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【ボクシング】女子PFPシールズが貫禄の4冠防衛。最上位挑戦者コルネホも奮闘


☆6月3日(日本時間4日)/アメリカ・ミシガン州デトロイト/リトル・シーザース・アリーナ
SALITA PROMOTIONS
WBC・WBA・IBF・WBO女子世界ミドル級タイトルマッチ10回戦
○クラレッサ・シールズ(アメリカ)チャンピオン
●マリセラ・コルネホ(アメリカ)WBC・IBF・WBO1位、WBAスーパーミドル級7位
判定3-0(100対90、100対90、100対89)

 現在の女子パウンド・フォー・パウンドNo.1の誉れ高く、自らも「GWOAT(グレーテスト・ウーマン・オブ・オールタイム)」を名乗るシールズが、その名にふさわしい見事なボクシングを繰り広げ、最強挑戦者に判定ながら圧勝を遂げた。

 当初予定されたハンナ・ガブリエル(コスタリカ)が、WBCの課したVADAテスト(薬物検査)で陽性となって出場停止。それを受けての代役となったメキシコ系アメリカ人コルネホは、1階級上のスーパーミドル級でも戦う最上位挑戦者で、体格ではシールズをひと回り上回っていた。

 しかし、会場と同じミシガン州(フリント=デトロイトから100㎞あまり)出身のシールズは、地元の大声援を受けて、初回から猛然とコルネホに迫り、右を放って迎え打つコルネホに強烈な右をリターン。切れ味鋭い左フック、ジャブの3連打、右のオーバーハンドをも加え、あっという間に主導権を握った。

 スピード&パワーの目立つシールズだが、五輪2大会連続金メダルに裏打ちされた技術は極めて高い。2ラウンドには重心を落としたスタンスに切り替えて、クイックな出入りをフェイントとしても使って右クロスをヒット。コルネホの連打を小さなヘッドムーブでひょいひょいとかわすと、右から左、さらに追撃の右をコルネホの鼻先に当てた。コルネホはこれで鼻を痛めたのか、その後もしきりに鼻を気にする仕種を繰り返した。

 ド迫力の右スイングに目を奪われるが、これを意識させておいての右ストレートがガードの内側に滑り込む。さらにリズムと間合いを築く左ジャブも見事。これだけの圧力を受けていれば、並の挑戦者ならばすっかり手詰まりになってしまうところだった。

 しかし、圧倒的にポイントを奪われているものの、コルネホの高い技術力が最後の一手を奪わせない。プレッシャーを受けて下がっているのでなく、小さなステップを駆使して前後左右に移動して、右カウンターを狙い打っていた。シールズももちろんそれを承知で、敢えて右の相打ちを挑んだり、足を止めて右を誘い、そこへ右ショートから左ショートフックを狙ったりもした。けれども、コルネホもまた小さなステップバックでこれをかわす。イスマエル・サラス・トレーナー仕込みのステップワークなのだろう。

 試合全体を通じて、再三再四、猛烈なラッシュを仕掛けたシールズは、右強打でコルネホを何度ものけ反らせた。特に7ラウンドにシールズが披露した右は強烈だった。2テンポ遅らせて打ちこんだそれは、一撃で怯んでもおかしくないもの。だがコルネホは動きを止めずにその後のシールズの煽りにもめげずにしっかりと対応してみせた。

 1発は食らうものの、コルネホは決して連打をもらわなかった。しかも、クリンチに逃れるわけでなく、ブロック、ガード、ボディワーク、フットワークと巧みな防御テクニックを組み合わせて。

 シールズは右のオーバーハンドやスイングを起点にするパターンが多かった。コルネホはこれを腕でガードすることを第一にしながら、時にはステップバックで完全にかわした。普通の選手ならば、空振りしてバランスを崩す。コルネホもそこを狙っていたはずだが、シールズは決してバランスを乱さず、さらに左、そして右ストレートと2次、3次攻撃につなげた。コルネホはこれをかわすのが精いっぱいで、どうしてもリターン攻撃に移れなかった。

 すべての面でシールズが凌駕してみせた試合。だが、コルネホの技術に基づく精神力が4団体統一戦にふさわしい試合を演出した。

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