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「マネーボール」~大谷翔平の打順はなぜ2番なのか~

noteで最初に掲載する「ゆる~くビジネスに役立つかもしれない映画ブログ」です。今回は、「マネーボール」を取り上げます。

『マネーボール』は、2011年のハリウッド映画で、マイケル・ルイスの著書『マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』を原作とした実話に基づく物語です。オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)、ビリー・ビーンが統計データにもとづいて選手を客観的に評価する『セイバーメトリクス』を用い経営危機に瀕した球団を再建する姿を描いています。主演のビーン役をブラッド・ピットが演じました。

あらすじ

かつて将来を嘱望された野球選手だったビリーは、プロの道に進んだが大した成績を残せず引退する。スカウトを経てオークランド・アスレチックスのGMに就任していたビリーは、翌年(2002年)の戦力補強のために資金を求めるがオーナはつれない返事しかしない。

ビリーは、他チームで肩身の狭い思いをしていたイエール大卒のスタッフ、ピーター・ブランドに出会、彼の、各種統計から選手を客観的に評価する『セイバーメトリクス』興味を抱く。ビリーは、ピーターを引き抜き、他球団で埋もれた戦力を発掘し、低予算でチームを立て直すことに挑戦する。

『セイバーメトリクス』

セイバーメトリクスでは、アウトを取られなければ試合が終わらないという考えから出塁率が重視されます。スカウトの目を信用せず、数字に表れた成績を重視、打率は低いけれど出塁率は高い打者を、低い年棒で引き抜いて試合で使いました。
 
試合に勝つこと、すなわち得点することを重視し、以下の方程式を導いています。
 
得点=(ヒット数+四死球)×塁打数÷(打数+四死球)
 
四球で塁に出ることとヒットを打つことは同じではない、すなわち、野球はおもしろくなければ観戦する意味がない、という考え方があり、またセイバーメトリクスが広く知られると、埋もれていたはずの選手の年棒が上がるなど、理論の運用方法には変化があります。しかし、データ分析に基づいて戦略を考える手法は定着しており、これは大谷翔平の打順が4番でなく2番であることにも表れています。
 
野球だけでなくサッカーなど商業的に成功しているスポーツはみな同じですが、資金が潤沢=よい選手を集めチームは強豪、という図式が成り立っており、人口の多い都市部のチームは強くなりがちです。米国メジャーリーグでも、ニューヨークやロサンゼルスのチームは強く、サッカーなら、マドリード、バルセロナ、パリ、ローマ、ミラノなどのチームはやはり強いですね。日本は、海外と比べるとさほど差がなく、言い換えると抜き出たチームが存在しづらい、と言えそうです。都市と地方の格差問題と捉えることもできますね。だからこと、資金力がない弱小チームが躍進すると、心躍るストーリーになりやすいのですね。サッカーでは岡崎慎司がいた頃のレスターが思い浮かびます。個人的には、レスターの大学院に在籍したことがあるので、「レスターってどこ?」から「サッカーで有名になったレスターね」の変化は、自分のことではないものの、「してやったり!」と受かれた気分になったものです。
 
 
この映画は実話に基づいており、統計学の考え方がスポーツの世界に応用されはじめたときの例として、ビジネスの観点でとても興味深いモノになっています。野球でデータ分析がこんな風に役立つなら、自分のビジネスでもあんな風に役立てられないだろうか、とアイデアがアタマの中を駆け巡るきっかけになる映画です。
 

ワイン価格予想


ひとつだけビジネスの事例を紹介しておきます。
オーリー・アッシェンフェタールは、ブルドー地方のワイン価格を、冬期降水量、育成期平均気温、収穫期降水量を説明変数として、従来の専門家より高い精度で予想することに成功しています。
これを数式で表現すると、
 
ワインの質
=12.145+0.00117×(冬の降雨)+0.0614×(育成期間平均気温)-0.00386×(収穫期降雨)
 
この式に数値を当てはめれば、専門家以上にワインの価格を予想できるのですから、専門家としてはたまったものではありませんね。
 
これらの分析手法は、統計学で回帰分析と呼ばれ、得点やワインの質を目的変数、ヒット数や降雨量などを説明変数として計算します。Excelに分析機能が組み込まれているので、もっと複雑な計算(説明変数が16個まで)でも、一瞬で解を導きます。
 

映画について、ちょっとウンチク


この映画は、ビジネスのことは脇において、エンターテイメントしてしっかり楽しめる作品に仕上がっています。データ分析の専門家を演じたジョナ・ヒルは、いかにもオタクっぽく役柄を演じているコメディアンで、映画監督・脚本家としても活躍しています。ただ、実在のモデルはオタクっぽい感じではなく、あまりにイメージが違うことから実名を使うことを拒否したそうです。また、フィリップ・シーモア・ホフマン、ロビン・ライト、クリス・ブラットなど出演陣も豪華です。
 
米国アカデミー賞の受賞はなりませんでしたが、作品賞、主演男優賞、助演男優賞、脚色賞など6部門でノミネートされました。
 
監督のベネット・ミラーは、本作の他、カポーティ、フォックス・キャッチャーといった商業的にはイマイチだけど、作品としては評価されている映画も撮っています。フォックス・キャッチャーでは、カンヌ映画祭の監督賞を受賞しています。
 
 
 
参考文献
イアン・エアーズ 「その数学が戦略を決める」文春文庫
 
Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB_(%E6%98%A0%E7%94%BB)
 
映画チラシ画像
https://moviewalker.jp/mv46097/gallery/2/
 



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