【構想の技術】What if/「?」
プロットなし、一発本番でただひたすら書く——この方法でわたしは長い間小説を書いていました。きっとそれは(というか確実に)、構想を練ったりあらかじめ叩き台を作ることが苦手だったから。
もちろん、事前に骨格を作らず、思考の流れを追うように執筆する作家さんも少なくはないと思います。でも、わたしはそれでたぶん(というか確実に)、執筆で行き詰ってしまった。
そこで初心に返り勉強しようと思って手に取ったのが、フィルムアート社の「アウトラインから書く小説再入門」。いくつか取り入れそうだな、と思った点を今回は共有したいと思います。
【アウトラインとは】
そもそも「アウトライン」とはなんのこと? この書籍によれば、「『失敗を前提とした』下書き」のことを指しているのだそうです。非常に粗い初稿ともいえるかもですね。
別にアウトラインを決めたからといって、それに縛られることもないんですよね。きっちり設計どおりに物語を進めてしまえば、書きながらひらめいたことも抑圧してしまいかねないし、何しろ執筆それ自体が非常に楽しくない。
でも、はじめて行く場所にGoogleマップで見当がつかなければ、いつまでたっても最終地点に到着しません。アウトラインはある程度の目印、および目安となるものなのかも。
【構想するために必要なツール】
デジタルツールに慣れていて、かつ管理するのが得意な人はExcelなどで時系列、エピソードなどを洗い出すのもひとつの方法ですね。でも、この書籍で推奨しているのは、紙とペン。手書きという原始的な(?)方法のほうが、「驚くほどのびのびとした発想が生まれます」と記載されています。※p.41
今わたしは百均のノートと青ペンで構想を洗い出しているのですが、ノートのほうが自由度が高いですね。Wordで書くのは整理整頓された文書ですが、ノートであれば記号で関係性を簡単につなげたりすることもできる。絵も描けますし。
【構想を深掘りする:What if/Q&A】
本題に入りますが、では構想を練るのにどんなアウトライン(およびヒントとなるもの)を使えばいいのか、という問題。
そのアンサーは「もし~~なら」という"たられば”と「Q&A」という疑問です。
書籍の文を引用すると、
What if(もし~なら)→答えを考える→Answer(結論)をだす。の流れなのかな。
どんな小説にも「もし~したら」が根底にある、とのこと。たしかに古典作品においても作者が意図したかどうかは不明ですが、この法則はあてはまるようですね。
・「変身」/フランツ・カフカ
→もし、平凡な会社員が朝目覚めると虫になっていたとしたら?
・「高慢と偏見」/ジェーン・オースティン
→もし、立場も違って反りも合わなさそうな男女が出会ったとしたら?
・「罪と罰」/ドストエフスキー
→もし、貧乏な青年が独自の偏った理論から殺人を犯したら?
etc.
物語の構想のはじまりを「もし~したら?」の法則にのっとって案を出すのもひとつのヒントなのかも。
さらに"たられば”から深掘りするには「?」が有用。同じく、書籍から引用すると、
疑問符を打ってそれに対する答えを埋めていくわけなんですよ。
この部分を最初にわたしが読んだとき、「もしかしたら、設定を詰めるときに使えそうかも」と思いました。
フランツ・カフカさんには申し訳ないけど、イメージとして考えたのはこんな感じです。
「変身」/フランツ・カフカ
<もし、平凡な会社員が朝目覚めると虫になっていたとしたら?>
・主人公(虫)を最初に発見するのは誰?
・主人公(虫)はどんな家族構成?
・虫に変身したとして、脚は何本なのか? 身体は芋むし? それともカブト虫みたいな固い虫?
・主人公が変身していちばん本人が不安になることは何?
・・・
「?」で最初のアイデアから掘っていけば、ある程度設定がまとまるかな、と思いましたね。
〇
<本を読んでみて>
普通の創作本より(と言うのは失礼ですが)、かなり具体的なヒントが書かれてあって有益だなと思いましたね。はじめは、アウトラインが具体的すぎるカチカチの本かなと思いましたけども。
自分の想像力をフレームワークのようなもので抑えつけるのではなく、逆に想像力を引き出すフックのようなものを紹介しているのかなと。
わたしは現在創作に行き詰っているので、打開策となるかもしれません。
(参考文献)
「アウトラインから書く小説再入門」
/K・M・ワイランド=著 シカ・マッケンジー=訳
(フィルムアート社)