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AniPAFE2023参加作(【静止画MAD】噺家に限り無し【あかね噺】)

ニコニコ動画のMADイベント「AniPAFE2023」に参加した作品について、書いていきます。今回は演出的に色々挑戦してみたので、そのあたりがメインです。

イベント参加したのは修正版のこちら(YouTube早く修正機能出してくれ)


1:【MAD】 「I」 【やがて君になる】が与えた影響

 2022年12月29日にMADMAX2022のファイナルで投稿された本作。今後、静止画MADは「I」以前と以後に分けて語られると言っても過言ではないレベルの作品なので、まだ見てない人は今すぐこの記事を読むのを止めて見に行って欲しい。

 抽象的な表現をメインに展開してるのに、初見からここまでやってる本筋が追えるのは正直初めてで、衝撃が半端じゃなかったです。ゆっぴさんも出来るだけ分かりやすくすることを意識したとおっしゃってましたが、ちゃんと全体を通した演出が見てる側に伝わってきて、さらに映像としても強い。こういうの作りてぇ!!ってなりました。

挑戦してみたこと

 今回のあかね噺のMADは自分の作風で「I」リスペクトの作品を作るということに挑戦した面があります。
 原作の良さをストーリーから拾い上げて伝えるという今までの自分自身の根本は変えずに、今までとは違った演出や表現を取り入れる。特に、MAD全体を通した演出をちゃんと伝わるように作る。結果、いつもと変わらぬテキスト量になってしまいましたが、、、題材が題材だからむしろそれで良かったと思ってます。

2:構成から演出を考える

あかね→未だ音→朱音

 次はあかね噺で作りたいというのは前々から思っていたので、
「やるなら可楽杯がメインだよなぁ」
「なら、基本は了見を掴む流れをどう作るかになるかな?」
「そうなると課題提示としてこぐま兄さんとのやり取りは特に重要」
ぐらいのなんとなくの構成を思い浮かべながら年明けの休暇から読み返し始めました。
そして大事なこぐま兄さんとのやり取り。自分の中で妙に引っかかったのがこの一コマでした。

 今思うと、「音だね」だけでも「まだ音だね」でも意味が通じるのに、あえて「未だに」という言い回しをしているのが気になったのかもしれません。
 何故かこの時「朱音」っていう名前の漢字とかけてるんじゃねぇか?という直感が働きました。寿限無自体も名前に関する噺だし、言葉に成ってない寿限無が言葉に成る(落語に対する新しい理解が深まって成長する)の表現できるんじゃねぇか!?平仮名を落語始めたての状態として「あかね噺」のタイトル、技術は身についてきたけど、役に対する理解が浅い「未だ音」→了見(登場人物になり切り考える)を学んだ「朱音噺」とかはどうだ!?
という流れで、今回の全体の構成と演出の軸が決まりました。

未に1画足すにはどういう演出がいいか
 
必要な要素としては、
①了見をちゃんと掴んだことが内包されている。
②あかね噺に合ってそうなもの(槍とか刀とかはさすがに無しでしょ!)
③最初から線ではなく、変化して線になる
あたりを想定しながら考えました。

ここをあーでもない、これはダサい、それは安直、とか考えてるうちに2,3週間ぐらい経ってました。1つの線を入れる方法すらなかなか思いつかない自分の創造力の無さを痛感しました。最終的にはあかね噺のタイトルロゴにも入ってる扇子が「か」の字の一部になっていることに今更気付き、その応用で扇子の開閉で表現することにしました。悩んだ分、納得感のある演出になってくれたんじゃないかと思ってます。

扇子のアニメーションが目立ってなさ過ぎたのは失敗した感ある

全体の流れ

 大きな軸が決まったので、そこに曲調や歌詞を合わせながら全体を肉付けしていきます。

  1. イントロ:落語を始めたきっかけ、目的

  2. Aメロ1:本MADにおける目標と寿限無という演目の位置づけ

  3. Aメロ2:朱音の課題の提示

  4. Bメロ:課題に向き合う中での学びとサビへの布石

  5. サビ:寿限無が言葉に成る

  6. アウトロ:全体のまとめと今後の道のり

基本的には、イントロで漫画全体の設定、Aメロから今回の主題となっています。
以下、各パートの簡単なポイント
1.イントロ:使った曲の出だしが、少しノイズ感のあるものだったので、そこと破門の部分を合わせるように展開。

このノイズ音は曲の切る位置の工夫で出してるので、素材とか使わずできました

2.Aメロ1:ここで、今回の主題の寿限無を知らない人にも知ってる人にもどういう位置づけなのか知ってもらいつつ、今の朱音の状況を扇子で表現します。

イントロで出た絵を使うことで、既に持ってる技術だということを意図してます

3.Aメロ2:技術以外に朱音に必要なものは何か。を寿限無という演目の内容に沿って伝える。

誰に言われたセリフかわからないのも困るので、こぐま兄さんに登場してもらう
未だ音をオレンジにしているのは後々「朱色」になるのを意識

4.Bメロ:師匠からのかつての教えから、糸口をつかむのですが、ここの師匠の一連のテキストは、実は別のエピソードから持ってきています。教えの意図をくみ取ると、今回のエピソードにも使えると思って採用しました。
あとはサビで寿限無という演目のキモを掴むために必要な名付けについて理解を深めるため、自分自身のことを知るカットを挟み込みました。

学校で親に名前の由来を聞くって宿題ありましたよね

5.サビ:ここまでの答え合わせのようなところなので、ここまで伝えてきた流れを踏まえて、順番を間違えないよう意識しました。元々思っていた(一般的な)寿限無の認識→ちゃんと噺を知って認識が変わった→寿限無の名前一つ一つにちゃんと意味がある→それを登場人物になり切って演じる→了見を掴む→寿限無の本質→寿限無が言葉になる→未だ音→朱音噺

6.アウトロ:出したくても出せなかったキャラ達、今後登場するキャラ達を紹介しながら、今後の道のりを示すことで、他の展開や先も気になるようにしました。

3:演出あれこれ

落語の世界観表現

 原作では噺家と登場人物がリンクした時に点描画のような表現が使われています。今回はセルルックで落語の世界を作りましたが、タッチの違いを原作より極端にすることで視聴者が「あ、変わったな」と思ってもらえるように意識しました。手段としてセルルックを用いたのは完全に「I」の影響です。

喜怒哀楽の表現

歌詞合わせ用に喜怒哀楽っぽい登場人物探すの苦労した

 ここは明確にリファレンスがあるので紹介します。

 これは、主人公モブの内面に色んな顔がある(どんなモブもモブだ)という表現だと思いました。アレンジとしては、目を朱音に、それ以外を登場人物にしています。これは「目は口程に物を言う」という言葉があるように、目だけでも演じ分けできていれば、登場人物の感情を表現できる=観客にいろんな人物が見えてくると考え、この形になりました。

リムライト

 今回のキャラ絵の処理では、リムライト(逆光)に色を入れてみました。狙いとしては
〇シルエットの強調
〇目以外に色を乗せる
〇ドロップシャドウ逆光以外の表現の模索
〇単純にかっこいい

BLEACHの千年血戦篇や呪術廻戦の渋谷事変でも使われているので、今後よく見るようになるかも
リムライトと反対側には影を入れたり、影にも色を付けたりしてます。

キャラモーションさせてる時のサイド光の影つけがなかなか見つからないので、もう少し考えてみようと思います。

寿限無の名前由来

Aメロ1では文字だけで中身が伴っていない様子を、サビでは逆に文字を使わず、由来となった場面だけでそれぞれ寿限無の名前を出しています。

画面には全部入らないぐらい長い
どのカットがどの名前なのか気になったら調べてみてください

知らない人のために名前全部書いておきます。細かい文言は教えてもらう一門によっても変わるそうで、本作では監修の林家けい木さんが教わった文言を採用しているとのこと。

寿限無寿限無
五劫のすりきれず
海砂利水魚の
水行末雲行末風来末
食う寝るところに住むところ
やぶら小路のぶら小路
パイポパイポパイポの
シューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイの
ポンポコピーの
ポンポコナーの
長久命の長助

お化けブラー的な
 何か所かの動きにはモーションブラーではなくて、形が変形する(いわゆるお化けブラー)に挑戦してみました。

Live2Dでメッシュガチャガチャいじってやったり
Fusionで色々エフェクトかけてキーフレームで処理したり

4:終わりに

 今回のMADでの目標としていた全体を通した演出については、上手く皆さんに伝わっていたようですごく嬉しかったです。
 反面、本来なら演出で伝えるべき「寿限無が言葉に成った」のテキストも使ってしまったのは、少し説明過多になってた部分もあるかも?という思いもあったりしたので、その匙加減は今後も考えていかないといけないなぁと思いました。
 「未だ音」が朱音とかかってるのかどうかの真偽はわかりませんが、可楽杯の中でも漢字の「朱音の噺」という単語も出ていたり、名前を主題にした寿限無という演目であえて強調しているあたり、原作者の末永先生にもこうした意図があるんじゃないかなとも思えるのが楽しいです。
 あかね噺に関しては、ジャンプ公式PVでも寿限無の演目中のセリフの「死んじゃいねぇんですよ」を父の落語はまだ死んでないというような表現にしたり、最新8巻収録の「替り目」という演目を朱音の落語の変わり目(分水嶺)として使っていたり、まだまだ色んなこういう言葉遊びが隠れている作品だと思います。
 是非読んでみて、気付いたこととかをMADにしてみてはいかがでしょう?きっと他にはない面白い作品が出来上がると思いますし、そういうのどんどん見たいです。

 あと、時間がかかったのは、単純に睡眠と運動をあまり削らなかったのと、モデリングする量が多かった、色々試し過ぎたの3点です。年明けにはサクっと作るって思ってたのに過去最大に時間がかかりました。その分、できたものには満足しているので、支援から本参加の流れで順位にどの程度影響があるかわかりませんが、結果を楽しみに待っていようと思います。

おまけ

ニコニコ動画に投稿した修正箇所一覧です。見比べてほぅほぅって見てください。

  1.    4秒:スポットライト、キャラの処理

  2.    7秒:スポット、背景のノイズ軽減

  3.    9秒:観客の質感、スポットライト

  4.    10秒:スポットライト

  5.    11秒:柱の色合い

  6.    13秒:トランジション追加

  7.    15秒:背景の観客の質感、キャラの処理、トランジション追加

  8.    18秒:頭部のエフェクト見切れ処理、ノイズ追加

  9.    21秒:ノイズ減少

  10.  32秒:ピント位置調整

  11.  44秒:キャラモーションの変更、レンズフレア調整(吹き出しに被ら  ないように)

  12.  1分17秒:エフェクトのブラー量調整

  13.  1分19秒:モーションブラー軽減

  14.  1分20秒:モーションブラー軽減

  15.  1分22秒:雲の透明度なくす、背景のフォグ調整

  16.  1分26秒:カメラ手振れ量増、カメライージング調整、背景のフォグ調整

  17.  1分28秒:トランジションの反転を削除、背景の色、キャラモーションのタイミング調整(楽をのところ)

  18.  1分30秒:背景の色

  19.  1分33秒:扇子のラインの質感調整、トランジション追加

  20.  1分36秒:スポットライト、フレア追加

  21.  1分38秒:背景の色

  22.  1分40秒:背景の色

  23.  1分40秒:扇子のラインの質感調整

  24.  1分45秒:曲のつなぎ目調整(1フレ切れてた)


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