ライトスパー柔術

初めて早川先生とスパーリングさせてもらったのはトライフォース入門当日で、謎のブラジル人に通りすがりに紫帯をもらっただけのなんちゃって紫帯疑惑を自分自身抱いていたので白帯から始めさせてくださいと言って体験すらせずに一瞬見学して入門したのだけど、そんじゃあ杉村さん、と人生最初で最後のさんづけでスパーリングを五分やったあとに早川先生からひとこと、充分紫帯ですどこかに登録必要なら私の名前でやっていただいて結構、といただいたのが一回目のスパーリング。次に神の気まぐれでスパーリングさせてもらったあとにやはり早川先生からひとこと、お前本当はもっと強いだろう本気でやれ次に一瞬でも手加減したらオレはお前と死ぬまでスパーリングしない、と言われて、ああそうか、このトライフォースという流派はたとえ先生であってもゆるめのいわゆるフロー的なスパーリング、人によってはライトスパーと言われるあれをしてはいけない道場なんだなと雷に打たれたような衝撃でした。就職転勤などで何箇所かの道場を経験していたけれど他の道場は先生相手に本気を出したら怒鳴られるしそもそもそんなことをする人もいなかった。

そしてもちろんトライフォース志木、心優しいエンジョイ勢しか入門しないうちの道場、なぜならガチモードのひとたちはガチ道場に行ってしまうのでみんなゆるくやりたいはずのトライフォース志木でも、私がかつて早川先生から言われたように杉村とやるときだけは杉村を殺すつもりでスパーリングしないと練習になりませんよと心を鬼にして歯を食いしばり涙を殺しながら強要していたのだけど、ある日突然トライフォースアソシエーションに電流が走りつまり早川先生が突然サイボーグのように膝をがちがちにかためてスパーリングするようになりどうやら膝靭帯を痛めたようで、というかたかが膝靭帯程度で痛そうにする柔術家は多分開闢以来存在しないので結構びっくりなんだけど、ついでにいうと私はかつて指の靭帯がちぎれてテーピングで固めてスパーリングしたら、おいそんなものに意味はあるのか?と言うやいなや格闘技の達人が培ってきたあれな技法を使って私の意識の隙を付き一瞬で私の指をぐいっと握ってあれな方向に拗られても、私は無表情ではい突き指なのですと言っていたくらいにはあれであれなのに突然ガンダムかなくらいの様子になった早川先生からスパーリングを指名されて、オッス殺しまっすと鼻息荒く先生の前に正座したら、生まれたての子鹿のように膝を大げさに引きずる早川先生から、おい、わかってるよな?と言われてビビった。人生で10年ぶりくらいのライトスパーのとなったわけです。

たぶんハヤカワ先生はあらゆる身体感覚に鋭敏すぎて痛みも人一倍強く感じるタイプだと常々思っていたけれどその予感が確信に変わったものです。

↓膝が快調な早川先生とのガチガチなガチスパー


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