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茨城論壇 01 「ワインの香りを楽しもう」

こちらは2021年4月21日の茨城新聞『茨城論壇』に掲載して頂いた1500字
ほどのコラムです。掲載時のものに若干の修正を加えています。

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 皆さんはじめまして。筑波山麓でワイン用のブドウを栽培している今村ことよと申します。筑波大学で学んだ後に都内の製薬企業に勤めておりましたが、よなよな飲み歩きを重ねるうちにワインの魅力に取り憑かれ、一念発起し会社を退職してしまいました。
 長野での一年半の栽培醸造研修を経て、つくばに戻って来たのが2015年。今は自園で収穫したブドウを委託醸造先で自らワインへと醸造し、出来たものを販売しています。

 普段ワインを飲まれない方にとって、ワインは『とても難しい飲み物』という印象があるかもしれません。私もワインを飲み始める前はそう思っていました。ところが詳しい方に教えてもらいながら何回か飲むうちに、むしろワインはアイテムごとの違いが分かりやすい、とても魅力的なお酒だと思うようになりました。
 ぜひ皆さんにもご興味を持っていただけるように、ワインについて少々ご説明してみたいと思います。

 ワインには種類がいくつかありますが、その中には白ワインや赤ワインがある、ということは皆さんもご存知でしょう。
 白ワインは白ブドウ、赤ワインは皮に赤い色素を含む黒ブドウから作られるということ以外に、決定的に大きな違いがひとつあります。それは白ワインはブドウを絞って得たジュースを発酵させるのに対し、赤ワインはブドウを軽く潰して果汁に皮や種が浸った状態で発酵を始めるということです。黒ブドウを粒ごと発酵させると、その赤い色素や渋みが、果皮や種から発酵中のワインへ段々と移って行くのです。
 ワインの赤い色素の素は、主にアントシアニンというポリフェノール。これが健康に良いと一般的に言われているので、ポリフェノールを摂る目的でワインを飲むのであれば、白ワインより赤ワインの方が良いでしょう。
 一方、ワインの渋みが苦手、という方には白ワインをぜひおすすめします。

 さて、私を含めたワイン愛好家がワインにはまる最たる理由は、そのバラエティ豊かな香りの魅力に他なりません。

 白ワインの場合、冷涼な産地で作られたワインでは檸檬やライムといった柑橘系の香りが、比較的温暖な産地では黄桃や南国系のフルーツ、その中間だと林檎や洋梨などの香りがします。また原料のブドウがやや未成熟だった時にはハーブのような青草香がしたり、反対によく熟していた時には蜂蜜のような香り、更に樽に入れて熟成させたものでは焼いたパン・ナッツ・バニラなどの香りが加わります。

 一方赤ワインでは、果実の香りは主にベリー系です。冷涼な産地のワインは色も淡めでラズベリーや苺などの赤い系のベリー、温暖な産地ではワインの色も濃く、ブルーベリー・ブラックベリーなどの黒系のベリーの香り。その中間ではカシスやプラムなど。そして未成熟な黒ブドウの場合はわずかにメントールやピーマン香が混じったり、よく熟していた場合には煮詰めたジャムやドライフルーツの香りがします。更に樽に入れて熟成させたものにはバニラ・珈琲・なめし皮などのスモーキーさが加わります。

 どうでしょう、ちょっとワインに興味が出てきた、という方は、ぜひワインの品揃えの良い酒屋さんに出向いてみてください。ブドウのバッジをつけた店員さんがいるお店ならなお安心、そういうお店の店員さんはワインのことを尋ねられるのがとてもとても好きなのです。今日の夕食に何を食べるつもりか、予算は一本千円です、などをお伝えしてみてください。ワインを普段楽しんでいるかどうかもとても重要な情報です。
 怖がらなくても大丈夫、お店の方がその日のあなたにぴったりの一本を選んでくれます。

 グラスに注いだワインから香りが立ち上れば、その日の食卓がいつも以上に華やかになることはまちがいありません。
 そのワインからどんな香りがするかを言い当てるのも楽しいひとときかと思います。ぜひお試しあれ!


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