青帯ボーイは自分の柔術システムを作るべきか

定期的に聞かれる問題は、自分の柔術システムを作るべきか否か、ということです。
自分なりのテクニックチャート、柔術システムを作るべきに決まっているのだけれどもそれについての杉村の意見を述べよまたは補足説明をせよというオーダーだと思っています。

まず、質問者が20代若者青帯だとします。作るべきでしょう。上から攻めるか下から攻めるかを決めて、下からだったらガードを一つ決めて、そこへのエントリーを3つくらい作り、そのガードへの一般的な対応を3つくらい絞ったらそのカウンターをそれぞれ練り、一本を取る、ひっくり返す、もう一度最初のガードに戻る、くらいの3つのフィニッシュの流れのどれかにつなげられるようにチャートを作り、適当な仲間と一緒にドリルをしてスパーリングで使えるようにする。それは当然やるべきでしょう。上であっても同じことでしょう。

私の意見は特にないのですが、青帯でそれを初めてやろうとすると自力では1年きっちりかかるということです。そして、紫帯になったらいったん全部捨てるべきです。青帯で完成させたテクニックチャートは自分としてはこの世のすべてを解決できる最終兵器との認識で作るべきですがしょせん青帯が自力で作ったチャートです。カリキュラムの履修を通じて練り上げた他の技法などともつなぎ合わせてより深くよりシンプルにおそらく他のガードを中心にして作り直すべきです、また一年掛けて。茶帯でも同様です。黒帯になっても同じことをするのですが、それをやった経験だけは生き残ります。青帯のチャートは生き残りません。でも、もしもあなたが真剣に自分のための完璧な世界を作った経験があるのなら、黒帯になってから気になるガードやパスガードを中心にチャートを作ろうとなってスパーリングに投入するまでに費やす時間が3ヶ月くらいの期間で済むようになります。済む印象です。済むんじゃないかな。
テクニックチャートは、試合で勝ちやすいっていう利点もあります。カリキュラムをまんべんなくすこしずつ身につける人はストレートアームロックに命をかけるみたいな人やスパイダーだけでこの世のすべてを解決するみたいな人に紫帯くらいまではボコボコにされます。悲しいくらいに。なぜなら修行中の身だからです。テクニックチャートを作ってある程度自分のやることを絞ると自分から先手を取ってなにかいいことをできるようになるのでIBJJFルール上の勝率は上昇するし我々は勝つための練習をしているので、特に20代の血気盛んな若者はやはり作るべきでしょう。

以上が私がよくいう答えとなります。
次にどのガードを、またはパスガードを、中心にチャートを作るべきか、という問い合わせについて、あなたは鈍行列車に乗りたいのか特急列車に乗りたいのかどっちですかと聞くようにしています。どちらも柔術の旅路であることにはかわりないです。でも指導者として鈍行列車をすすめるわけにはいかないのです。ある若者にはまだ学生の君にとっては高額だろうけれど芝本先生の戦術的パスガードを丸暗記しなさいと促しました。別の若者は吉永先生のハーフガードを買ったらしいので、これは百科事典じゃないぞ全て1ページ目から丸暗記しなきゃいけない系統の教則だぞと念押ししました。信頼できる先生の教則を丸暗記するのが特急列車です。これは数ヶ月で実戦投入できる上に選択肢に間違いがないのでものすごくおすすめです。それらを中心にいったん完成版の自分の柔術システムを作ることが特急列車です。
鈍行列車のたとえばなしがまったくしっくりこない様子の子には、私に紫帯をくれたのはトライフォース以外の道場の会話できないブラジル人の先生だったのだよ、ということにしています。オレ、カイワ、デキナイ。先生に相談できないということは、自分でなにかチャートを作ろうとして、選択肢Aと選択肢Bがあらわれたとき、どちらが正解なのかわからず、どちらにどのような評価をすればいいのかわからず、歴史的にどう評価されているのかわからず、将来の自分の成長や今後習得する技法とどうつながるのか分からず、それぞれの選択肢のメリット・デメリット活用方法その対策方法などがまったくわからず、特定の選択肢になにかきらめきを感じたとしてもその有効活用方法もわからないので仕方がないから可能性として起こりうる全部の選択肢をひとつひとつ言葉の通じないブラジル人たちに試してたまにびっくりさせられたブラジル人に怒鳴られることを意味します。相手も当然私の身体を使って同じことをします。ちなみに私は紫帯のときに鈍行列車に乗ることをやめて心のなかにそれぞれの選択肢を埋めておきいつか誰かが教えてくれるだろうというのをまつことにしました。人生は有限です。つまり私は30過ぎてから鈍行列車から特急列車に乗り換えた派閥です。
白帯のときにスネと袖グリップで相手を煽って横に返すといい感じだった瞬間があってサイゼンセンガードと先輩がそれを名付けて面白がっていたらそれをみた紫帯のひとからそれは無駄だから使うのやめろと言われて使うのをやめ、10年以上経過したのちにマスターカリキュラムにシンコントロールというグローバルネーミングをつけられてちょこんと鎮座していたのをみたときの気持ちをみなさんに150字以内で答えてほしいものです。まぼろしの最前線ガード
一方、別の子がトライフォース志木での練習後の自主練ドリルでどこぞで仕入れたリバースワームからのバックテイクをしていたので、ひととおり終わった頃にちょっと声をかけて太古の昔のヨーロピアンでのキーナンの勇姿に触れつつ芝本先生の教則のモダン柔術サバイバーではこのようなカウンターがありましたよと紹介しつつもしも今のリバースワームの流れをつかいたいときはこれらの即死カウンターに対するカウンターもちゃんと準備しなさいね個人的なおすすめはやはり芝本先生がセミナーで紹介していたワームかベーシック通りに単に立ち上がってシングルに行くことですが全てはあなたの選択にお任せします、と事実上の彼の自主練習を全否定していたわけで、私が白帯のときに紫帯の人に言われたのと形式的にはまったくおなじことをしているんだけれど私の中では結構ちがう。最終的には絶対違うものだと証明できるレベルで違うものだと確信しています。
鈍行列車に乗るということは貴方以外のすべての人がそのテクニックに対する致命的なカウンターを準備しているとしてもそのテクニックに殉じる気持ちのことで、暗闇の中を進むのは夜中の散歩のような背徳感がありそれはそれで楽しい柔術ライフなのだという確信もあります。鈍行列車の柔術ライフも楽しいよ。指導者としての役割として私は生徒を強制的に特急列車に乗せるけれど。


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