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【ボクシング】元王者パスカル敗れる…IBF挑戦者決定戦で新鋭アイフォートに0-3完敗

☆3月16日(日本時間17日)/カナダ・ケベック州ラヴァル・プレイスベル
IBF世界ライトヘビー級挑戦者決定戦12回戦
○ミハエル・アイフォート(ドイツ)5位
●ジャン・パスカル(カナダ)3位
判定3-0(118対110、115対113、117対111)

 初回からテンポよくリズムに乗ったアイフォートの“ヨーロピアン・スタイル”を、パスカルはとうとう打ち崩すことができなかった。

 やや右に傾きながら、左グローブを頭の上からアゴ前までと大きく上下させながらリズムを取る25歳は、立ち上がりからスムーズに左ジャブ、右ストレートを伸ばしていった。

 WBC、WBAと世界王座を制し、これまで333ラウンドを戦った経験と実績に大きく優る40歳のパスカルは、当初こそ悠然と構えて若者の動きをじっくりと見ていたものの、大きく上下動する左グローブが、胸、そしてアゴ、鼻先と飛んでくるタイミングをつかめない。そして追撃の右はパスカルの左ガードの外側を叩き、そこに意識を持っていかれると、ガード間にストレートを通される。早々に後手に回らされたパスカルが、思い切って飛び込みながら左右フックを振り回せば、これを軽快なフットワークとサークリングでかわされてしまう。

 長丁場を想定し、無駄な労力は極力排除すべき、と考えたのか、パスカルは両ガードを固めて自ら後退し、ロープを背負って誘う構えを早い段階で示した。が、それをもアイフォートは利用した。速いストレートコンビネーションを突き刺しては、リターンの左フックカウンターを狙うパスカルの意図を透かしていく。パスカルも堅いガード、ボディーワークでクリーンヒットをなるべくさせなかったが、手数も見栄えでも圧倒的に先行されてしまった。

 5ラウンドあたりから、徐々にスピード、キレを欠き始めたアイフォートに、パスカルのセコンドは今がチャンスとインターバルで焚きつける。パスカルもなんとかアイフォートの動きを止めようと、ストレートボディー、接近しての左右フックボディーを繰り出すのだが、いかんせん単発。パスカルのフルスイングをかわしながら、アイフォートはワンツー、ワンワンツーとシンプルながら的確なコンビネーションをヒットさせ続け、ペースとリズムは決して渡さなかった。

 アイフォートのストレートを、パスカルは頭を下げて回避する仕種が再三再四繰り返される。目も完全に切って、下を向いている状態だ。ここでアイフォートがアッパーカットを繰り出せれば、ストップやKO勝ちに持ち込めたのかもしれない。だが、アイフォートは若さに似合わず堅実で、慎重派。パスカルがノールックで振るのを警戒していたのだろう。実際、パスカルは何度も“死んだフリ”からの逆転の一打を狙い続けていた。それがアイフォートの顔面をかすめることもあった。けれども、アイフォートはしっかりと反応し、若干のスウェーバックなどでジャストミートさせなかった。

 極力動かずに貯めて爆発する。それだけを狙っていたパスカルは、終盤、大劣勢からの逆転を狙って、飛びつくような攻撃を仕掛けたものの、最初からガッチリと出来上がった流れは逆流しない。逆に、コツコツと当てられてきたパスカルに、疲労よりもダメージが見てとれた。最後まで戦い抜いたことだけが、アピールできたポイントだろう。

 自身が立ち上げたプロモーションも共同で開催したこの日の興行だったが、ジャッジは1名を除いてしっかりと冷静に試合を評した。

 上手いボクシングで初志貫徹したアイフォートは、保持するIBFインターコンチネンタル王座以上の勲章を手に入れた。が、3団体の王座を持つチャンピオン、アルトゥール・ベテルビエフ(ロシア)への挑戦は叶うのだろうか。いや、もし叶ったとしても、この日の戦いぶりでは心許ない。決定力不足という課題が浮き彫りになったのも事実だった。

《ESPN+ライブ視聴》

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