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【調査】未勝利馬と活躍馬では、デビュー時期に違いは見られるのか①

一口馬主における募集時、クラブから提供される情報はかなり限定的です。尺の短いウォーキング動画、測尺など多少の定量データ、そしてクラブによってはやや誇張気味にも表現された定性的なテキストなど。これら少ない要素を元に大切な資金を投じるのは、なかなか悩ましいものです(情報が限られているゆえ、想像を巡らせて熟考できる楽しみもありますが)。

こういった課題を少しでも解消すべく、当noteでは募集時にクラブから与えられる情報以外に新たな視点や傾向を見出せないか独自調査を重ねています。歩様をデータ化した【リズム診断】以外にも、募集馬選定の参考となるような調査情報をお届けしていこうと思っています。

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主要6クラブ馬の平均デビュー日などを調べてみた

さて今回は、「デビュー日」「初勝利日」など、“日数”に関する話題。記事のタイトルにあるとおり、「未勝利馬と活躍馬では、デビュー時期に違いは見られるのか」を、2013年産以来のデータ(対象2,269件)を元に調べてみました。

本記事のデータは以下を元に算出しています。独自調査のため、実数と異なる場合があります。
・対象馬は2013年~2018年産(2021年8月2日時点の成績)。
・対象馬主は、サンデーレーシング、社台レースホース、G1レーシング、キャロットファーム、シルクレーシング、東京ホースレーシングの6クラブ
・ただし、以下は対象外。未出走馬、地方や障害レースでの出走・勝利(重賞含む)。
※2018年産はまだ世代未勝利戦が続いており、今後数値が変わってくる可能性あり。


データ① 世代戦における、デビュー日・初勝利日

以下表は、各世代の起点日を6月1日とし、そこから何日後にデビュー(初戦)を迎え、何日後に勝利をしたのか、対象クラブ合算の平均値を表したものです。また、勝ち上がり率(表では勝率と略)も添えています。

1-1_全_全

まず目立つところでは、平均デビュー日(水色の線)。年を経るごとに早期デビュー化が進んでいるのがよく分かります。2013年産と2018産を比べるとその差は実に約40日(6月1日から起算すると、それぞれ196日目=12月13日、152日目=10月31日)。

2歳戦が増え、素質馬を使い分ける等のため“早期デビュー化が進んでいる”とはよく耳にするところでしたが、この6年間を見るだけでもここまで早まっていたとは少々驚きです。

このデビュー日に連動する形で、平均勝ち上がり日(桃色の線)も前述比で約40日ほど早くなっています(6月1日から259日目=2月14日、224日目=1月10日)。

対象6クラブ合算(2018年産)
・平均デビュー日=10月31日
・平均勝ち上がり日=1月10日

ただし、勝ち上がり率(橙色の線)は凡そ横ばいであることから、全体でみると募集馬の馬質そのものは早期デビュー化によって変わるものではないようです。

一概には言えませんが、勝ち上がれないお馬さんはどのタイミングでデビューを迎えても能力的に厳しい……ということでしょうか(本記事のその②に記載しますが、クラブごとに見ると特徴あり)。

では、未勝利のまま現役生活を終えてしまったお馬さんは、平均するといつ頃デビューしていたのでしょう。


データ② 未勝利馬(平均デビュー日)

1-2_全_未勝利

2018年産における未勝利馬の平均デビュー日は183日目=11月30日でした(現在進行形)。2013年産は230日目=1月16日であることから、未勝利馬であっても早期デビュー化が進んでいます(この6年で約50日早くなっている)。

さらに、次で示す「データ③ 条件馬の平均デビュー日(=勝ち上がり1~3勝クラスの馬)」と比較すると、未勝利で終わる馬は勝ち上がる馬よりも平均してデビュー日が約60日も遅くなっているのが分かります

平均デビュー日(2018年産)
・全体=10月31日
・未勝利馬=11月30日
・勝ち上がり馬(条件クラス馬)=10月6日

概念として「デビューが遅れる馬は勝ち上がる可能性が少ない」は広く知られるところでしたが、データとして見るとやはり事実だったようです。

デビューが遅れると期間的に勝ち上がるチャンスが少なくなるという理由はもちろん、出走にゴーサインを下せる能力水準に至るまで時間を要し、デビューが遅れる(後回しにされる?)……といった理由が推測されることからも、デビューが遅れそうな馬への出資は避けたほうが良さそうですね。

もっとも募集時にデビュー時期が分かれば苦労しないのですが^^; このあたりは、きょうだいの傾向や血統、測尺などから類推するしかないですね(ここを判別できないか調査中)。


データ③ 条件クラス馬

1-3_全_条件馬

続いて、条件クラス馬(=1~3勝クラス)のデータです。先ほどと逆の言い回しになりますが、未勝利馬よりも条件クラス馬はデビュー日が約60日も早い。以外は同様の傾向のため次の話に進めます。


データ④ オープンクラス以上を勝った馬

1-4_全_OP馬

調査母数を確保するため、重賞馬ではなく、オープンクラス以上を勝った馬(以下“活躍馬”と言います)を対象としています。

グラフを見てすぐ分かるとおり、かなりの早期デビュー&初勝利になっています。2018年産でいうと、デビュー戦は84日目=8月23日、勝ち上がりは126日目=10月4日。それぞれ想像以上に早い! 

さらに面白い傾向と言えるのが、デビュー日から勝ち上がりまでの間隔が相当短いこと。

条件馬の同数値は各年代ともに約100日であったのに対し、活躍馬のそれは約20-30日(※)。つまり、のちの活躍馬の大半は、早い段階から水準以上の能力をもっているため、“デビュー戦を勝ち・もしくはその後1か月ほどで勝ち上がっている”と言えるようです。

※2018年産は現時点で3歳世代であり、今後オープン以上を勝つ馬が誕生し、これら数値が大きく変わってくる可能性があります(2017年産、2018年産でデビュー日と勝ち上がりの間隔に開きがみられるのはこのため)。

平均デビュー日(2018年産)
・全体=10月31日
・未勝利馬=11月30日
・条件クラス馬=10月6日
・オープン馬=8月23日

平均初勝利日(2018年産)
・全体=1月10日
・条件クラス馬=1月24日
・オープン馬=10月4日


傾向まとめ

①~④のデータから、「未勝利馬と活躍馬では、デビュー時期に違いは見られるのか」は、「約100日の開きがあり、明確に違いがある」と言えます。

2019年産は既に世代戦は始まっていますが、今後もこの傾向が続くのであれば、現時点(2021年8月)で既に勝ち上がっている or 間もなく勝ち上がるお馬さんは将来の活躍馬である可能性が非常に高いと言えそうです(対象馬に出資している方々が羨ましい……。また、その後の活躍が期待できるため馬券的にも追い続けたほうが良いですね)。

活躍馬に出資してみたい方は、今後の検討ポイントとして“早期デビューできそうか?”を念頭に置いたほうが絶対に良いでしょう(繰り返しますが、募集時にデビュー時期を見分ける術が分かれば苦労しませんね^^;)。


早期デビューでなかった主な活躍馬

早期デビューだけがお馬さんの個性ではないため、前述データの平均デビュー日よりも遅かった主な活躍馬も挙げておきます。

※機械的に12月以後デビュー馬をピックアップしたのですが、遅いデビューであっても前述のデビュー戦を勝ち・もしくはその後1か月ほどで勝ち上がっているのパターンに当てはまる馬ばかり!

2013年産
ムーンクエイク(デビュー:2016年2月21日、初勝利:2016年3月6日)

2014年産
セダブリランテス(デビュー:2016年12月10日、初勝利:同日)
デアレガーロ(デビュー:2016年12月25日、初勝利:同日)
ベストアクター(デビュー:2017年4月29日、初勝利:同日)

2015年産
ステイフーリッシュ(デビュー:2017年12月10日、初勝利:同日)
ダイアトニック(デビュー:2017年12月16日、初勝利:同日)
ギベオン(デビュー:2017年12月17日、初勝利:同日)
リバティハイツ(デビュー:2017年12月17日、初勝利:2018年1月14日)
インディチャンプ(デビュー:2017年12月28日、初勝利:同日)
サラキア(デビュー:2018年1月21日、初勝利:同日)
グロンディオーズ(デビュー:2018年2月12日、初勝利:同日)
センテリュオ(デビュー:2018年2月25日、初勝利:同日)

2016年産
レッドジェニアル(デビュー:2019年1月13日、初勝利:2019年2月17日)
アンドラステ(デビュー:2019年1月20日、初勝利:同日)

2017年産
テルツェット(デビュー:2019年12月7日、初勝利:同日)
レイパパレ(デビュー:2020年1月11日、初勝利:同日)
ルフトシュトローム(デビュー:2020年1月19日、初勝利:同日)
デゼル(デビュー:2020年3月15日、初勝利:同日)

2018年産
エリザベスタワー(デビュー:2020年12月19日、初勝利:同日)

※冒頭に記載しましたが、本データは地方や障害レースでの重賞勝ち馬は対象外としています。


本記事は以上。同様データをクラブ別に算出した「その②」へ続きます(後日公開)。

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公開中の2021年度(20年産)募集馬の【リズム診断】


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