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【ボクシング】全勝対決に圧勝したレイモンド・ムラタヤ。判定に泣いたエドワード・バスケス。彼らに日本人選手との共通点を見た

 日本時間の日曜日、つまり英米等海外の土曜日は、毎週のように「ボクシング・デー」。5日も下記のように嬉しい悲鳴を上げたくなるほどてんこ盛りだった。

4:00 モナコ・モンテカルロ DAZN(matchroom boxing)
8:00 アメリカ・レイクタホ ESPN+(TOPRANK PROMOTION)
9:00 コスタリカ・カルタゴ DAZN(GOLDENBOY PROMOTION)
10:00 アメリカ・ロングビーチ DAZN(WESTSIDE PROMOTION)

 英国や欧州リングのプライムタイムは日本の早朝だが、こちらの昼過ぎくらいが“宴もたけなわ”となるアメリカや中南米では、各地の興行がたいがい丸被りになってしまう。そうなると、テレビだけじゃなくPCやスマホも投入して同時視聴する“聖徳太子”になることもままある。

 基本的に週5で入れている早朝バイトの日は朝4時起き。そのリズムがすっかりでき上がっているので目覚まし時計の力を借りるまでもなく、4時、あるいは3時半にパッと目覚めてしまう。私はこれを“matchroomな体”と呼んでいる。

 が、5日はバイトを入れていたので、モンテカルロをライブで見ることができなかった。でも、DAZNのように見逃し配信を見られないレイクタホはどうしてもリアルで見なければならない。特に「個人的メイン」として楽しみにしていたレイモンド・ムラタヤ(アメリカ)vs.ディエゴ・トーレス・ヌニェス(メキシコ)の“18戦全勝”対決は。バイトを終えてダッシュで帰宅して、2試合前のヘンリー・レブロン(プエルトリコ)vs.ウィリアム・フォスターⅢ(アメリカ)から見られたのでホッとした。

 理詰めかつ、戦略を散りばめたムラタヤの攻防にうっとりした。何気なく放っているように見えるジャブひとつ取ってみても、トーレスに攻撃をさせないよう、腕をガード目的の“磔(はりつけ)”にし、自らは後続打への布石とする。右ストレート、左フック、左右アッパーはいずれも力感なく見えるものの、インパクトの瞬間だけグッと入るため、見た目以上に効くのだろう。ギアの上げ下げが変幻自在で、それをラウンド毎だけでなく、ラウンド中の瞬間瞬間で細かく切り替える。このあたりに井上尚弥(大橋)と共通する安定感を受け取った。
 そしてこの日のパフォーマンスで特筆したいのが、軽やかに行うステップバックだ。初回はこれにカバーリング&ダッキングを入れていたが、前日の三代大訓(横浜光)同様、ムラタヤにも右側に倒す癖がある。貰いこそしなかったものの、トーレスの右に追われて被される危険性を感じた。
 すると2ラウンドからはそのよけ方をパッタリとやめた。インターバル中にロベルト・ガルシア・トレーナーに指示を受けたのかもしれない。“隙”はしっかりと排除して、他の方法で埋め合わせる。それがステップバックだ。その俊敏さもまた井上尚弥同様に、きわめて動物的だった。リズムに乗っているからスタミナも使わない。“一連の動作”の流れに沿って、スムーズに連発していた。

 エフェ・アジャグバ(ナイジェリア)vs.ジョセフ・グッドール(オーストラリア)を見届けて、モンテカルロのセミへ。シベナティ・ノンチンガ(南アフリカ)の衝撃KO負け、というよりもアドリアン・クリエル(メキシコ)の鮮烈戴冠と表したい。世界初挑戦の気負いなく実に落ち着いた様子で、立ち上がりから、行きすぎず引きすぎずのとてもよいバランスでプレスをかけていた。ボディブローを過剰に意識させておいての右ボラードは、狙いすました一撃だった。
 強打に自信を持ちすぎているジョー・コルディナ(イギリス)を、エドワード・バスケス(アメリカ)はうまくコントロールしていた。小刻みなボディムーブでリズムを築き、小さなボディワークでコルディナの攻撃を巧みにかわしてテンポ良いショートパンチを的確に集めた。ハイガードに構える腕を適宜動かして攻撃を寸断し、同時にリズムを取る。そのやり方やボディムーブの仕方等は、豊嶋亮太(帝拳)を苦しめた石脇麻生(石田)ととても良く似ていた。石脇は自らプレスをかけていく場面が少なかったのが惜しまれるが、バスケスはそういうシーンを何度も作っていた。けれども公式採点にそれが反映されず、コルディナがガード上を叩く強打が評価されすぎていたのは気の毒に感じた。

 カルタゴは、地元で絶大な人気を誇るヨカスタ・バイェ(コスタリカ)が例によってしっかりと安定した下半身を駆使し、バランスの良さ、スピードを生かして変則アナベル・オルティス(メキシコ)を寄せつけなかった。バイェが2発打って攻め入ると、オルティスはクリンチで切り、その離れ際にオフバランスからのラフなスイングを狙う以外、方策がなかった。


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