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“全体”をぼんやりと見た寺地拳四朗。“ジャブ”を見てしまった京口紘人。その差が試合をかたどった

写真_山口裕朗
@FinitoYamaguchi
@finito22

☆11月1日・さいたまスーパーアリーナ
WBC・WBA世界ライトフライ級王座統一戦12回戦
○寺地拳四朗(BMB)WBCチャンピオン
●京口 紘人(ワタナベ)WBAスーパーチャンピオン
TKO7回2分36秒

 左腕1本で演じる“でんでん太鼓”。そんな表現をしたくなるような寺地の間断なきジャブ乱れ打ち。しかも、その腕のリズムに乗って、加速することも落とすこともできるステップの変化がある。そして、腕とステップのリズムは相乗効果を生み、左腕から放つジャブには強弱、緩急がつく。ジャブに気を取られれば、攻め込むタイミングを見い出せない。ステップに目を奪われればジャブを食う。ならば、強引に壊しにいくしかない。それを実現したのが矢吹正道(緑)だった。

 京口は、自身のテンポを守ろうとした。刻みの速い寺地のそれを無視し、ゆったりと作り上げるもの。寺地のテンポに合わせようとすれば、それは寺地のペースに引き込まれることになる。スピード勝負を挑めば、寺地に分がある。自身のリズムを失うことにもつながりかねない。だから、ガードでしっかりと顔面を防ぎ、止まない寺地の左に右クロスを狙った。そうして寺地の左を抑制しようと試みたのだが、腕の上を滑り、顔面に届かせることができなかった。

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