるという、コロナに振り回された2020―21シーズンとまではいきませんがかなりイレギュラーな年となりました。
本題に入る前に、今シーズンを少し振り返りましょう。結果はヴィッセル神戸の初優勝。非常に強いチームでしたね。快進撃に加えイニエスタの退団もあった神戸、その神戸と前半戦に首位争いを演じた名古屋グランパス、ディフェンディングチャンピオンとして最終的に神戸と優勝を争った横浜F・マリノス、ACLを制したほか様々な話題に事欠かなかった浦和レッズ、ジェットコースターのようなシーズンを過ごし結局最後まで残留を争った1チームとなってしまったガンバ大阪、クラブ史上初のタイトルを獲得したアビスパ福岡、昇格初年度でポゼッション率もアクチュアルプレーイングタイムもリーグ上位につける魅力的なサッカーで一時上位争いを演じ、昨季トップ3のチーム相手に5勝1分という結果を残したアルビレックス新潟あたりが、今季のJ1で主役となってきたチームでしょうか。
そして我らがサンフレッチェ広島もそのうちの1チームに数えられるでしょう。開幕から3戦白星から遠ざかりながらもその後の8試合で7勝を挙げて首位争いに絡むも、満田が負傷により欠場した以降の11試合で2勝2分7敗と急ブレーキ。その間上位を争う神戸や名古屋、浦和といったチームとのアウェイゲームにことごとく敗れたこともあり、夏には優勝戦線から実質的に脱落してしまいます。
しかしその夏に、森島を引き抜かれるとともに加藤&マルコスを獲得。いずれもJ1では高額な移籍金が発生したとのことに加え、3選手ともJ1でインパクトを残してきた主力クラスの人材。低迷していた時期でしたが移籍市場の主役を飾ります。
相棒の満田の不在中に奮闘を続けた森島の移籍は確かにダメージももたらしましたが、同ポジションで使われることになった2選手がもたらしたものも大きく、加えて幸運にも(そして満田の頑張りにより)満田が早期に復帰できたこともあり、以降のサンフレはまたも躍動。11試合で8勝3分け1敗という好成績でシーズンを終え、アジアへの可能性も残す2年連続の3位でフィニッシュしました。
満田が出場した23試合で獲得した勝ち点は50を数え、開幕戦の誤審を含めたらればを言いたいサンフレサポーター・ファンも多いはず。しかし難敵とのアウェイゲームで完敗を繰り返したのは事実ですし、神戸もマリノスも(当然他チームも)怪我人に悩まされたのは同じです。だから3位はチーム力として妥当な結果と言い切るべきだと思いますが、一方でJ1で3位に収まることを「妥当」と言えるほどに、今季も選手たちは奮闘してくれました。
そんな誇るべきサンフレの選手たちの今シーズンの採点を行ってみたいと思います。採点と言いつつ点数はつけません。一応補足しておきますが、天皇杯の2試合以外は全てフルタイムでチェックできております。
パート1の今回はGKとCB陣です!順番は今季背番号が若い順となっております。ポジションの割り振りは主観ですので、この選手いないじゃん!と思った方はすみません。続編をお待ちください。
GK
林卓人
今季で引退を発表した守護神。チームのラインが上がったことと大迫の成長、そして自身の怪我が主要因となってここ2年はメンバー外ばかりでしたが、裏を返せば2年前までは十分な存在感を示し出場機会を確保できており、すごいとしか言いようはありません。今季はホームラストマッチにわずかな時間出場したのみなのでプレーについては語れませんが、大迫の成長にも寄与していたことは間違いないと思います。新スタジアムでのプレーを観られないのは残念ですが、レジェンドを良い形で送り出せて良かったですね。
引退後もサンフレに関わってもらえるとのことで、背番号1を引き継いだ大迫や、その大迫のステップアップも視野に入る中で奮闘する田中らユース生ら次代の守護神候補に良い影響を与えてほしいですね。長いキャリアお疲れさまでした!
田中雄大
J2トップレベルの実力を持つとして加入してきましたが、公式戦出場はなし。申し訳ないのですが練習や昨季までを含めまとまった時間でのプレー映像を確認できておりません。大迫の牙城を崩すことは困難を極めるでしょうが、タイミング的にも大迫がいなくなることを見込んでの獲得でしょう。佐々木や塩谷がますます歳を重ねることを加味しても、ディストリビューションの質についてはより求められる部分になるのではないでしょうか。林は引退してしまいますが、大迫や川浪と切磋琢磨して成長を続けてほしいですね。
川浪吾郎
カップ戦では出番を得ましたが、今季のリーグは出番なし。それでも明るいキャラクターは相変わらずで、チームが上手くいかない時期にも発信を続けてくれました。外国籍選手や若手選手、そして大迫にとって非常に大きな存在になっているのではないでしょうか。プレー面でも明確に気になる面はありません。言い方は悪いですが、セカンドキーパーとしては本当に申し分ない役割を果たしてくれています。
よりピッチと客席との距離が近づく新スタジアムでは、試合中に様々な方法でコミュニケーションを絶やさない川浪によりスポットライトが当たるかもしれませんね。
大迫敬介
大きく成長した昨季に続き、今季もより頼りがいのあるキーパーへと階段を順調に登っている印象です。ミスも減ってキーパーとしての能力に関し死角は特になく、得意にしているであろう1対1の対応、積極性と安定性を兼ね備えてきたハイボール処理、左右両足でボールを扱い蹴れるスキルと、チーム方針的に増えるプレーも得意としています。ビッグセーブも度々ありましたし、気になるところと言えば試合終盤にかけてタッチラインを割るキックが増える傾向にあることくらいでしょうか。
そして代表での経験も積みました。強豪ドイツ戦でまさかのスタメンを飾ると、ドイツのハイプレスに怯まず下から繋いで剥がすことに貢献しました。サンフレではセーフティに蹴る場面が目立ちますが、体調不良者が続出し空中戦に強くない棚田が最前線に入った試合ではドイツ戦と同じく下からの作りに傾倒しているように感じましたし、チームからの要請も含めての選択なのかもしれません。どうであれキック力含め足元のスキルには相対的に優れた選手でしょうから、この部分はより活かせると良いかもしれませんね。
で、何と言ってもPKストップです。プロキャリアでの公式戦初ストップが代表戦という離れ業をやってのけました。止めたことがなかったことはこの初ストップ後に自ら語っていましたし、苦手意識があったことは間違いないので本当に良かったです。今季は2つのトーナメントでともに早期敗退してしまったため機会には乏しかったですが、リーグ戦での機会含めタイトルに向けてPKは避けて通れないはずなので、自信をつけた上でさらなる向上に期待です。悔しい思いをしたであろう昨季のリベンジをできるだけ早期に果たしたいですね。
背番号1を受け継ぎ実質的な残留宣言をしてくれた大迫。あと何年観られるかわかりませんが、年々増している印象の気迫もより前面に押し出し、チームを支えてほしいところです。
CB
住吉ジェラニレショーン
頭角を現した昨季を経て飛躍への足掛かりにするシーズンになるかと思いましたが、苦しい1年になりました。まずは山﨑の存在ですね。荒木に比べて動ける3バック真ん中としての立ち位置もあるかと思いましたが、キックの精度が抜群で空中戦含め人に強い山﨑の方が適性があり、このポジションでの起用はなし。
ワンチャンあるかと思った右WBには中野が定着したこともあり、残るは本職であろう右ストッパー。野上の移籍でまあチャンスはあるだろうと思っていましたが、塩谷が割と長い期間離脱し、6試合連続でスターターの機会を得るという大チャンスが到来しました。
結果的にはその期間で信頼を落としたのか、塩谷の復帰後はメンバー入りもままならなくなってしまいました。運ぶことができずWBとの関係含め自ら苦しい場所へとボールを進めてしまうことが目立ち、得意にしているであろう守備面でも全体的に粗さが目につきます。スピードはありますが機動力や守備の駆け引きの技術にはやや欠ける印象。WBのキャラクターと能力の問題があったことや、同時期に満田も離脱し、雑にボールを入れても時間を作ってくれる選手が森島くらいしかいなかったこともややアンラッキーでしたかね。キックは悪くないものを持っているため、運んで動かしながら色んなところを見れるようになればスタメンクラスにはなれそうですが…
中野は最後までWB起用が続き、山﨑は山﨑でストッパーにするには現状厳しいと思います。今季は昨季以上の出来だった塩谷もいつまでやれるかわかりませんし、もう若くはないとはいえ住吉が色んなことを学んでもう一つ階段を登ってもらわなければ、チームの未来も明るいものにはならない気がします。まああとは、中野のところでも書きますが中野と入れ替わってみるという道ですね。奮闘してくれた中野ですがWB向きとはどうにも思えませんし、逆に住吉はやることを制限してあげた方がいい気がします。今季は昨季以上に増えた逆サイドからのクロス→WBがフィニッシュという形にも、住吉は適応してくれそうですし。ポテンシャルも監督はじめスタッフからの期待も高いことは間違いないので、来季はより長く住吉のプレーを観たいですね。
山﨑大地
ユース卒で大学を経てサンフレに帰還したルーキー。ロングボールの精度が高く、出番を得たカップ戦では積極的にフィードを供給して強みを発揮。空中戦や対人の強さも見せて序盤戦からアピールに成功します。
そして夏前くらいの時期に、リーグ戦を戦うメンバーの中でアンカーポジションとして起用されます。カップ戦ではこのポジションでゴールも決めましたが、正直いまひとつな出来でしたね。360度のプレッシャーでボールを受けることは得意ではなさそうですし、そもそもDFラインに降りてきちゃいます。アンカーポジションはボールを受けられずとも立っているだけで果たせる役割があるので立っていてほしいのですが(ロドリとかそうですよね)、青山含め今サンフレにいるボランチの大半はこれができません。なので指導が悪いというのもありそうですが。プラスチームとしても論外な出来に終わった4バックシステムのせいというのもあるでしょうが、保持時は山﨑がいてもいなくて10人でも変わらないんじゃないかというレベルで効果的に絡めませんでした。まあこれに関してはできないことをやらせる側が悪いです。
以降は立ち位置的にどうなのかなという感じでしたが、終盤戦には荒木がいるにもかかわらず2試合スタメンで出場しました。荒木に累積リーチがかかる中で屈強なFWがいない鳥栖と札幌相手という限定された状況での起用とはいえ、丸々4年以上絶対的な存在である荒木を差し置いて起用されるというところでスタッフからの信頼も厚いのでしょう。その2試合ではキックという武器は存分に発揮した上で非保持においてもしっかりとプレー、クリーンシートに貢献しました。春先に比べ対人守備でもより積極的に仕掛けて強く当たっている印象でしたね。0か100かのプレーが目立つことは少し気になりますが、ここら辺はやられて成長していくというのもあるでしょうしプレーを重ねるほかありません。現に荒木もやられながら成長してきましたし。
課題はボールを運ぶところでしょう。荒木に比べりゃできるところではありますが、まだ足りません。ここができないことが左右のストッパー起用に至らない原因ではないでしょうか。5バック気味に選手が並んでいるサンフレでど真ん中をやっていると目立ちませんが、4バックのCBを担当したアジア大会ではこの弱点を露呈し、その場でボールを手放しハメパスを繰り返していた印象です。相手が来ないならしっかりとボールを動かし、効果的なところでフィードを繰り出せると彼の武器はより活きるものになると思います。
早生まれなおかげでギリギリパリ五輪世代の山﨑。実質的な2軍メンバーで臨んだアジア大会ではアピールに成功し、その後の世代別代表にも選出されるなど間違いなく代表候補の一人です。大卒→プロ2年目の年にオリンピックがあるというのは非常に有利ですので、今季培ったものを活かして来季は本気でオリンピックを狙ってほしいですね。
荒木隼人
強いセンターバックです。空中戦の強さだけならリーグナンバー1のCBですね。とにかく強い。エリア内のマークを外すみたいなこともあんまりないですし、クロス含め長いボールには本当に強いです。
シュートブロックも変に足を投げ出すことなく、冷静にできるようになってきた印象です。オウンゴールがやや多めなのは足の出し方に無理があることと無関係ではないはず。大迫は反応だけでなく足をしっかり運んでセーブできる選手ですし、無理くり足を出さずにコースを閉じてシューターの選択肢を奪うことをより意識するとエリア内の処理は無敵になりそうです。この辺は塩谷なんかも本当に上手い。
まあ、強みが明確なだけあって弱点も明確です。とにもかくにも運べない。ボールを蹴るのは下手だとは全く思いませんし、判断含め弱点にはならないでしょうが、ボールを動かすのは本当に苦手ですね。荒木→左右のストッパーやボランチという動かし方で状況が好転しているところはほとんど見ません。3バックの真ん中で鎮座できているうちは目立たないのですが、2CBになると途端にやばくなってきそうです。これは山﨑も同じ。
4バックで2試合ですかね?やりましたが、この2試合では荒木のビルドアップ面というよりは広い場所に引っ張られてドリブラーと地上戦をやらざるを得ないという状況に持ち込まれていたことの方が目立ちました。この辺が特に苦手なようには見えないのですが、一番の持ち味が活きない形でかつ機動力が高いわけではないので、荒木である意味を考え直してもいいくらいだったと思います。ボール保持非保持の両方で、3421というサンフレの基本のやり方に本当にハマっている選手ですね。
山﨑の台頭はありましたが、まあ何かが起きない限りは来季も断トツのファーストチョイスになる選手ではあると思います。大迫や山岸といった、強さに加えて競り合いの上手さも兼ね備えたストライカー相手には(相手がすごいので仕方ないのですが)後手を踏んでいたため、この辺相手にも圧倒するか、弱点を伸ばしていくか。A代表を狙うなら、少なくともどちらかは達成したいところですね。
佐々木翔
近年に引き続き素晴らしいパフォーマンスを見せてくれましたし、優秀選手賞への選出にも異論はありません。しかし、ややその絶対的なパフォーマンスに陰りが見えてきた1年であったことは否定しがたいのではないでしょうか。
相手を引きつけてからリリースしたいという意識が強く、ここの部分をしっかりやれるボランチが現状あまりいないということもあってこれ自体は素晴らしいことなのですが、持ちすぎて判断が遅れたりリスキーな選択をしてしまったりといった機会は増えた印象です。ボールを前進させるというところに関しては、今季は同じく得意な塩谷には後れを取ってしまいましたね。まあ競い合うところではないですが。
空中戦の強さは相変わらずですが、地上戦では圧倒的な強さを誇るとまでは言えない場面もありました。最も佐々木に近い左WBに夏場以降志知が定着したのも、佐々木に守備面で絶対的な信頼が置けなかったことが影響していると思います。
まあもっとも、代えは利きません。満田が復帰して以降のサンフレは1試合だけ敗北を喫しましたが、その1試合は佐々木が欠場したアウェイ京都戦。代役に東を据えたチョイスには疑問が残りますが、高さと強さのある原と山崎に蹂躙され左から効果的にボールを前進させられず、佐々木の不在を感じさせられた90分でしたね。
先ほどは比較した塩谷も、上位陣との連戦が続く大事な時期に負傷で離脱していて、フル稼働はできていません。大きなけががなかった昨季も塩谷は終盤にパフォーマンスを落としており、ほぼフル稼働した上でこのハイパフォーマンスですから、佐々木はやはり偉大ですね。繰り返しになりますが、優秀選手としてアウォーズに出るに値する1年であったことは間違いありません。
そもそも年齢的に、パフォーマンスを1年間維持することも難しい段階に差し掛かっていると思います。なのでやはり後継者問題ですね。左右のストッパーは順足の扱いに長けている必要があると思うので、佐々木のような両利きの選手は例外として左利きで探すとなると相当な困難がつきまといます。だからこそ東が使われたと思うのですが。今後3年間くらいは本気で「次」を探すフェーズになると思いますが、佐々木も当然試合で活躍してもらいつつ、後継者の育成にも一役買ってほしいですね。あといずれ来るキャプテン移譲の時に備え、チームリーダーとしても後輩たちに色んなことを伝えてほしいです。
塩谷司
期待値以上の活躍を見せてくれた昨季をさらに超えてくれました。個人的には優秀選手どころかベストイレブンに選ばれてもおかしくない出来だったと思います。
フィードの質は相変わらず、自分で持ち出す意識が向上したのかその機会も成功数も増加。今季主に右WBを担当した中野や満田、越道といった選手はいずれも足元の技術に優れ、裏に落とすボールより足元でボールを受けオンザボールでプレーしたいタイプだったことも関係してか、外のWBと中の塩谷という関係性でボールを保持し前に進めていました。そしてWBの裏が減ったことで、前の3人に直接ボールを入れる機会は増えましたね。ボールを持ったらまずサイドに…という意識がサンフレの選手たちは高く、この点は手段の目的化の感もあって私はあまり好きではないのですが、ワイドが相手のDFラインを広げその隙間をシャドーやFWが突くという形にもっていけるのであればそれもアリ。塩谷のキックではこの形がすごく活きます。狭いエリアで受けて前を向くのが得意な森島に比べ、その点はあまり得意ではないものの直接的にシュートやクロスに繋がる形でボールを引き出す技術に長けている加藤がシャドーに入るようになったことも、塩谷の良さを活かすことに繋がっている気がします。
佐々木と同様に後継者には悩まされそうなパフォーマンスを見せてくれました。林もインスタで言っていましたが、ここ数年、特に昨季と今季の佐々木&塩谷のパフォーマンスは本当に圧巻です。今季はまとまった試合欠場してしまい、その間チームの勢いが落ちたこともあり塩谷も責任を感じているかもしれませんが、佐々木にしても塩谷にしても、年間フル稼働を期待するのは年齢的に酷でしょう。リーグ戦の試合数も増える来季以降、この2人が100%で試合に出られる機会を増やせるように、そしてあわよくばこの2人を控えに追いやれるように、他の選手には奮起を見せてほしいですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?