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その成功法則は、本当にあなたを成功に導くだろうか?

昨今、雨乞いをしたら、雨が降ると信じている人は少ないでしょう。しかし、願えば宇宙が欲しいものを届けてくれると信じている人もそんなに違いはないと思います。もちろん、雨乞いや宇宙に願うことの効果を完全に否定することはできません。信じるものは救われるとも言いますので、信じていない私がとやかくいう話ではありません。

ただ、よくよく考えれば、おまじない的な内容を「法則」として訴求することに疑問を感じます。

成功に関する指南書のほとんどが結果論です。

成功者といわれる人が、自分の人生を振り返る回顧録や重視していることを紹介しているか、または、「私はこのようにしてうまくいきました。その方法を体系化しました。だから、あなたもどうぞ」という結果から逆算した方法論を紹介しているものがほとんどです。

こうした成功の指南書には、「法則」についての誤りがあります。

法則とは、「必ずそうなること」です。雨乞いをしなくても、雨雲が近づいたら雨が降る。こうした自然法則は、絶対です。つまり、例外がありません。


ほとんどの成功法則は、「傾向」でしかない。

一方で、成功法則と呼ばれているものの多くが絶対ではないのは、それが法則ではなく、経験則やデータから導かれた「傾向」だからでしょう。

たとえば、成功の教えの中に、「感謝して生きる」というものがあります。

感謝して生きる人は成功する。
成功した人は感謝して生きている。

この2つは全く違います。

感謝せずに生きていたために、成功の座から転がり落ちた人をあなたも知っているでしょう。だから、成功と感謝は切り離せないとしても、感謝をすれば成功するのかと言えば、そんなことはないでしょう。

実際、「ありがとう」を毎日100回言っているけど、成功していないという人も少なくありません。

つまり、感謝は成功の必要条件ではあるが、十分条件ではないということです。

世の中で、法則と呼ばれているものの多くは、実は、因果関係がありません。

「偏差値の高い大学を卒業すると将来の収入も高くなる」

そんな風に考えて、偏差値の高い学校を目指します。

「NIKKEI STYLE」という情報サイトが紹介しているデータによると、大卒の生涯賃金は男性の場合で、約2億8600万円、高卒で約2億4000万円となっている。平均では、4600万円の差があります。

「学歴なんて関係ない」の真実 生涯賃金これだけ違う

確かに、学歴と収入には関連がありそうです。

医者、弁護士、教員などは大学卒でないとなることができません。公務員でも大卒と高卒では給与や出世コースが違うと聞きます。また、大企業と中小企業にも給料に差があります。大企業が偏差値の高い大学の学生を優先的に採用しているとしたら、偏差値の高い大学に入るのは成功法則となり得ます。しかし、偏差値の高い大学を卒業しても就職ができない人はいます。

それでも、今でも多くの若者が偏差値の高い大学に入りたいと願います。現時点では、高所得者に高学歴の人物が多いと言えます。

その場合、こんな考え方もあるのではないでしょうか。

高所得者に高学歴の人物が目立つのは、「将来、高い収入を得る能力の高い人は偏差値の高い大学を卒業している」という相関関係が成立しているということです。

ならば、成功法則は学歴ではなく、収入を上げる能力を高めることになります。そこで問題になるのが、何の能力を高めればいいのかがわからないということです。

昨今、企業では、自発的に行動できる人、課題を発見し、解決策を実践できる能力のある人が求められています。

学校での教育も実践的、グローバルを軸にカリキュラムが組まれていますが、学力が重視される傾向はずっと変わっていません。

語学と数学の点数配分が多く、総合的には理科や社会の点数配分が少ない。体育や音楽は、専門の学校でない限り、受験科目ですらありません。

スポーツや芸術はもちろん、アイデアをもとに起業するというような能力は学校教育では身につきにくいと言えます。

出された問題に答えるという教育を受けている以上、ユニークな個性は育ちにくくなります。また、社会に出ても、自発的よりも、会社の方針に従うことを求められることの方が多いと言えます。

成功を目指すにしても、「成功する方法を知りたい」と考えている間は受け身ですし、「この方法ならうまくいきますよ」という誘いに引っかかりやすくなります。

成功するためには、世の中に溢れている成功法則を自分の基準で取捨選択しなければなりません。

取捨選択をする方法の一つは、その法則に確実な因果関係があるかどうかを確かめることです。

因果関係には、原因と結果が存在しています。因果関係のある成功法則は法則だと言えます。一方で、相関関係には、原因と結果の因果が存在していません。因果関係がなければ、法則めいて見えても、法則ではありません。

因果関係と相関関係を見分けるポイントとして、中室牧子さんは、【「原因と結果」の経済学】の中で次の3点を指摘しています。

1:まったくの偶然ではないか
2:第3の変数は存在していないか
3:逆の因果関係は存在していないか

たとえば、ハリウッド俳優のニコラス・ケイジの映画出演数が増えるとプールの溺死者が増えるというデータがあります。これは、どう考えても、偶然としか思えません。

ニコラス・ケイジの映画が増えるとプールで溺死する人も増えるのか?

しかし、「●●の日には▫️▫️をしよう」迷信を信じている人は少なくありません。因果関係がなければ、再現性が低いと言えます。というか、単に偶然に身を委ねるということにもなりかねません。

もちろん、プールで溺死するのは悲しいのでニコラス・ケイジが映画に出たら気をつければいいのですが、そんなことに関係なく、日頃から水難事故に合わないように気をつければいいのです。

次に、第3の変数の存在。

成功した人は感謝しているが、感謝をする人が必ずしも成功するわけではないということは、そこに第3の変数があるということです。成功する人は、「感謝しながら、人が喜ぶアイデアを探している」「お客様に喜ばれるサービスを提供している」という具合に、感謝以外の変数、つまり要因があることを見落としてはいけません。

また、「成功した人が感謝している」のは、成功したことに感謝して、感謝を大切にする習慣を身につけていると考えれば、「成功すれば感謝の心が芽生える」というのは逆の因果関係になります。

世の中にあるほとんどの成功法則は、経験則による傾向を語っているだけで、因果関係がなく、偶然、変数の無視、逆説から導いたものだとしたら、再現性がないのは当たり前です。

他人の経験則を自然法則のように盲信すると、自分を見失います。

もし、あなたが成功したくて、長財布を使っているにも関わらず、期待通りに成功していないとしたら、第3の変数と逆の因果関係を見落としていることが原因でしょう。


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