アンダーフックの定義、または柔術の言語化について

定義定義というけれどカリキュラムにそう書いてある定義はそのように暗記すればいいだけであって、カリキュラムに明示的に書いていない動きや部位の定義が次に問題になるわけです。
動作で言えばたとえばアンダーフック。アンダーフックの定義は私の中で定まっていなくて、アンダーフックされない状況のうちアンダーフックと認識しうるものだと同語反復的に定義するといちばんしっくり来るのが現状です。誰かバシッと言語化してほしいものです。
部位で言えば膝。英語ではニーとラップの別の用語があります。ニーはニーリングベースのニーでありプロレスのニードロップのニーであり、ラップはラップトップPCのラップで、ラップは上の方でニーは下の方だと思いきや多分ニーのカバーする範囲のほうが広そうです。ワキだろうとコシだろうとヒジであろうとクビであろうと道衣の部位であろうとありとあらゆる部位について定義が必要です。親指と他の指は英語にすると別だと辞書に書いてあったので英語インストラクションで親指はフィンガーと言わないようにしています。

定義のあたりがピアノ練習でいうキラキラ星レベルの初級で、少し進むとそれぞれの部位や動作に対する評価が出てきます。この動作をするとなにかいいことが起こりますとか、この部位を制されるとかなり危険です、とか定義は単なる事実なのでそれに対する政策的な評価が必要になります。政策的判断、ポリシーによる判断とは結局良いか悪いかということで、どの視点なのかも大切です、トライフォースとしての視点なのか、ブラジリアン柔術ルールの視点なのか、セルフディフェンスの視点なのか、安全配慮の視点なのか、格闘技という視点なのか、法的な視点なのか、どの視点から見て良いか悪いかということも言われたほうが認識できるようにするべきです。ここで大切なのは個人の好みでいいか悪いかをいうときは極めて重い責任を伴うということです。個人の好みは議論の対象にならないのでおまえら有象無象の阿呆共と議論するつもりはまったくないという非常に強い無礼な言い方なので私はめったにやりません、私は。個人の好みを口にすることとは、無礼だと思われてもいいのでどうかこのやり方を良いと言ってくれというお願いだと思っています。

更に進むと同じ動作について他の教科書ではどう言われているのかも言及すると面白いです。醍醐敏郎先生は、柔道十段になるとIMEソフトで名前を一発文字変換できるようになるらしい醍醐敏郎先生の教科書ではこう言われていて同じルールのハズなのに柏崎克彦先生の教科書だったらこうですよね、とか、言及してそれぞれなぜそうなったのかの比較と評価をするのでここからさきは単なるセンター試験の現代文と同じです。
そういったことを当たり前の道場にしているのでそれっぽいひと、婉曲的な言い方でいうとそれっぽいひとが入会してくれるトライフォース志木で、練習後のまったりトークタイムのとつぜん通りすがりに、アドバンストカリキュラムのクロスフックスイープと帯取返の違いとその評価について、中井先生がその著書の中でブラジリアン柔術で帯取返が用いられない理由についてのコラムを書かれていたことを踏まえて論ぜよとソモサンセッパ的な問題が会員さんの口から出てそれを聞いた他の会員さんもはいはいあの状況ねと打てば響く感じになり、私なんかはそれについて十年も二十年も考えていたので待っていましたとばかりに通りすがりの辻斬りのごとき速度でそれぞれの違いと対応からサワダ先生が試合で見せたクレイドル式テイクダウンについてまで言及するわけです。定義と比較をするからには評価もするわけで私の如き柔術界の周辺の民が公の場所で言うには失礼すぎる内容ですが、私は私自身の個人的な好みについて口にすることはないので単なる事実として色々と楽しく議論しながら切磋琢磨するわけです。言いたくて言いたくてウズウズしている話題が100個くらいあります。トライフォース志木誕生の一番の理由は洗濯が楽だからですが第二の理由はこの瞬間のためかもしれません。

定義について丸暗記するとあらゆる議論が一瞬でハイレベルな内容になるのでものすごくおすすめです。前提知識についていちいち説明して合意を得る必要がないからです。そしてそれは実は当たり前のことじゃなくてみんなが好き勝手にその場ののりでテクニックなどに名前をつける道場がほとんど全てなんだけどあえてその事実については伏せて、あたかも定義を丸暗記するのが当たり前なんですよー的な雰囲気を作りつつ、それが当たり前になった志木の色帯の人たちが当然のように強くなった姿を後輩たちみせてくれて、今のトライフォース志木があります。きっと明日もあるでしょう。今日もベーシッククラスに感動した人が3人入会してくれました。彼らもきっと先輩たちに続いてくれることでしょう。

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