【詩】「痛み」ほか

「痛み」

痛みは わたしを変えてしまったようだ
生きることの意味など 探さなくてもよかったのに
弱い人の心など 知らないままでいられたのに
痛みは 世界の色を変えてしまったようだ
踏み潰された花に 何かの暗喩を見出したり
画面に表示される言葉の 鼓動を感じたり
詩のなかに 匂いや吐息があることを知り
痛みは わたしを変えてしまったようだ
感じなければ 言葉を言葉として受け取るだけだった
傷つかなければ 利己的にも誰かのためにも生きなかっただろう
痛みは わたしに何を教えてくれたのだろうか
救いの言葉を探しているわたしに
何を教えてくれたのだろうか

「17歳の僕」

それが夢だと信じて 駆け抜けてきた 17歳の姿のままで
振り返ることさえ 許されないものだと信じ
ただひたすら 乗り越えることを目指していた
でも もう走るのをやめたいんだ
大人にならないままで 君と一緒に歩くことはできない
走ってきたのに いつの間にか君が遠く感じられる
走ってきたのに 君のほうが僕を追い越しているんだ
僕は17歳のまま 君は大人になっていく
愛しているのに 君が満足するようなことはひとつも言えない
言葉は不自由にさせる そう嘆いたときもあった
でもそれは 言葉の使い方を知らないだけだった
言葉で感情の輪郭を 辿っていくことをしないだけだった 
子どもでいたい と抗ったときもあった
でも 大きな身体のまま 子どもでいるのは不自由だ
僕の姿に期待して そして失望していく人たちを見てきた
今の僕は 見せかけの大人で それは僕が厭っていた存在と同じ
また走るとするなら それは夢のためでなく
自分を完成させるためだろう
君と再び 同じ視点で話せるように
17歳の続きの物語を 始めるように

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