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EMSに関わった約5年間分の棚卸し


さて、2019年から事務局業務のお手伝いをしていましたEMSという社会人向けのスクールがあるのですが、こちらが2024年9月から、ボランティアを中心とした体制に変更になるということで、私は事務局業務は有償仕事だと思っていますので離れることになりそうですが、それに際し、5年間の仕事を棚卸しろ、と言われまして、ボランティアを中心とした体制ならば、では、関心のあるすべての人に引き継ごうと、こうして記事化しております。

振り返ってみても、なかなか特異な経緯で成立したスクールであったことは間違いなく、その中で自分は何をしてきたのかを記録することは、これまで様々な団体に関わりつつ、あまりしてこなかったこともあり、貴重な機会だと思いました。

基本的にはイニシャルで記事化していきますが、問題なさそうだな、という方についてはお名前とかリンクに変えていきますので、もし、お心当たりある方は個人的にご連絡ください。(俺の名前も出せ!という方も是非!)

最後に、この役割を介して、いろいろ関わりを持っていただいた皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

EMSってなんだ?

EMSというのは、Essential Management School の略で、同時に、ここで学べるとされている本質行動学(Essential Management Science)の略でもあり、同時に、運営している一般社団法人EMSのことであったりもします。

もし、ご興味あれば、私は関わっていませんが、こんなイベントも企画されていますので、ご興味ある方はどうぞ。

始まる前の話

さて、ここに関わることになった、そもそものきっかけは、というと、これがなかなか難しいのですが、直接的には、下記の学会誌です。

2018年に刊行された、こちらに掲載されている「コーチングの本質とは何か? 書籍を契機とした本質観取の実践と方法」という論文。手法が質的研究であり、さらに長大な論文であるということもあって、掲載してくれそうな学会誌がないということで、投稿いただいたのが始まりでした。

こちらの論文は私の最初の著作、『人の力を引き出すコーチング術』をきっかけに、コーチングの本質に迫る論文なのですが、コーチングの論文というよりも、対話によって深めていくその科学的方法論の論文となっています。

さて、実は、そもそも、なんでこの論文の著者の家にこの本があったのか、と言えば、さらに遡って、2013年1月にコーチングバンクにお問い合わせをいただいてお知り合いになった秋田稲美さんとのご縁から、たまたま2012年に刊行した「支援対話研究 0号」に掲載された「支援対話学とは何か?」の中で、書籍『構造構成主義とは何か?』を引用していたところ、その本の著者の奥様と一緒に、被災地の女性にプレゼントを贈る活動をするから手伝ってほしい、と言われたのがきっかけ。

そこで、奥様にお会いし、自著もお渡ししたのが、どうやらそのままになっていたようです。

で、肝心の旦那の方ですが、下記の書籍が出版後に、早稲田でイベントがあるって情報を、奥様よりいただきまして、それで参加したときにお会いしました。

この本の刊行が2014年3月ですから、きっとそのあとですね。このときは、登壇された池田清彦先生が面白すぎて、びっくりしました。YouTube貼っておきます。

ですので、2018年はその4年後ですから、まあ、人生、何がきっかけにどうなるかわかりませんね。

で、投稿された論文に戻りますが、とにかく規定よりも量が多いのと形式が特殊なので、結局、特別寄稿という形で掲載したのですが、そのやりとりが終わって一息ついた頃に、学校を作りたいので事務局を手伝ってくれないか、と打診を受けます。

当時、私は抗がん剤の副作用で歩けなくなっていた母親の介護のために自宅に戻り、看取り後の介護ロス的な状態でした。少しお手伝いしていた研修会社の社長も辞めており、そんなに忙しくもなかった頃です。ですので、お話だけでも聞くことにしました。

まずは、事務局を既にお願いしているというYさんにお会いし、それからオンラインでTさんにお会いしました。しかし、一向に学校のビジョンがわからないのでその旨を話すと、早稲田のMBA秋期にやっている授業のTA(ティーチングアシスタント)で入ってくれ、と言われましたので、授業の動画を撮影する係ならやってもよい、と引き受けました。これが2018年の夏だったように思います。

その講座は、組織心理学系の講座でしたが、入れ替わり立ち替わりゲスト講師がやってきてしゃべるスタイルでした。そこに集まった人が絡み合って、いわゆるEMSのゼロ期がスタートすることになります。

まずはコンセプトメイクですが、これは天才プロデューサー兼編集者のIさんが加わりました。彼の面白がって形にする能力は素晴らしく、この記事を書いている時点でもHPにメッセージが使われています。

その後、人脈の広いSさん(Aさん?)が加わります。この方はありえる楽考(がっこう)という独自のグループコーチングのコミュニティを作られていて、そのノウハウを提供してくださいました。

人脈といえばもう一方のSさんを忘れてはいけません。この方がWさんを紹介してくださり、たまたまいろんな事情で使い道に困っていた、お茶の水の会場を格安で貸してくださる話がまとまったのでした。

ITツール方面でも、まずはLMSですが、TAさんの中にたまたまコードタクトという会社の後藤さんがいらっしゃって、そこの製品を使わせていただくことになりました。ここのチームタクトという製品は企業向けで、弊社でも別なプログラムで使わせていただいています。

最後に、先のSさんの紹介で、Zoom革命でおなじみの田原真人さんが加わります。この方の影響でEMSは最初から、ハイブリッド配信を含めてスタートすることになりました。

ちなみに田原さんはEMSスタート後、最初、オンライン側のファシリと放課後の酒場などの運営をされていて、こんなに面白い人が居るんだと、田原さんの「自己組織化」の講座にもその後、申し込みました。その田原さんは今は新しい概念の雑誌を編集されているそうです。詳しくはこちらを。

話を戻しますと、そういえばこの頃、久々に大久保寛司さんや本間正人先生にも再会することになったのでした。

ちなみに、こちらは大久保寛司さんの授業から生まれた本です。

2019年1月、EMS0期 始まるが…

と言いながら、実は、私は2019年の開始当時は現場に居ませんでした。研修会社の社長は辞めていましたが、まだまだ研修のお仕事は残っており、ちょうど始まった頃はタイへの海外出張なんかも入っていて、戻ってきてみれば、こういう体制で開始されていた、ということを知りました。

実は私も参加者になっており、しかも、チームメンバーの学びの促進役であるFA(ファシリテイティング・アシスタント)という役割になっていました。まったく聞いていないw ただ、最初にお会いしたYさんも、ということでしたので、実質的には何も問題はなかったように思います。その後も出張が続き、リアルに会場に行ったのは2回くらいで、あとはZoomを使ったリアルタイム参加、あるいは動画を見てから参加する反転学習型の参加でしたが、このオンラインの学び方が快適で、これはすごいな、と思いました。

やっと事務局に参加

正式に事務局に参加したのは2019年の5月からだったようです。帰国してすでに進行中のゼロ期と呼ばれるプレ開催時に驚いたのは、最初の申し込み時に参加者に約束していた「名刺」が完成しておらず、修了証ならびに副賞としてクリスタルを明記していたのに、まったく手配ができていないという時事でした。

詳しく話を聞くと、なんていうのか、寄せ集めの民主主義的な、、、というかメッセンジャーでの議論でやりとりがされており、決まったのか決まってないのか、それもよくわからないまま時間が過ぎて、、、という印象でした。そこで介入することにして、なんとか両方とも全員納得させることができ、問題なく修了式を迎えることができました。もっとも、私は修了式の日も仕事があったので、講義的な部分は出れず、修了証の授与と懇親会の最後の方に出た記憶があります。

さて、このように、善意で集まっているがゆえにマネジメントが機能せず、物事が決まらないのはともかく、提供しているもののクオリティもまちまちだったので、1期と呼ばれる2回目の開催時には、2つの点を改善することにしました。

ひとつは会場についてですが、受付と懇親会です。特に懇親会は、メニューの改善と会計方法の改善、全体的なオペレーションの改善を行いました。もうひとつはオンラインで、ハイブリッド配信のクオリティが低すぎて、とても会場と同じ体験とはいいがたいところがありましたので、0期参加のKさんからの紹介で、チームFの福島さんに関わっていただくことになりました。ここからコロナを経て完全オンラインになる話は、ドラッカー学会の学会誌に投稿させていただいた記事がありますので、興味を持たれた方は御覧になってみてください。

(2024年のNPO法人化に際し、非公開になっています。公開されたらリンクしますので、今しばらくお待ちください。)

他にもトピックとしては、2020年1月から、運営団体が一般社団法人EMSに変更になった、ということでしょうか。この設立手続き自体には絡んでいないですが、絡んでいれば、もう少し定款なども工夫できたのかな、と今は思っています。

修了生コミュニティを活性化する

と同時に、修了生から会費を取ってコミュニティ化するという、EMSi Fellow Community という試みも始まりました。これも仕組みや名前、運用が決まるまでは大変でしたw

当時は戦略マップの考えを使って、このような全体デザインを描いて、様々なイベントなどを行うことによってコミュニティ化しようということをかなりやっていました。主に交流の場はオンラインですが、各地での懇親会のサポートなど、いろんな仕組みを考えましたが、何がどれだけ効果があったのか、ということは、アンケート等を取る機会がなかったので、検証できてはいません。

その後、経営がいろんな意味で苦しくなっていくに従い、集客告知掲示板のような投稿が増えていってしまいますが、これも仕方のないことかもしれません。

コロナショック!

話は少し戻ります。いろんな意味で時代の先を行っていたEMSですが、2020年からのコロナでいろいろ状況が変わります。いろいろ紆余曲折はありながらも、結局はリアル会場での開催をあきらめ、完全オンラインに、しかもその後、反転授業中心のシステムに変更します。これを御覧になっている皆様もそうだと思いますが、こっからいっきにZoomが普及し、さらに、マイクロソフトやGoogleもおいつけおいこせと、どんどん開発アップデートされていきます。

この時期に開催されたのが3期ですが、完全オンラインになったということで鳴り物入りで人を集め、なんと300人も集まります。結果として、あちこちで無理が生じてしまい、コース全体の満足度としては疑問の残るものとなりました。この3期で去って行った方も多かったように思います。

それはともかく、コロナ・ショックを完全オンラインという形で乗り切ったEMSですが、実はこのとき、ひとつのEMSの優越性がなくなりつつあったのも、ひとつの事実としてはありそうだな、と思っています。オンラインイベントも当たり前になっていく時代ですね。

このころ、個人的には、Zoomホストをやりたい方向けの講座というのを無償でやっていました。何名かはそれをきっかけにZoomホストのお仕事もやられるようになったようで、少しは意味があったかな、と思っています。

複数コース展開で道を拓く

さて、話をEMSに戻しますが、それでも4期、5期と重ねるわけですが、問題だったのは、このあたりからじわじわと人件費というか固定費が増えていったことです。手伝ってくれるという人を固定費スタッフとして増やしたり、お金が無くなるので既に居る人の給料を減額する、などという風に、あまり先を見ないで泥縄式にいろんな意思決定がされていましたが、根本的なところでいうと、これらの原因は、数字による経営管理が行われていないことだと考えました。

そこで、提案して数字による管理を取り入れ始めました。いきなりは無理ですので、じわじわと改善していく形で、会議の中で数字が話されるようにしていきました。

これまでEMSは基礎コースを中核として、他に単科コースという短いコースを開催していましたが、どちらも利益率が低く、事務局の固定費は計算に入れられない、という問題を抱えていました。これを数字で見れることにすることにより、だったら何をすればいいのか、ということを先回りして考える、という経営に切り替えようとしました。

となると、次はどのように利益を確保するか、ということですが、どのようなサービスや商品でも陳腐化は免れないとしたら、普通に考えて、新しい商品やサービスを開発するしかありません。

まずは、EMSの基礎原理コースでも講師を務められていた佐藤等先生から、ドラッカーをもっと絡めたコースはできないか、と企画が持ち込まれます。いいですね、ということでお膳立てして、新コースとして立ち上げました。

そして個人的に大きかったのは、2023年に開催にこぎつけたソーシャル向けのコースです。こちらはリリースも流させていただきました。

このコースは、非営利セクターの中で部下やチームを持っていて、マネジメントに苦労されている方の悩みを解消するコースとして立ち上げました。ちょうど企画のお手伝い兼コーチとして携わった、2020年~2021年に、AVPNさんで開催されたリーダーシップ・アカデミーのコースの日本での開催が無くなったことで、その代わりにもなるな、という計算がありました。(講師も一部、被っています。)

参考に貼っておきます。

もともとAVPNにはコーチが伴走するプログラムでしたので、先生が教えるというよりは、対話中心でお互いにコーチングするような、そんなコース設計にしました。他にもいくつか工夫した点があります。

・コーチング的にするために、事前の問い、をまず考えてもらう構成にした
・講師陣は、EMS基礎原理コース修了生のみ、とした
・参加者は全員に対して面談を行い、期待値をマネジメントした
・コース設計に際しては、EMSi Fellowでこの関連分野に関心があるメンバーに企画段階から意見をもらい、チェックしてもらいながら立ち上げた
・理想の講師に理想のタイミングで登壇してもらうために、動画撮影日と授業日を分ける運営をした
・同じ組織から複数名参加するように面談時に促した

このコースはゆくゆくはソーシャルセクターのマネジメント職へ進みたい方のエントリーコースに、と考えていたのですが、まさかのこのコース運営がきっかけで、いろいろあって、自分が大学の非常勤講師になってしまうとは思っていなかったので、そのアイデアは大学の授業の方で展開したいと思っています。人生って何がどう転がるかわかりませんね。

他にも、コースの構想はいくつかあったのですが、それらは時間切れ、ということになってしまいました。

最後の最後には、コースは重いな、と考え、ソーシャルで使ったコンセプトである「寄付講座」というコンセプトを「一回きりの単科コース」に当てはめることを思いつきます。そもそも「単科コース」は利益率が低いことと、2回目以降の集客がキツくなることが問題でしたので、その問題を消してみた、ということになります。この寄付講座の初回は私が講師を務め、「チームコーチング」について行いました。この成果は文章として、学会誌で紹介させていただく予定です。(原稿は完成していますが、学会誌の発行が遅延しています。カミングスーン!)

テキストを作り、販売する

話を少し戻しますが、基礎原理コースがやりっぱなしになっていて、きちんと振り返りとそれに基づく改善が行われていないことに課題を感じていたので、3期の後、4期ぐらいから、これもEMSi Fellowのメンバーで募集して、振り返りの会を行うようにしました。この振り返りも2段階に設定していて、まずは、ZoomホストやFAといった、運営に関わった人からの振り返りを聞き、それをまとめて毎期の流れと改善ポイントの中に落とし込み、それを発表してフィードバックをもらう、というものでした。

この中で、ひとつ明確に欲されていたのが、本質行動学のテキストでした。ばらばらのPDFで提供されるのですが、いまいち軸というか、流れがわかりにくい。

ということで、6期の際にテキスト化して販売することにしました。過去の参加者にも売れてプロトタイプ版は完売。その後、2回擦り増ししている現状です。

このテキストを作る、という流れは、先に紹介したドラッカーコースにも受け継がれていて、このテキストだけでも価値がある、と評判でした。

EMSの運営に関わって思うこと

さて、ここまで振り返ってみて思うのですが、この手のスクールの経営ってなかなか難しいな、ということです。

2018年11月の段階で、学校作るのにはこれくらいの機能が必要だよなぁ、と思って作った図が下記になります。とっても人がたくさん必要そうですw

筆者作成

一応、最初にYさん達と話していたのが、私塾にしない、ということでした。私塾であれば、そもそも、手伝う理由はないよね、と。そういうこともあって、運営を一般社団法人にしたのですが、その代わりに1人が何役もこなさないといけないという運営になってしまうのはこの図からも明らかです。実際にはいろいろ手すきの部分があり、それでいつのまにか人が増えていくのですが、機能から人を探していないので、人が増えると誰が何の仕事をしているのかがわからなくなる。そんな状態になってしまっていたのかな、と思います。

この図を見ながら、結局のところ【マーケティング機能】が弱いままでしたが、その理由は【研究所】の部分があまり目に見えた成果を出すことができず、カリキュラム管理と学生管理にばかり時間を割かれていた組織になってしまっていたのかな、と思います。

自分も現在、コーチングをオンラインで学べる半年間のコースを持っていて、細々ながらも10年以上、続けていますが、これは毎年毎年の参加者が一定数であるのと、参加者からの紹介の口コミで続いていること、そしてプログラム開発者はコース運営者に任せて、何かフィードバックがない限りは介入しない、という運用をしているから成り立っています。

そういう意味では、正式な研究者がたった1名の体系が完成されていない学問体系を元にスクール運営をするのは、なかなかリスキーだし、運営側のコストもかかりそうだな、と客観的には思います。

今回、振り返ってみて、EMSがちゃんとしたスクールとして発展するためには、もう少し早い段階で、研究所機能を強化し、研究者を認定する仕組みが必要だったな、と思ったのですが、それにつけても、時間のかかる話ですので、もっとファンドレイジングの仕組みは早めにきちんと考えておいた方が良かったような気がしていますが、またこのあたりは、どこかの団体をサポートするときにでも、活かそうかな、と思っています。

引継ぎが必要なこと

ちなみに、この8月末までの事務局業務ということで、やり残したことはたくさんありそうですが、だいたいの仕事はすでに手放していますので、残っているのは上に書きましたテキストの発送作業と、小口現金の管理くらいですかね。

9月からは大学の非常勤講師としてのお仕事と、企業向けの研修講師のお仕事なんかを、真面目に頑張ろうかな、と思っています。

現場からは以上です。お読みいただきありがとうございました。この記事が面白かったという方のスキ、何か言いたいという方のコメントもお待ちしております。

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