かみつきファイターへの道

カリキュラムをしっかり制定していてクラスのフォーマットも統一されていたりして非常に画一的にみえるトライフォースですが、少なくとも他流派で紫帯まで取得したあとにトライフォースの軍門に下った私は早川先生のトライフォースを画一的で厳しめだと思っていたのですが、入門してみるとこれほど会員さんたちが好き勝手にしてよくて好きにしなはれと言われる流派も珍しいくらいだと驚いたものです。ヘッドロックに人生のすべてをかけるおじさんとかたぶんほかの流派にいたらファイティングスタイルを矯正させられてしまうような人がぼちぼちといます。噛みつきパスに人生のすべてをかけてしまったようなおじさんでもトライフォースのマスターカリキュラムの試験できちんと合格点を取って柔術に関する森羅万象ありとあらゆる問題の標準的な回答を適切に示した時点で柔術に対する深い造詣と敬意を示すことになるので趣味の柔術の時間ではそりゃもう一生噛みついてくれてればいいわけです。

私も会員さんたちには結構好きにさせているつもりではあるけれど、それにこだわると怪我をするよとか怪我させるよとかの場合は当然止めるわけです。ディープハーフに人生をかけるおじさんが試合に勝ちたいんです次の試合に!と鼻息荒くする場合もよっしゃディープハーフ頑張ってくれよと応援します。でもテクニック検定では文句なしで合格してくれよといいながら(もちろんバッチリ合格です)。

それでもやはり、私の指導者人生で二人目のその技をやめろ発言をしてしまいました。共通点はものすごくかっぷくのいい50歳以上のおじさんだということです。彼らが青帯中級くらいの実力になり、ブルファイターパス、俗にいうトレアナパスを仕掛けようとしていい感じに決めちゃった場合、練習後にちょっといいでしょうかと雑談するのです。

いいでしょうか、散文的に私はつらつらとあなたにいくつかのエピソードを話させてください、と。
私はブルファイターパスを自分のメインのパスガードにしようと思うと、その半年後に必ず半月板を負傷するのです。自分の脳内に正しくて理想的なブルファイターパスがみえているがゆえに、その動きに近づいて再現するとすでに壊れた膝に負担がかかりすぎてしまうのです。
正しいフォームとタイミングのブルファイターパスを仕掛けることは当然必要ですがそれをきめわざにすることはせずにのったりのったりと動いて相手をつぶすスマッシュ系の動き、またはニースルーパス系のうごきできめるようにしました。
トライフォースにおいて上級者向けのパスガード3種の神器は、ブルファイターパス、スマッシュパス、ニースルーパスだといわれています。全部をぐるぐる回してほしいけれど、ブルファイターをおすすめできないひとがいるのです。
青帯で結構いい感じにスパーリングが出来ていて、つまり相手の動きや防御が見えるようになり、自分が理想とする動きもわかるようになり、これはいいかんじの柔術これは結構強引だな、というようなこともわかるようになり、あなたがブルファイターパスをしようと思った場合、理想的なブルファイターパスをイメージできてしまい、しかもしばらくドリルしてスパーリングすればイメージ通りの動きをできてしまうがゆえに、私はあなたの膝を心配してしまうのです。
わかりますよ、ここからどうやって相手の足をつぶしたり腰をつぶせばいいのかという問題ですよね、例えばこうやればだいじょうぶじゃないでしょうかね。
潰そうとするとひっくり返されるのはそういうゲームなのだからたのしんでほしいです。

などと、おじさんが一生懸命にとりくんでいるがゆえに、真剣であるからこそそれを思わぬ方向に誘導すると衝突が起きかねないのだけれども、それでもつらつらとお話しして、端的に言うとブルファイターパスをメインで使うな、と言ったわけです。まったくおなじアドバイス、人生二人目。
端的に言うよりもつらつらつらつらとしつこく語り続けて根負けさせるパターンで誘導してみました、今回は。

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