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打瀬くらげ
2021年3月8日 21:19
夕暮れになるとどこからか鐘の音が鳴り響くような気がする。ミレーの絵画のように、持っているすべてを地面に置いて、こうべをたれて目をつむりたい。祈りとは、なんだろう。今日を生きのびた感謝だろうか。誰かの幸せを願っているのだろうか。明確な答えもなく、容赦なく橙色に染まる世界にひれ伏してしまう。当然の幸せに満たされるていく。あらがいもできずに。 塔矢は、疲弊していた。夕方には、もう許容範囲を超えてし
2021年3月10日 20:06
「おーい!いよいよ、始まるぞ。VRゴーグルとヘッドホンつけろよ。」その掛け声で、おのおの席について演奏を待った。ゴーグルを装着すると、外界を遮断する没入感。白い空間に演奏会のタイトルが、粒状に浮き上がっては離散していく映像が映し出されていた。『輪郭をなぞる音楽会』演奏者の名前と演目の曲名が表示されている。「あ、塔矢先輩だ。」指揮者として記載されている名前に懐かしい気持ちが沸き上が
2021年3月13日 10:09
前回、前々回の記事では、SF小説のプロットとして、断片的にシーンをおこした。 人工鼓膜を持つ音楽家が、高性能聴覚能力に葛藤しながら、技術とともに成長していき、指揮者として聞こえている音を配信していく物語を創作した。 現在、聴覚障害の方のため人工内耳技術が進んでいる。それは、体外受信装置から発せられる電気信号が蝸牛に伝達され、聴神経を経て脳に到達するものだ。大変なリハビリが必要だと聞く。