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話のカベウチ No.1「親ガチャ」

※話の自己練習(カベウチ)のために始めたYouTubeチャンネルで使った原稿のアップです。思いつくままのテーマでテキトーに(肩の力を抜いて)話していく予定です。

今回のテーマは、最近話題の「親ガチャ」です。

9/20(月) 19:14配信のABEMA TIMESの記事、
“親ガチャに外れた”に臨床心理士『客観的に見ればそんなに多くないと思う “子ガチャ”への視点も』
を読んでいろいろ思うことがありました。

「親ガチャ」「ガチャ」という言葉を知らない人のために──。
インターネットゲーム内で行われる福引きのようなものを「ガチャ」といいます。
このガチャでどんなアイテムがあたるかによって、そのゲーム内での強さが結構決まるんですよね。福引だから、もちろん自分で結果は選べない。
「親ガチャ」というのは、そこからとったインターネット上のスラングで、「親は選べない」「いい親にあたらなかったから自分の人生はもう決まった」といった自嘲的な意味で使われることが多いです。

なんか、この言葉、すごく心がぞわぞわします。
格差論でもなく、運命論でもなく、自嘲と諦念と現代的なシニカルさがまざった、嫌な言葉です。

親で決まるのかな。。

「親ガチャ」という言葉、ここ10年くらい児童虐待や、毒親という言葉がクローズアップされた流れの延長のように思います。
子どもの貧困や社会的格差が社会問題となっていることとも関連している。
遺伝子至上主義や優生思想につながる危険な言葉です。

こういう言葉を使う人に、こんなことを言っても響かないとは思うのですが、本当に親で決まるのか。親が無茶苦茶だったり、極貧の家庭で生まれたりしたのに、成功した人について、少し調べてみたので、紹介したいと思います。

◆「親ガチャ」なんて関係ない! 
  ──大変な境遇から成功した人たち

豊臣秀吉(とよとみ・ひでよし)

豊臣秀吉

皆さんご存じですよね。調べるまでもないです。貧しい小作の農家に生まれて、幼くして父をなくし、養父からいじめられて家を追い出されました。預けられた寺を飛び出してから、青年になってお屋敷奉公するまでの経歴が全く分からないんですよ、この人。ここに、この人の影を紐解く謎がありそうな気がします。そんな生い立ちから、天下人です。


フルール・ペルラン

フルール・ペルラン

この人、知らなかったです。現在48歳の女性。フランスの政治家で2014年から2016年まで大臣もやったんですね。韓国で生まれて、生後3~4か月で道端に捨てられ、孤児院に預けられたんですが、その後、運よくフランス人夫妻の養子になってパリ政治学院、国立行政学院を卒業したエリートです。すごい!


田端義夫(たばた・よしお)

田端義夫

若い人は絶対に知らないでしょう。ド昭和の歌手です。歌謡曲ですね。
1919年生まれだから、戦中世代。「かえり船」とかが代表曲だそうです。
3歳の時に父を亡くし、大正14年(1925年)に一家とともに大阪へ。小学校3年の半ばで中退です。小学校を出ていないんですね……。しかも、赤貧のため慢性的な栄養失調だったそうです。しかもトラコーマにかかり徐々に右目の視力を失ってしまいます。

3歳(!)から名古屋の薬屋やパン屋、鉄工所などで丁稚奉公。夜逃げ続きの極貧生活母に楽をさせたいと歌手を目指したとのこと。

田端義夫さん、戦後も映画などで活躍されて、何となくは知ってましたよ。この世代はすごいですよね、根性が違う。そんな凄惨な生い立ちなのに、田端さんは柔和な顔が素敵です。いろいろ「経た」んだろうなーというお顔。
うちの祖父母や両親も結構すごい生い立ちなんですよ。本当に、生きるか死ぬかの、昭和サバイバルって感じです。


孫正義(そん・まさよし)

孫正義

今の日本を代表する経営者の1人、ソフトバンクの孫さんです。孫さんの生い立ち知らなかったですが、お名前から在日韓国人の方だろうなと思っていました。ちょっと調べてみると、幼少期に日本人の子どもたちからすごい差別を受け続けていたんですね。幼稚園のときに石を投げられて頭から血を流すこともあったそうです。

家も最初は貧しくて、無番地でトタン屋根の、いわゆる典型的な朝鮮部落だったそう。ヤミ焼酎作りや養豚によって生計を立てていたそうです。
映画「パッチギ」に出てくる世界ですね。映画よりももっと前だから、さらにひどい状況だったと思います。
孫さん、16歳でアメリカに行ったことも、今回初めて知りました。孫さんのその後から現在までの人生をちょっと調べてみたくなりました。


マルコムX

マルコムX

キング牧師にならぶ黒人の公民権運動の指導者ですね。
スパイク・リー監督の映画『マルコムX』のヒットで、日本でも有名になりました。
そのもとになった『マルコムX自伝』、僕も当時買いましたよ。

お父さん、牧師さんだったそうですが、白人のリンチで殺されたんですね。そして、お母さんは精神病になってしまい、精神病院に入院。マルコムは里子に出され、やがてニューヨークのハーレムで悪の道に染まります。
その後、強盗罪で懲役刑になって、刑務所でイスラム教に出会い黒人解放運動家になる。すごい人生です。今でも世界中の黒人のヒーローの1人ですよね。


朱元璋(しゅ・げんしょう)

朱元璋

お隣の中国から。中国の明王朝の初代皇帝です。この人、前からすごく気になっていました。とても残忍な人で、山賊の頭目くらいからのし上がって、最後は中国の皇帝になるんです。そして、その後、一緒に戦ってきた仲間たちを次々と殺してしまう。功臣の粛清ですね。とくに中国の歴史には多い印象です。ただ、奥さんがとても慈悲深いできた人で、二人は信頼し合っていたなんて、そんな人間らしいエピソードもあります。

この人、肖像画が2つあって、いかにも皇帝らしい気品あふれる顔の肖像画と、すごく醜悪な残酷そうな顔の肖像画があるんです。残酷なほうが本当の姿だとか。

朱元璋(裏)


戦乱の時代に生まれて,家族は全員餓死してしまい、朱元璋だけは寺に身を寄せて生き延びたそうです。でもその後、ずっと乞食同然の生活を送り、反乱軍に加わってめきめきと頭角をあらわす。

日本には豊臣秀吉、中国にも漢王朝を起こした劉邦などがいますけど、この人たちよりももっと悲惨な生い立ちで、全世界の皇帝・王様のなかで最も悲惨な境遇から身を起こした人だそうです。
確かに、他に思いつきませんね。その分、すごく性格が歪んだ、残酷な人ではありました。でも、300年近く続く明王朝の初代皇帝。モンゴル人が建てた元王朝末期の混乱を収め、漢民族による中国を取り戻し、国の発展と安定をもたらした。これ以上の成功はないです。


細木数子(ほそき・かずこ)

細木和子

最近はご高齢ということもあってテレビに出なくなりましたが、一時期は冠番組を持つほどの人気の方でしたね。六星占術という独自の占いで一世を風靡した人です。何星人とかいうやつですね。以前は必ずコンビニに本が置いてありました。今は娘さんが後を継いで前面に出ているかな。

1938年、昭和13年のお生まれ。日本が戦争に突入する時期ですね。お母さんが渋谷でバーをされていて、そこで生まれたそうです。お父さんは半分ヤクザの右翼の活動家の方ですが、あまり夫婦関係の実態はなかったらしいです。詳しくは言いませんが、大変な生い立ちで苦労された様子。余計なことを詮索したライターさんがいましたけど、そんな状況からあそこまで成功されたんだから、すごいでいいじゃないかと思いますけど。

あと、本などに使う宣材写真を細く加工しすぎなのは、気になります。左右比70%縮小とかになっているんじゃないでしょうか。
そのほか、漢学者で政治の裏世界で暗躍された安岡正篤(やすおかまさひろ)さんとの絡みなどがありますけど、やめておきます。


ビリー・ホリデイ

ビリー・ホリディ

1950年代のアメリカのジャズ全盛期に活躍した女性ジャズ・ヴォーカリストです。
女性ジャズ・ヴォーカリストの御三家の1人らしいですね。後の2人は、サラ・ヴォーンとエラ・フィッツジェラルドとかでしょうか。
音楽雑誌「Q」が選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガーで12位だそうです。すごい。

僕もiPhoneに入れていますが、そんなちゃんと聞いてないな。フィッツジェラルドのほうが好きですね。でも、有名な人です。ジャズだけじゃなくて、全ジャンルのシンガーで12位ですからね。

19歳のお母さんと17歳のお父さんの間に生まれたそうです。何も知らない若者同士のカップルに子どもできてしまう。よくあるパターンではあります。お父さんはジャズ・ギタリストだったらしいんですが、子どもを認知すらせず、母親は生活に困り、売春を重ね……ニューヨークのスラムでのそんな生活のなかで育って、世界12位に選ばれるシンガーになりました。
人種差別や薬物依存症と闘った、44年間の壮絶な人生でした。まだ観てませんが、何度も映画になっていますね。


高橋一生(たかはし・いっせい)

高橋一生

今、42歳! もうそんなになるのか。そんなに歳が変わらないじゃないか……。というか、この違いにショックです。
そんな話は置いておいて、お母さんは18歳で一生さんを出産、その後、結婚と離婚を繰り返し、結構な毒親だったそうです。子育てをほとんどしなかったようですね。兄弟たちのオムツ替えなどを子どものときから一生さんがやっていたとのこと。お母さんとは、彼女が亡くなるまで不仲だったそうです。

1990年、10歳のときに映画『ほしをつぐもの』でデビュー。その後の活躍はご存じのとおりです。あの爽やかすぎる風貌の陰には、そんな生い立ちがあったんですね。
この前、吉川ひなのさんの生い立ちも壮絶だったとテレビでやってましたが、芸能界にはそういう人、まだまだかなりいそうですね。


下村博文(しもむら・はくぶん)

下村博文

政治家ですね。自民党衆議院議員、当選8回。
文部科学省との繋がりが深い印象ですね。この人、僕は結構好きで、首相とかよいと思うのですが、なかなかむずかしそうですね。今回の自民党総裁選挙に出馬の意欲を示していましたが、菅さんに恫喝されて、結局出馬できませんでしたね。

生い立ちから、もっと人気が出ていいと思うんですけど。お話もうまいし、明るいし、人柄も良さそうだし。

下村さんは、小学校3年生のときにお父さんがオートバイの事故でなくなって、生活が暗転。母子家庭ですごく苦労されています。交通遺児育英会の奨学生の第一期生ですよ。奨学金をもらって早稲田大学まで進み、卒業後は塾を経営して、その後、政治家になります。大臣2回、今は政務調査会長だし、よくぞここまで来たなと尊敬します。
政策はよく知らないんですけど。


アンミカ

アンミカ

テレビなどで大人気のアンミカさんです。今の肩書きはなんなんですかね。
この方は在日韓国人ではなくて、韓国生まれなんですよね。
貧しい長屋で5人兄弟の家庭で育ったそうです。ご両親がキリスト教会の手伝いで、アンミカさんが3歳のときに来日したと書いてありました。ウィキペディア情報ですけど。

来日してからもずっと貧しいなかで育ったそうですが、それがパリコレモデルになり、幸せな結婚もして、今ではテレビでも大活躍。観ているだけで、明るくなりますね。

そういえば、デヴィ夫人も取り上げればよかったと、なぜか今、思い出しました。
僕の頭の中では、デヴィ夫人とアンミカさんは、大きな同じ系統のグループに属するのかもしれません。


ムロツヨシ

ムロツヨシ

ようやく最後。最後は、今、人気絶好調の個性派俳優、ムロツヨシさん。
最近まで生い立ちが大変だったなんて、知りませんでしたよ。4歳で母親が家を出てしまって、大工さんだった父親はすぐに子どもたちを放置。結局、お姉さんと一緒に鮮魚店を営む叔母が育てたとのことです。

最後のお母さんの記憶は車のトランクに荷物を詰める姿だったとか。親の愛情を全く知らないんですね。ムロさん、めちゃくちゃ明るいですけど、心に傷は残りますよね。

幸いにも叔父さん叔母さんはとても優しい人で、従兄弟ともよく遊んだとのことです。でもやっぱり、居候生活。「嫌われたら終わり」という防衛本能から、とにかく明るくしていたとのこと。なるほど。

勉強はがんばったようで、東京理科大学に入学。中退して俳優を志し、遅咲きでしたが、今ではドラマや映画にひっぱりだこです。本当に、人に歴史ありですね。

◆これらの人たちの成功から何を学ぶか

ここまで、スタートは大変なだったけれど、つまり「親ガチャ」には失敗したかもしれないけど、その後、自分の力で成功した人を紹介してきました。ちょっと調べただけでこんなにいる。多分、もっともっといるでしょう。企業経営者とか、スポーツ選手とか、芸能人とか、たくさんいそうです。
結局何が言いたいかっていうと、生い立ちや親じゃないってことですよ。
そりゃ、もちろん、とても貧乏、毒親、ものすごいハンデではありますけど、かえってそれが強さの源になることありますよね。

アメリカかどこかで行われた後追い研究で、貧しい家庭の子の多くが高い学歴を得られなかったという結果になったという報告があって、「親ガチャ論」でよく引用されていますけど、それは確率的にはそうかもしれないけど、そのデータがどんな分布を示しているかわかりませんよね。
富士山型の分布で中央値が平均値を近い場合もあれば、ぎざぎざの分布で、とても多様性があるのかもしれない。学歴が低い、学歴が高いところの二峰性かもしれない。

平均値は所詮、平均値です。

修正進化論では、優勝劣敗で進化が決まったのではなく、弱者が生き残ろうと工夫することで進化が生まれたととらえるらしいです。コンプレックスをばねに、逆境をばねに、これが進化の大きなパワーになったと。

いわゆる「親ガチャ」が成功したからって、絶対そのまま行くとは限らない。
親の身代を潰した、不幸な転帰をたどった。こんな例は枚挙の暇もないように思います。
個人の耐性や、能力の成長のための負荷という面では、マイナスという面もあるのではではないでしょうか。

なんか説教くさくなりました。オヤジはいけませんね。
今回はここまで。
ではまた、近々。

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