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正直シグナル―― 非言語コミュニケーションの科学 単行本 – 2013/3/23

今日はこれから企画承認会議。直近3か月を費やしてチームで作成してきた新規案件について、部門長から正式GOをもらうべく発表説明を行うことになっている。会議室に入ると、すでに数名の責任者が待機していて、それぞれ黙々と手元のPCに向かっている。あれ? 今朝の空気はなんだかおかしいぞ? 直前の承認案件の議論で何か揉めたのだろうか? プロジェクトを早く起動させたかったので今朝の議題に差し込んだのだけれど、無理せず来週にしておけばよかったかな?

会議室に入った途端、なんだかマズい雰囲気を感じた経験はないでしょうか? まだ誰も発言していないのだから、ある意味まったく“情報”は得られていないにもかかわらず、ほんの1~2秒で“それ”を察知するような体験のことです。これは、例に挙げたビジネスの最前線だけでなく、気心知れた友人同士でも、家族内でも、逆にまったく面識のない人たちが集まった場でも、互いに言葉を交わすわけでもないのに確実に感じるものです。「空気を読む」なんて言葉があるくらいですから、存在を否定する人はいないでしょう。でも、“それ”って何?を明確に答えられる人はほとんどいないのではないでしょうか。

本書は、“それ”の実態を科学的にあぶり出そうという試みの話を扱っています。そして、正体を明らかにし意図的にコントロールすることによって、より発展的な未来を描こうという提案につなげていきます。

確かに、人間が意識の有無に関わらず発信しているあらゆる情報を機械が読み取ってくれて、本人が気づく以前に潜在的な要望を察知して提案や警告をしてくれるようになったら、個人として見落としがちなチャンスを逃さずに済んだり、より安全な暮らしが得られたりといった利便性を高められるかもしれません。さらに、個人の云々に留まらず、著者がむしろ強調するのは「ネットワーク・インテリジェンス」であり、対象を社会という単位にしているので、よりポテンシャルを感じさせます。

一方で、リクエストに対する応答の正確性を高めるには、それ相応の情報について量・質ともに必要になります。そうなると、その管理、つまりデータセキュリティの発達も並行して欠かせません。テクノロジーだけでなく倫理や法整備の重要性についても本書では言及されていて、おそらく実際の利便性向上は、これらの発達がどれだけ同期していけるかにかかっているのだろうと思いました。

原書の刊行が2008年ですから、すでに15年も経過していて、昨今のAIテクノロジーが組み合わさったら、技術的にはかなりすごいことが実現できるのは間違いありません。すでに実用化しているものもあるんじゃないかと調べてみたくなります。あるいは、私が無頓着でまったく気づいていないだけで、すでに組み込まれていて、知らずにどっぷり首まで浸かっているような気もしてきました。

「あれ? このスマホ、なんで急にこんなこと伝えてくるんだろう?」
「あれ? なんで政府はそんな意思決定をしたのだろう?」
「あれ? なぜ今朝の妻は機嫌が悪いのだろう?」

なんとなく思い当たる節があるかも…。皆さん、どうです?

(おわり)

※新装版が出ているようです。


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